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ジャグジーの誓い 短編
ジャグジーの誓い
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──二日後の日曜の夜、AAこと青木川アリスのもとに、ところ狭しと顔に湿布を貼った一色がやってきて、大笑いされていた。
「イケメンが台無しねぇ。ちょっと撮らせて。資料として残しておくから」
「はいはいどうぞ。先生のおかげで無事合格しましたしね」
デジタルカメラで、表情に注文をつけながら色々な構図で撮りつつ、話を続ける。
「あ、合格したんだ。苦労した甲斐があったわね」
「苦労の甲斐というか何というか──」
一色は金曜の夜の出来事をかいつまんで話すと、さらに大笑いされる。
「──それでどうなったの?」
「鏑井さんが先生のコアなファンと判ったので、今度はこっちが警戒したんですよ。どうやって誤魔化そうかと」
「──ああ。もちろん分かっていると思うけど、絶対に会わないわよ」
「分かってますって。だからエージェントを介してモデルをやっただけで、モデル料代わりに新作を頂いたという話にしました」
「それで納得してくれた?」
「先生のコアなファンですよ? 諦めるわけないじゃないですか」
ネット上では、相変わらず青木川アリスの正体を考察するスレッドがにぎやかにしている。
なかには顔認証システムを利用して探そうとしている者も居たが、成果はなかった。
それもそのはず、アリスはほとんどマンションから出ないので見つかりようが無いのだ。
「ホントにテンマくらいなものよ、ココに出入りするのは」
「ちゃんと気をつけてますよ。ボクで正体がバレたらシャレにならないですからね」
「それでどうなったの」
「このまえ書いていただいた新作、あれを渡すということで納得してもらいました。今日これから会いにい行きます。ここに来たのはそれの許可と合格の報告でです」
「あっそう。じゃあもう用は無いわね、バイバイ」
相変わらず素っ気無いなと思いながら一色は席を立つ。
玄関で靴を履いていると、その背中にひと言投げられる。
「いいネタもらったわよ」
振り向かず手を振ってあとにした。
──壱ノ宮に到着して歩いてカブライスポーツジムに到着すると、受付にはもう蛍が待っていた。
「ようこそ、一色くん」
とびきりの笑顔と、アイドルに会った女子高校生みたいにキャピキャピした態度に、内心苦笑する。
「こんばんは鏑井さん」
「じゃあこちらにどうぞ」
カムオンジスウェイとばかりに案内されて向かったのはVIPルーム。
さらにはジャグジーのところだった。
「まさか一緒に入れと」
「入らない、入らない、私は千秋と違って羞恥心があるから」
慌てる蛍を見て、一色はくすりと笑った。
「イケメンが台無しねぇ。ちょっと撮らせて。資料として残しておくから」
「はいはいどうぞ。先生のおかげで無事合格しましたしね」
デジタルカメラで、表情に注文をつけながら色々な構図で撮りつつ、話を続ける。
「あ、合格したんだ。苦労した甲斐があったわね」
「苦労の甲斐というか何というか──」
一色は金曜の夜の出来事をかいつまんで話すと、さらに大笑いされる。
「──それでどうなったの?」
「鏑井さんが先生のコアなファンと判ったので、今度はこっちが警戒したんですよ。どうやって誤魔化そうかと」
「──ああ。もちろん分かっていると思うけど、絶対に会わないわよ」
「分かってますって。だからエージェントを介してモデルをやっただけで、モデル料代わりに新作を頂いたという話にしました」
「それで納得してくれた?」
「先生のコアなファンですよ? 諦めるわけないじゃないですか」
ネット上では、相変わらず青木川アリスの正体を考察するスレッドがにぎやかにしている。
なかには顔認証システムを利用して探そうとしている者も居たが、成果はなかった。
それもそのはず、アリスはほとんどマンションから出ないので見つかりようが無いのだ。
「ホントにテンマくらいなものよ、ココに出入りするのは」
「ちゃんと気をつけてますよ。ボクで正体がバレたらシャレにならないですからね」
「それでどうなったの」
「このまえ書いていただいた新作、あれを渡すということで納得してもらいました。今日これから会いにい行きます。ここに来たのはそれの許可と合格の報告でです」
「あっそう。じゃあもう用は無いわね、バイバイ」
相変わらず素っ気無いなと思いながら一色は席を立つ。
玄関で靴を履いていると、その背中にひと言投げられる。
「いいネタもらったわよ」
振り向かず手を振ってあとにした。
──壱ノ宮に到着して歩いてカブライスポーツジムに到着すると、受付にはもう蛍が待っていた。
「ようこそ、一色くん」
とびきりの笑顔と、アイドルに会った女子高校生みたいにキャピキャピした態度に、内心苦笑する。
「こんばんは鏑井さん」
「じゃあこちらにどうぞ」
カムオンジスウェイとばかりに案内されて向かったのはVIPルーム。
さらにはジャグジーのところだった。
「まさか一緒に入れと」
「入らない、入らない、私は千秋と違って羞恥心があるから」
慌てる蛍を見て、一色はくすりと笑った。
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