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護衛対象はキケンな男の娘 短編

初めての母校

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 崩れたリーゼントに黒のスーツ姿で五歳上の御器所を隣に乗せ、覆面パトカーを運転しながらハジメは説明をさらに受ける。

「組対としてはどう対応をしたんです」

「坊ちゃんはまだ高校生なんで、少年課と協力して対応を考えた。FX取引をしてるんなら二課も絡んでくるから、さらにややこしくて困ってるところに、殺害予告がきたと情報が入ったんだよ」

「相手は」

「まだ調査中だ。当人達もどこから漏れたのか分からないらしい。まぁたぶん矢島がどっかでヘマして漏らしたんだろう」

 話しているうちに目的地に到着したので、話をまとめる。

「というわけで、坊ちゃんの警護をすることになった。自宅と通学路は連中が守ると息巻いているんで遠巻きに見張ってるんだが、唯一連中が入れないところがある。それがココだ」

 二人ともクルマから下りて校門の前に立つ。

私立聖真津州留高等学校、ハジメの母校である。

「校内での警護を小山がやり、オレが校外で待機の予定だ。今のところ分からないことあるか」

「ひとつあります。広報課から異動してすぐにこの任務につきましたが、少年課にはベテランの女性警察官がいます。どうして本職なのでしょうか」

「なんだ聞いてないのか、アチラさんからの御指名だ。警護はハジメちゃんじゃないとヤダってな」

 それだけ言うと、御器所は校内脇にある警備室に向かい、取り次ぎを頼む。
 すぐにやってきたのは、セミロングの黒髪にベージュのスカートスーツ姿でハジメと同い年くらいの女性だった。

「お待ちしてました、今回の件の担当となります葵といいます。よろしくお願いします」

 御器所にそう挨拶したあと、ハジメに顔を向ける。

「久しぶりねハジメ。元気そうでなによりよ」

「葵、葵なの、久しぶりーー」

 自分を無視して懐かし合う二人に、御器所が話しかける。

「小山、知り合いか」

「高校時代の同級生です。彼女、生徒会長だっんですよ。昔から優秀で──そうそう、教師になりたいって言ってたわよね、そうかぁ、なったんだぁ」

「いちおう教員免許はいくつか持ってるけど、残念ながら違うわ。ハジメは相変わらずおかっぱ頭なのね。紺のパンツスーツが凛々しくてステキよ。立ち話もなんだから、まずは理事長に挨拶しましょう。こちらにどうぞ」

 佇まい、言葉遣い、立ち振る舞い、どれをとっても“違う”と感じる。

「できるオンナってヤツだな」

並んで歩く二人のあとについていきながら、御器所はそう呟いた。

 理事長室に着くと、理事長、校長、学年主任と挨拶し、当事者である江分利夏生を呼び出してもらう。
 その間に学校側からの要請として、警察であることは伏せてほしいから、ハジメは教育実習生と称して警護することとなった。
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