252 / 322
護衛対象はキケンな男の娘 短編
初めての母校
しおりを挟む
崩れたリーゼントに黒のスーツ姿で五歳上の御器所を隣に乗せ、覆面パトカーを運転しながらハジメは説明をさらに受ける。
「組対としてはどう対応をしたんです」
「坊ちゃんはまだ高校生なんで、少年課と協力して対応を考えた。FX取引をしてるんなら二課も絡んでくるから、さらにややこしくて困ってるところに、殺害予告がきたと情報が入ったんだよ」
「相手は」
「まだ調査中だ。当人達もどこから漏れたのか分からないらしい。まぁたぶん矢島がどっかでヘマして漏らしたんだろう」
話しているうちに目的地に到着したので、話をまとめる。
「というわけで、坊ちゃんの警護をすることになった。自宅と通学路は連中が守ると息巻いているんで遠巻きに見張ってるんだが、唯一連中が入れないところがある。それがココだ」
二人ともクルマから下りて校門の前に立つ。
私立聖真津州留高等学校、ハジメの母校である。
「校内での警護を小山がやり、オレが校外で待機の予定だ。今のところ分からないことあるか」
「ひとつあります。広報課から異動してすぐにこの任務につきましたが、少年課にはベテランの女性警察官がいます。どうして本職なのでしょうか」
「なんだ聞いてないのか、アチラさんからの御指名だ。警護はハジメちゃんじゃないとヤダってな」
それだけ言うと、御器所は校内脇にある警備室に向かい、取り次ぎを頼む。
すぐにやってきたのは、セミロングの黒髪にベージュのスカートスーツ姿でハジメと同い年くらいの女性だった。
「お待ちしてました、今回の件の担当となります葵といいます。よろしくお願いします」
御器所にそう挨拶したあと、ハジメに顔を向ける。
「久しぶりねハジメ。元気そうでなによりよ」
「葵、葵なの、久しぶりーー」
自分を無視して懐かし合う二人に、御器所が話しかける。
「小山、知り合いか」
「高校時代の同級生です。彼女、生徒会長だっんですよ。昔から優秀で──そうそう、教師になりたいって言ってたわよね、そうかぁ、なったんだぁ」
「いちおう教員免許はいくつか持ってるけど、残念ながら違うわ。ハジメは相変わらずおかっぱ頭なのね。紺のパンツスーツが凛々しくてステキよ。立ち話もなんだから、まずは理事長に挨拶しましょう。こちらにどうぞ」
佇まい、言葉遣い、立ち振る舞い、どれをとっても“違う”と感じる。
「できるオンナってヤツだな」
並んで歩く二人のあとについていきながら、御器所はそう呟いた。
理事長室に着くと、理事長、校長、学年主任と挨拶し、当事者である江分利夏生を呼び出してもらう。
その間に学校側からの要請として、警察であることは伏せてほしいから、ハジメは教育実習生と称して警護することとなった。
「組対としてはどう対応をしたんです」
「坊ちゃんはまだ高校生なんで、少年課と協力して対応を考えた。FX取引をしてるんなら二課も絡んでくるから、さらにややこしくて困ってるところに、殺害予告がきたと情報が入ったんだよ」
「相手は」
「まだ調査中だ。当人達もどこから漏れたのか分からないらしい。まぁたぶん矢島がどっかでヘマして漏らしたんだろう」
話しているうちに目的地に到着したので、話をまとめる。
「というわけで、坊ちゃんの警護をすることになった。自宅と通学路は連中が守ると息巻いているんで遠巻きに見張ってるんだが、唯一連中が入れないところがある。それがココだ」
二人ともクルマから下りて校門の前に立つ。
私立聖真津州留高等学校、ハジメの母校である。
「校内での警護を小山がやり、オレが校外で待機の予定だ。今のところ分からないことあるか」
