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護衛対象はキケンな男の娘 短編

寝業師

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「先輩、何してるんですか」

 憤怒の形相でずんずんと近づくハジメに気がつくと、御器所は慌てて組のヤツラに離れろという仕草をする
 状況が分からずボカンとしているのを、もうひとりがソイツの袖を引っ張り黒塗りセダンに押し込んで、走り出していった。

「今の、江分利組のヤツラですよね。何を話してたんです」

「何でもないよ、世間話をしてただけだ」

問い詰めるハジメに対してトポける御器所に、苛立ちがつのり始める。

「一体何を隠しているんです。黒田さんから聞きましたよ、先輩は寝業師だって。だから何かやっているとは思いますが、どうしてそれを本職に教えてくれないんです」

「何も隠してないし、何もやってない。小山は言われたとおり坊ちゃんの警護をしていればいい」

「交代要員の葵が来てないんです。それも先輩ご来なくていいって言ったそうじゃないですか、絶対何か企んでますよね、教えて下さい」

「何もしてないと言ったろ。階級は一緒でも歳上なんだ、俺の言うことをきけ」

「拒否します。先輩であっても上司ではありません」

 ムキになるハジメに対して、御器所はやれやれという仕草をしながらスーツの内ポケットから紙を取り出し、広げてハジメに見せる。
 それは少年課課長による正式な命令書で、御器所が護衛の班長だと記されていた。

「分かったな。オレが期間限定で上司だ。あと三日、今日を入れてあと三日半だ、決して悪いようにはしないから俺の言うことをきけ」

「………………了解しました……」

 ──いつの間にあんなの用意したんだろう、こうなることを予想してたのだろうか──

 ──これが寝業師といわれるわけか──

 ハジメは顔をしかめる。
 なぜならこういう計略家タイプは、ハジメのような直情径行タイプと相性が悪いからだ。

 しぶしぶと警護に戻ろうとするハジメに御器所は声をかける。

「待て小山」

「なんでしょうか」

「まったくもう、お前はすぐに顔に出るな。黒田クロが、小山は刑事に向いてないといったのがわかるよ」

──黒田さんがそんなコトを──

「いいか、この件は取り扱い注意案件なんだ。小山みたいに顔に出るヤツは何も考えるな、わかったな」

 それなりに尊敬していた黒田に、向いてないと思われていたことがショックなハジメは、空返事をして、警護に戻った。

 ハジメの気持ちをよそに、夏生は変わらず懐いてくる。
 このコだけは変わらないなと、少しだけ気を取り直す。

──うん、何を隠されているか知らないけど、このコの殺害予告はあったんだ。ちゃんと警護しないと──

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