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護衛対象はキケンな男の娘 短編

天敵

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「うぉ、うぉぇぇぇ」

 女子トイレにはハジメの嘔吐音が響いていた。
 外の廊下では、御器所と葵が待っている。

「ハジメ、いい加減に戻ってきなさい」

「も、もうちょっと……」

「まったくもう、かわってないわねぇ」

 呆れる葵に御器所が話しかける。

「小山のヤツはどうしたんです」

「あのコ、軟弱な男が大嫌いなんです。米国映画にでてくる肉体派俳優なのが好みで、日本だと渋いタイプが好きなんですよ」

「ああ、なるほど。しかし極端じゃないかあれは」

「たぶんアレが原因じゃないかと」

「アレとは」

 葵が話そうとする前に、あわててハジメが出てくる。

「ちょっと、余計なこと言わないでよ。先輩も当たり前のように探ろうとしないでください」

「職業病だ、気にするな。で、もういいのか」

「はい。任務は任務ですから」

 吐きすぎて涙目になってるハジメを見ながら、大丈夫かなと思うが、御器所はとりあえず任せることにした。

「それじゃ、予定通り校内は頼むぞ。オレはちょっと外回りをしてくる」

「どこか出かけるんですか」

「校門でちょっと知り合いを見かけてな、ソイツ等に挨拶してくるだけだよ」

 それだけ言うと返事も待たずに御器所は行ってしまった。
 ハジメは葵に案内されて夏生のクラスへと向う。

「まったくもう、葵もかわんないわねぇ。ぺらぺらと人の過去を話すなんて」

「正確な情報を伝えただけよ。立場上虚偽申告はできないから」

「そういや先生じゃないって言ってたね。どういうこと」

「私はこの学校じゃなくて学園グループ全体の監察が仕事なの。所属は母体の森友財団、普段は本部で書類仕事よ」

「か、監察なの」

「父と違って民間企業のだから怖がらないの」

「それもそうか。それよりあのコよ、なんであんな格好しているのよ、男がミニスカートだなんて校則違反じゃないの」

「校則が変わったのよ、私達がいた頃とはまったく違うの。女子高から共学になったのは知ってるわよね」

「ええ」

「その時に制服は廃止、私服オーケーになったの」

「え、でもあのコ、制服だったよ」

「私服オーケーになったの。いちおう学校推薦の制服はあって、特殊クラスのコ達は着ているわ」

「特殊クラス?」

「江分利くん達がいるクラス。手っ取り早く学校の知名度を上げるため、一流大学に進学するためのクラスがあるのよ。そこに一芸に秀でるタイプと秀才を集めてるの。江分利くんは一芸タイプね」

「なんでそんなクラスを」

「秀才ってね、天才に刺激されて伸びるのよ。そして天才は秀才に不足部分に補われるからさらに伸びるの。そういう教育方針なのよね」
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