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ジャグジーの誓い 短編
プロローグ
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鏑井蛍が半ば呆れ顔で聞いたのは、親友の佐野千秋が上機嫌でやってきた四月一日の夜のことだった。
「本気で言ってるの? エクセリオン本社の社長になるって」
「もちろん本気よ。だからケイも協力してね」
カブライスポーツジムのオーナー兼トレーナーである蛍は、その日の業務を終えて施設の一角にある自室でテーブルを挟んで、差し向かいで千秋と話していた。
蛍は千秋の顔をじっと見る。
酒は入っているようだが、酔っ払ってはいない。冗談かと思ったが、長い付き合いでそうではないと感じた。
「なんでそんな気になったのよ」
「目標を持てって言ったのはケイでしょ」
「そうだけど……」
自らはスポーツジムを経営している。自分がこのくらいできるのなら千秋はもっと上のことはできるだろう、エクセリオン日本の社長くらいにはなれるのじゃないかとまでは考えていた。
しかしそれを遥かに上回る本社社長を目指すと言われたのだ、聞き返したくなるのは当然であった。
「どうしてその気になったの」
「別に……、目標は高い方がいいから……」
嘘だなと蛍は直感した。
千秋が本音を隠すときは歯切れが悪くなる。そしてそういうときは他の人に迷惑をかけたくない、巻き込みたくない時だということも知っていた。
「着地点はどこ? あくまでも目標で、いけるところまでいこうっていうつもりなの」
「ううん、絶対なりたい、そこにいくのが達成目標」
千秋だけでは無理だと解っている。協力してほしいけど巻き込みたくない。だからその理由を隠して話しているということか。
短いやり取りで蛍はそこまで読み取った。
「協力といっても私は社員じゃないからね、何を求めているの」
「もちろん情報収集。それと……ウチの株を買い集めてほしい」
「……なるほど」
そのひと言で本気だと確信した。
そのあとしばらく無言となった。お互いなにかしら考えているのだろうと相手を見て思ってた。
「……がいるわね」
「……そうね」
それだけポツリと言ったあと、蛍は千秋に帰るようにうながし、玄関まで見送ったあとすぐに端末の前に座って、さっそく情報を集め始めた。
「エクセリオン、世界でトップクラスの総合商社、その資産と経済力は世界経済に影響をあたえるほど。そこのトップに千秋が立つ……」
口に出して再確認した蛍は身震いした。
「こりゃあ大変な大仕事だなぁ」
言葉はやれやれという感じだが、その表情は喜々としていた。
「本気で言ってるの? エクセリオン本社の社長になるって」
「もちろん本気よ。だからケイも協力してね」
カブライスポーツジムのオーナー兼トレーナーである蛍は、その日の業務を終えて施設の一角にある自室でテーブルを挟んで、差し向かいで千秋と話していた。
蛍は千秋の顔をじっと見る。
酒は入っているようだが、酔っ払ってはいない。冗談かと思ったが、長い付き合いでそうではないと感じた。
「なんでそんな気になったのよ」
「目標を持てって言ったのはケイでしょ」
「そうだけど……」
自らはスポーツジムを経営している。自分がこのくらいできるのなら千秋はもっと上のことはできるだろう、エクセリオン日本の社長くらいにはなれるのじゃないかとまでは考えていた。
しかしそれを遥かに上回る本社社長を目指すと言われたのだ、聞き返したくなるのは当然であった。
「どうしてその気になったの」
「別に……、目標は高い方がいいから……」
嘘だなと蛍は直感した。
千秋が本音を隠すときは歯切れが悪くなる。そしてそういうときは他の人に迷惑をかけたくない、巻き込みたくない時だということも知っていた。
「着地点はどこ? あくまでも目標で、いけるところまでいこうっていうつもりなの」
「ううん、絶対なりたい、そこにいくのが達成目標」
千秋だけでは無理だと解っている。協力してほしいけど巻き込みたくない。だからその理由を隠して話しているということか。
短いやり取りで蛍はそこまで読み取った。
「協力といっても私は社員じゃないからね、何を求めているの」
「もちろん情報収集。それと……ウチの株を買い集めてほしい」
「……なるほど」
そのひと言で本気だと確信した。
そのあとしばらく無言となった。お互いなにかしら考えているのだろうと相手を見て思ってた。
「……がいるわね」
「……そうね」
それだけポツリと言ったあと、蛍は千秋に帰るようにうながし、玄関まで見送ったあとすぐに端末の前に座って、さっそく情報を集め始めた。
「エクセリオン、世界でトップクラスの総合商社、その資産と経済力は世界経済に影響をあたえるほど。そこのトップに千秋が立つ……」
口に出して再確認した蛍は身震いした。
「こりゃあ大変な大仕事だなぁ」
言葉はやれやれという感じだが、その表情は喜々としていた。
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