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ジャグジーの誓い 短編

その2

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 月曜日の朝、一色は悲鳴をあげている身体にムチ打って出社した。

「あ痛たたた、二日遅れで筋肉痛がくるなんて、本当になまっていたんだなぁ」

 調査資料部まであと少しというところで、背中をバンと叩かれる。

「うぎゃあぁぁぁ」

「おはよう、一色くん。大変そうね」

「……ボス、おはようございます。おかげさまでね」

 分かってるくせにと思いながらも引きつった笑顔で挨拶をする。
 それを見て千秋も微笑み返す。

「期待しているからね」

耳元でそう囁いたあと、ふたたび背中を叩いて先に行く。その場で痛みを堪えながら一色は呟いた。

「っとにもう! ……その期待に応えてやりますよ……」



 相変わらず馬場課長が訪問してきたが、筋肉痛をおくびにも出さずにこやかに応対して、いつも通り経理課からお迎えを呼んで帰ってもらう。

「ボス、出かけたいのですがよろしいでしょうか」

 一色の申し出を表情を見て、許可する。

「はてさて、どうするのかなぁ」

 出かけていく後ろ姿を見送りながら、千秋は忠誠を誓ってくれた部下の行動を楽しみにしていた。



 そしてそれから週末まで、一色は出社してから許可をもらい出かけて、終業時間まで戻らないという日が続いた。
 そして金曜日の終業時に、千秋の前に立ちお願いをする。

「ボス、このあいだの優待券、持ってたら戴けませんか」

「もちろん。はいどうぞ」

 内ポケットから取り出すと、手渡す。
 受け取ってペコリと頭を下げると、お先に失礼しますと言って、帰っていく。



 その日の夜、カブライスポーツジムの受付で優待券を差し出すと、ふたたびあの女が出てきた。

「何しに来たの」

「もちろん体力測定です。鏑井蛍さん」

「調べたの」

「はい。前に来たとき貴女だけネームプレートを下げてなかった、調べろということだと受け取りました」

「まあウチのサイトはあるからね、検索すればそのくらい分かるわよね」

「鏑井蛍、カブライスポーツジムのオーナー兼トレーナー、父親が経営していた会社が倒産、その後、大学生でありながら起業して現在のスポーツジムをはじめる。それだけでもスゴいのに特筆するのは、大手総合会社オーク・インダストリーの顧問技師であり複数のパテントを所有していること」

「──千秋から訊いた……わけはないわね、自分で調べたの」

「ええ、と言いたいところですが残念ながら違います。それが得意な人に頼みました」

「なぁんだ、人に頼ったのか。がっかりね、他力本願だなんて」

「解釈の違いがあるようですから言いますが、ボクは[人に頼る]ではなく[人に頼れる]なんですよ」

 涼やかな顔で言い返す一色に蛍はムッとする。

「──いいわ、それじゃ体力測定しましようか」
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