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護衛対象はキケンな男の娘 短編

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「なあいいだろ、つきあえよ」

「イヤって言ってるでしょ、アンタなんかシュミじゃないの、どっかいってよ」

 どうやら無理矢理ナンパしているようだ。

「ちょっとあなた達、何しているの」

 職業がら見逃すわけにはいかず、ふたりは現場に近寄る。

「なんだよオバハンたち」

「あ!? 誰が何だって!?」

 ハジメと葵の眉間に縦じわができる。
 見れば二十歳前後の男たちだ、彼等からだとそうかもしれないが、当事者立ちにとってはそうではない。

──三十三はオバハンじゃないわよ──

「カンケーねぇのは引っ込んでろよ、痛い目あわすぞコラァ」

 半グレで御座候といういでたちの男たち。似たような格好からするとチームなのだろう。
 ハジメたちに威嚇してくるのが下っ端らしく、女のコに絡んでるのがリーダーっぽい。

「悪いけど関係あるのよ。そのコにじゃなくてその行為にね」

 そう言うとジャケットの内ポケットから警察手帳を取り出して見せる。
 同時に葵はスマホを取り出して、いつでも通話できるようにする。

「んだよ、ケーサツかよ。で、それがどうした、あ?!」

 女ふたりと思ってナメたのか、それとも意地を張ってるのか、下っ端は態度を変えない。ハジメはやれやれと思いながら話を続けた。

「とりあえず警告、そのコをおいて行ってくれるなら見逃してあげる。それ以上続けるなら逮捕するわよ」

 普段なら有無を言わさず容赦なく逮捕するのだが、少しだけ酔ってるのとストレス解消した直後なので、比較的優しく対応している。
 その時、遠くから男がひとり走ってきた。

「なんだテメェら、若に何してんだぁ」

 間違いなくヤクザという感じの男が、女のコとリーダーのあいだに割って入る。

「テメェ、どこの若いモンだ。誰に向かってやってんのかわかってんのかあ、ああ?!」

 リーダーらしい男に威嚇するが、大したもんでまったく動じない。

「下っ端はどいてろ、オレはナツキに用があるんだ。ジャマすると潰すぞゴラァ」

 ナツキ?!

 ハジメと葵はまさかと思いながら、あらためて女のコを見る。制服姿でなかったのと夜ではっきり顔が見えなかったので気づかなかったが、間違いない、私服女裝している江分利夏生だった。

「夏生くんなの」

 ハジメに声をかけられて、夏生はバレたという顔をしてその場を逃げ出す。

「あ、若、待ってくださいよぉぉぉ」

 ヤクザ男も追いかけてその場から去っていく。残ったのは半グレ集団だけだった。

「ち、ジャマしやがって。おい、行くぞ」

 「ちょっと待ちなさい、あなた達あのコのこと知ってるの? なんで声をかけたのよ」

 ハジメの問いかけに、うっとおしそうな顔をしたあと、無視して足早に離れていく。
 追いかけようとしたが、葵に止められて逃がすしかなかった。
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