「ひとつあります。広報課から異動してすぐにこの任務につきましたが、少年課にはベテランの女性警察官がいます。どうして本職なのでしょうか」
「なんだ聞いてないのか、アチラさんからの御指名だ。警護はハジメちゃんじゃないとヤダってな」
それだけ言うと、御器所は校内脇にある警備室に向かい、取り次ぎを頼む。
すぐにやってきたのは、セミロングの黒髪にベージュのスカートスーツ姿でハジメと同い年くらいの女性だった。
「お待ちしてました、今回の件の担当となります葵といいます。よろしくお願いします」
御器所にそう挨拶したあと、ハジメに顔を向ける。
「久しぶりねハジメ。元気そうでなによりよ」
「葵、葵なの、久しぶりーー」
自分を無視して懐かし合う二人に、御器所が話しかける。
「小山、知り合いか」
「高校時代の同級生です。彼女、生徒会長だっんですよ。昔から優秀で──そうそう、教師になりたいって言ってたわよね、そうかぁ、なったんだぁ」
「いちおう教員免許はいくつか持ってるけど、残念ながら違うわ。ハジメは相変わらずおかっぱ頭なのね。紺のパンツスーツが凛々しくてステキよ。立ち話もなんだから、まずは理事長に挨拶しましょう。こちらにどうぞ」
佇まい、言葉遣い、立ち振る舞い、どれをとっても“違う”と感じる。
「できるオンナってヤツだな」
並んで歩く二人のあとについていきながら、御器所はそう呟いた。
理事長室に着くと、理事長、校長、学年主任と挨拶し、当事者である江分利夏生を呼び出してもらう。
その間に学校側からの要請として、警察であることは伏せてほしいから、ハジメは教育実習生と称して警護することとなった。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
黒龍の神嫁は溺愛から逃げられない
めがねあざらし
BL
「神嫁は……お前です」
村の神嫁選びで神託が告げたのは、美しい娘ではなく青年・長(なが)だった。
戸惑いながらも黒龍の神・橡(つるばみ)に嫁ぐことになった長は、神域で不思議な日々を過ごしていく。
穏やかな橡との生活に次第に心を許し始める長だったが、ある日を境に彼の姿が消えてしまう――。
夢の中で響く声と、失われた記憶が導く、神と人の恋の物語。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
『イケメンイスラエル大使館員と古代ユダヤの「アーク探し」の5日間の某国特殊部隊相手の大激戦!なっちゃん恋愛小説シリーズ第1弾!』
あらお☆ひろ
キャラ文芸
「なつ&陽菜コンビ」にニコニコ商店街・ニコニコプロレスのメンバーが再集結の第1弾!
もちろん、「なっちゃん」の恋愛小説シリーズ第1弾でもあります!
ニコニコ商店街・ニコニコポロレスのメンバーが再集結。
稀世・三郎夫婦に3歳になったひまわりに直とまりあ。
もちろん夏子&陽菜のコンビも健在。
今作の主人公は「夏子」?
淡路島イザナギ神社で知り合ったイケメン大使館員の「MK」も加わり10人の旅が始まる。
ホテルの庭で偶然拾った二つの「古代ユダヤ支族の紋章の入った指輪」をきっかけに、古来ユダヤの巫女と化した夏子は「部屋荒らし」、「ひったくり」そして「追跡」と謎の外人に追われる!
古代ユダヤの支族が日本に持ち込んだとされる「ソロモンの秘宝」と「アーク(聖櫃)」に入れられた「三種の神器」の隠し場所を夏子のお告げと客観的歴史事実を基に淡路、徳島、京都、長野、能登、伊勢とアークの追跡が始まる。
もちろん最後はお決まりの「ドンパチ」の格闘戦!
アークと夏子とMKの恋の行方をお時間のある人はゆるーく一緒に見守ってあげてください!
では、よろひこー (⋈◍>◡<◍)。✧♡!
