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護衛対象はキケンな男の娘 短編

夏生はオトコノコ

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「失礼します、江分利を連れてきました」

 理事長室の扉が開き全員が注目するなか、初老の男
 が入ってくる。

「北方先生……ですか……」

「おお、小山、立派になったな。今回は頼むぞ」

「知り合いか小山」

「元担任の先生です、葵、なんで言ってくれないのよ」

「あとで紹介するつもりだっただけよ。それとも何か不都合でもあるの」

「いや、べつに……」

ちょっと挙動不審となったハジメを見ながら葵が言葉を続ける。

「高校時代に男子高生を三人叩きのめしたの気にしてるの? あれなら後輩を守るための正当防衛だし、もうすんだことでしょ」

「違うって、葵」

「それとも後輩女子達からラブレターをかご一杯貰ったことかしら? それだって……うぐっ」

 顔が真っ赤になりながら素早い身のこなしで、対面にいた葵の後ろに回り込んで口を手でふさぐ。

「いい加減にしてよ、そんな話をしにきたんじゃないでしょ」

「そうそう、今は、そんな話をしにきたわけじゃない」

ニヤニヤしながら御器所はそう言うと、北方に向かい問題の生徒である江分利夏生を入れるようにうながした。

 あわててハジメは御器所の横に戻ると座り直す。
 それと同時に制服姿の少女が室内に入ってくる。
 御器所とハジメは、あれ? という顔をした。

 髪はセンター分けでツインテール、顔立ちは理知的な女顔。
ブレザーにタータンチェックのミニスカート。
 脚はスラッとして華奢な感じで白のハイソックス、靴は可愛らしいデザインのローファー。
 どう見ても女子高生だった。

 「あ、あの……」

 ハジメが質問しようとした瞬間だった。

「わぁ、ハジメちゃんだぁーー、本当にきてくれたんだぁーー」

 ハスキーな声で言いながらハジメに近寄り、嬉しそうにアチコチから見る。その仕草も女子高生そのものだった。

「資料、間違ってたんですか。それとも人違い……」

ハジメが御器所に問いかけるが、こちらも混乱中だった。
 助ける目を北方に向けると、やれやれという顔をしながら生徒を注意する。

「江分利、落ち着きなさい。自己紹介が先だろ。ちゃんとしないとキラワれるぞ」

 古参のベテラン先生らしく、厳しく諭す物言いだった。
 それを聞いて、ハジメから少し離れると姿勢を正して直立しペコリと頭を下げる。

「はじめまして、ハジメちゃん。江分利夏生です、よろしくお願いします」

「は……え? アナタが夏生く……さんなの?」

「はい! 何かおかしいですか」

「あ、いえ、ごめんなさい。男の子ときいてたものだから……」

「そうですよ」

「はい?」

「江分利夏生はオトコノコでーす」

 陽気にしなをつくりながらあらためて自己紹介する、どう見ても女子の男子に、ハジメは目眩がするほど混乱していた。
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