佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女

藤井ことなり

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護衛対象はキケンな男の娘 短編

真相

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「矢島がそんなことを?」

「いや、坊ちゃんの方だ。警察は指名制じゃないからダメだと言ったんだが利かなくてな。それで川名広報課長に話したら、こっちで調整するからと貸し出してくれたんだ」

──貸し出しって、あたしはレンタル品か──

「ちなみにこの件が片付いたら広報課に戻ることは決定しているぞ」

浅間少年課長がそう口添えする。

「意外と簡単に貸出してくれたけど、そのまま話してはもったいない。勿体つけたところ矢島は更に話してくれた。小山、坊ちゃんの身体に気づいてたか」

「はい」

 ハジメは浅間課長に向けて話す。

「夏生くんにはリストカットの痕がありました。それも複数です」

「なんだと」

浅間課長の顔が歪む。御器所は話の後を続けた。

「坊ちゃんは家業のヤクザが嫌いなんだそうです。父親の組長とはそれで揉めていて、女装癖や自殺未遂などにはしってるそうだ」

「衣更えの時期を過ぎているのにブレザーを着ているのが変だなと思いましたが、女装癖があるので趣味で着ていると受け取ってました。しかし何度か抱きつかれるたびに裾からはみ出てきた手首が見えたので分かりました」

ハジメがそう話すと、両課長は重苦しい雰囲気となる。

「学校から交換留学生の話がきたとき、坊ちゃんはチャンスだと思ったらしい。アメリカに行ったらそのまま帰らずに永住するつもりだってな。頭良くてもまだガキなんだよな、そんな無茶なことを考えていたんだと」

「それと本職と何の関係があるんですか」

「だからさ。永住したらもう小山に会えないだろ。最後の思い出にどうしても会いたかったんだと。キジマ事件で注目されたろ? それで過去の試合とかメディアで流れたのを観て、憧れたんだそうだ。自分もあれだけ強かったらなぁって」

「それで殺害予告の狂言を? バカなことを……」

ハジメはやっと理由を知り、あきれ返った。

「知識とか情緒がアンバランスなんだろうな。で、だ。この時点では狂言と知らない俺たちは真面目に警護をする流れとなり、矢島と連絡をとれる俺と小山がペアを組むことになったわけだ」

「本職が呼ばれた理由は分かりました。ですが状況を隠されたのはまだ納得してません、どうして話してくれなかったんですか」

「お前、初日に吐いたろ」

 強気に詰め寄ったハジメが、そのひと言であっと思う。

「正直、小山がどんな人物か知らなくてな。元アイドル格闘家なのは聞いている。坊ちゃんのおかげでプロフィールも知った。高校時代からヘアスタイルはショートボブ、身長百六十三センチ、体重六十五キロをキープ、スリーサイズは……」

「言わなくていいです!!」

ハジメは真っ赤になって叫んだ。
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