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
南部の光武者
不来方久遠
キャラ文芸
信長が長篠の戦に勝ち、天下布武に邁進し出した頃であった。
〝どっどど どどうど どどうど どどう〝十左衛門と名付けられたその子が陸奥の山間で生を受
けたのは、蛇苺が生る風の強い日であった。透き通るような色の白い子だった。直後に稲光がして
嵐になった。将来、災いをもたらす不吉な相が出ていると言われた。成長すると、赤いざんばら髪
が翻り、人には見えないものが見える事があるらしく、霊感が強いのもその理由であったかも知れ
ない。
ハピネスカット-葵-
えんびあゆ
キャラ文芸
美容室「ハピネスカット」を舞台に、人々を幸せにするためのカットを得意とする美容師・藤井葵が、訪れるお客様の髪を切りながら心に寄り添い、悩みを解消し新しい一歩を踏み出す手助けをしていく物語。
お客様の個性を大切にしたカットは単なる外見の変化にとどまらず、心の内側にも変化をもたらします。
人生の分岐点に立つ若者、再出発を誓う大人、悩める親子...多様な人々の物語が、葵の手を通じてつながっていく群像劇。
時に笑い、たまに泣いて、稀に怒ったり。
髪を切るその瞬間に、人が持つ新しい自分への期待や勇気を紡ぐ心温まるストーリー。
―――新しい髪型、新しい物語。葵が紡ぐ、幸せのカットはまだまだ続く。
ハレマ・ハレオは、ハーレまない!~億り人になった俺に美少女達が寄ってくる?だが俺は絶対にハーレムなんて作らない~
長月 鳥
キャラ文芸
W高校1年生の晴間晴雄(ハレマハレオ)は、宝くじの当選で億り人となった。
だが、彼は喜ばない。
それは「日本にも一夫多妻制があればいいのになぁ」が口癖だった父親の存在が起因する。
株で儲け、一代で財を成した父親の晴間舘雄(ハレマダテオ)は、金と女に溺れた。特に女性関係は酷く、あらゆる国と地域に100名以上の愛人が居たと見られる。
以前は、ごく平凡で慎ましく幸せな3人家族だった……だが、大金を手にした父親は、都心に豪邸を構えると、金遣いが荒くなり態度も大きく変わり、妻のカエデに手を上げるようになった。いつしか住み家は、人目も憚らず愛人を何人も連れ込むハーレムと化し酒池肉林が繰り返された。やがて妻を追い出し、親権を手にしておきながら、一人息子のハレオまでも安アパートへと追いやった。
ハレオは、憎しみを抱きつつも父親からの家賃や生活面での援助を受け続けた。義務教育が終わるその日まで。
そして、高校入学のその日、父親は他界した。
死因は【腹上死】。
死因だけでも親族を騒然とさせたが、それだけでは無かった。
借金こそ無かったものの、父親ダテオの資産は0、一文無し。
愛人達に、その全てを注ぎ込み、果てたのだ。
それを聞いたハレオは誓う。
「金は人をダメにする、女は男をダメにする」
「金も女も信用しない、父親みたいになってたまるか」
「俺は絶対にハーレムなんて作らない、俺は絶対ハーレまない!!」
最後の誓いの意味は分からないが……。
この日より、ハレオと金、そして女達との戦いが始まった。
そんな思いとは裏腹に、ハレオの周りには、幼馴染やクラスの人気者、アイドルや複数の妹達が現れる。
果たして彼女たちの目的は、ハレオの当選金か、はたまた真実の愛か。
お金と女、数多の煩悩に翻弄されるハレマハレオの高校生活が、今、始まる。
30歳、魔法使いになりました。
本見りん
キャラ文芸
30歳の誕生日に酔って帰った鞍馬花凛。
『30歳で魔法使い』という都市伝説を思い出した花凛が魔法を唱えると……。
そして世間では『30歳直前の独身』が何者かに襲われる通り魔事件が多発していた。
そんな時会社での揉め事があり実家に帰った花凛は、本家当主から思わぬ事実を知らされる……。
ゆっくり更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる