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護衛対象はキケンな男の娘 短編

夏生というコ

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 校門の学校の内側で、生活指導の教師とともに生徒たちを見送る。
 御器所は外で待機、あくびをしながら護衛対象を待つ姿は、とてもやる気があるとは感じられなかった。

 ──何かおかしい──

 ハジメは論理的にものを考えるのは苦手だが、それをカバーする格闘家特有のカンがある。
 昨日あった、御器所をはじめとする関係者全員の緊張感が全く感じられない。それは間違いない、だけど何でかは分からなかった。

 黒塗りセダンがやってきて校門前に横づけされると、後ろのドアが開くと同時に元気な女子高生(外見のみ)が飛び出してきた。

「おーねーーえーーさーーーーまーーーーーー」

 理数系のハズなのに、短距離走のオリンピック選手の如く突っ込んでくる。
 身のキケンを感じたハジメは思わずレスリングのタックルを受ける姿勢をとる。
 しかし構わず両手を広げて突っ込んでくる夏生を、ハジメは受け止めて、思わず俵返しをかけて投げ飛ばしてしまった。

「きゃーーー、夏生くん大丈夫ーーーー?!」

 慌てて運動場に大の字でのびている夏生にかけ寄ると、恍惚とした顔でうち震えている。

「はぁん、おねぇさまの投げってサイコぉぉぉ」

 ──じょ、女裝癖のドMなのかこのコ──

 ハジメは膝から崩れて打ちひしがれる。夏生より自分のメンタルヘルスによるダメージの方が大きかった……。



 受け身をとってないからかなりの痛いハズなのに、保健室で湿布を貼っただけで教室に行き授業を受けている。
 そして心なしか顔が紅潮しているようにも見えた。

──まったく、どういうコなんだろう──

 ハジメは夏生に興味を持ち始めた。
 あいも変わらず休憩時間になると抱きつきに来るが、さすがに痛いらしい。腕の力が弱々しかった。
 少し心に余裕ができたハジメは話しかけてみる。

「夏生くんて数学が好きなの」

「うん、だーい好きーー。おねぇさまと同じくらい好きーー。自分で数式を考え出すのも、難しい数式を解くのも面白ーーい」

「じゃあ将来は学者になるの」

「……うん、……なりたい……」

 能天気というよりは脳天気と表記したくなるくらいハイテンションな夏生が、珍しく低い声で応える。

「あんまり詳しくないんだけど、数学者になるってどうすればいいの」

「分かんない。でも、マサチューセッツには行きたい」

「マサチューセッツって米国の?」

「うん、マサチューセッツ工科大学。世界中から数学好きが集まるんだって。交換留学で向こうに行ったら色々と見てきたい、だから楽しみなんだけどおねぇさまと離れるのは寂しいーー」

 もとのテンションに戻った夏生が嬉しそうにハジメに言う。
 
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