230 / 322
佐野千秋の休日 西南奔走
その4
しおりを挟む
動画は、サクマと派手な格好の女性との組手から始まっていた。撮影している人は手持ちなのだろう、画面が小刻みにゆれている。
5分ほど戦いあってから離れて、間合いをとってからサクマが女性を倒し、足を持って振り回しはじめた。
最初は恐る恐る観ていたスズキだったが、サクマと互角に戦う姿を見て少しづつのめり込んでいく。
サトウも画面とスズキを交互に見ながら、おなじくのめり込んでいったが、女性がピンチになって思わず2人は抱き合う。
動画はさらに女性がピンチが続いて、ぐったりするところを映していた。
あああ、やっぱりアイツには勝てないんだわ、敵わないんだわ、とスズキが思いはじめた時だった。
突然、女性が起き上がり、サクマの頭に取りつき首を絞めはじめた。サクマが苦しそうな顔になる。
「……いけ、いけ、たおせ、たおせ、」
スズキの口から応援の声が漏れはじめる。
苦しんでもがきつづけて、ついにサクマは倒れる。
それを見て、スズキはやったという顔になり、サトウの首に抱きついた。
「やった、やったよシゲちゃん。アイツ、アイツがやられたよ」
「そうだなホノカ、お前を苦しめたヤツは負けたんだ。弱いヤツなんだよ」
そこに千秋がいるのも忘れて、2人は抱きしめ合いいちゃいちゃしはじめる。
無粋なのは分かっているが、んん、と咳払いをして中断させた。
「ああすまない、しかしこれは一体どういう事なんだ。何故こんな動画が」
「私も詳しくは話せませんが、というか知らないんですが、知り合いの探偵からまわってきた動画です。なぜまわってきたかというと、その人の仕事に関わってまして」
「仕事って」
「始末屋という知り合いがいて、アラクマの被害者から依頼を受けて、復讐代行をしたそうです」
「被害者って」
「ああ、訂正します。被害者達です。分かる限りの被害者本人とその家族から報酬と引き換えにアラクマを倒してほしいと言われたそうです」
もちろんそんな事実は無い。千秋のでまかせである。
「スズキさん、あなたの分は私が出しました。ご両親にも話してない様でしたからね」
「そんな。どうしてそこまでしてくれるんです」
「あなたへの罪滅ぼし……じゃなくてよ」
スズキが横領したのは千秋には関係ないし、ましてや当人の意志はなくても、それをなすりつけられようとしたのだ。そんな義理はない。
「あなたに訊きたいことがあると言ったでしょう、これは先払いの報酬。その代わり教えてほしい事があるの」
千秋はタブレットをカバンにしまうと、スズキに詰め寄った。
「……何が訊きたいんでしょうか……」
5分ほど戦いあってから離れて、間合いをとってからサクマが女性を倒し、足を持って振り回しはじめた。
最初は恐る恐る観ていたスズキだったが、サクマと互角に戦う姿を見て少しづつのめり込んでいく。
サトウも画面とスズキを交互に見ながら、おなじくのめり込んでいったが、女性がピンチになって思わず2人は抱き合う。
動画はさらに女性がピンチが続いて、ぐったりするところを映していた。
あああ、やっぱりアイツには勝てないんだわ、敵わないんだわ、とスズキが思いはじめた時だった。
突然、女性が起き上がり、サクマの頭に取りつき首を絞めはじめた。サクマが苦しそうな顔になる。
「……いけ、いけ、たおせ、たおせ、」
スズキの口から応援の声が漏れはじめる。
苦しんでもがきつづけて、ついにサクマは倒れる。
それを見て、スズキはやったという顔になり、サトウの首に抱きついた。
「やった、やったよシゲちゃん。アイツ、アイツがやられたよ」
「そうだなホノカ、お前を苦しめたヤツは負けたんだ。弱いヤツなんだよ」
そこに千秋がいるのも忘れて、2人は抱きしめ合いいちゃいちゃしはじめる。
無粋なのは分かっているが、んん、と咳払いをして中断させた。
「ああすまない、しかしこれは一体どういう事なんだ。何故こんな動画が」
「私も詳しくは話せませんが、というか知らないんですが、知り合いの探偵からまわってきた動画です。なぜまわってきたかというと、その人の仕事に関わってまして」
「仕事って」
「始末屋という知り合いがいて、アラクマの被害者から依頼を受けて、復讐代行をしたそうです」
「被害者って」
「ああ、訂正します。被害者達です。分かる限りの被害者本人とその家族から報酬と引き換えにアラクマを倒してほしいと言われたそうです」
もちろんそんな事実は無い。千秋のでまかせである。
「スズキさん、あなたの分は私が出しました。ご両親にも話してない様でしたからね」
「そんな。どうしてそこまでしてくれるんです」
「あなたへの罪滅ぼし……じゃなくてよ」
スズキが横領したのは千秋には関係ないし、ましてや当人の意志はなくても、それをなすりつけられようとしたのだ。そんな義理はない。
「あなたに訊きたいことがあると言ったでしょう、これは先払いの報酬。その代わり教えてほしい事があるの」
千秋はタブレットをカバンにしまうと、スズキに詰め寄った。
「……何が訊きたいんでしょうか……」
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
ひきこもり瑞祥妃は黒龍帝の寵愛を受ける
緋村燐
キャラ文芸
天に御座す黄龍帝が創りし中つ国には、白、黒、赤、青の四龍が治める国がある。
中でも特に広く豊かな大地を持つ龍湖国は、白黒対の龍が治める国だ。
龍帝と婚姻し地上に恵みをもたらす瑞祥の娘として生まれた李紅玉は、その力を抑えるためまじないを掛けた状態で入宮する。
だが事情を知らぬ白龍帝は呪われていると言い紅玉を下級妃とした。
それから二年が経ちまじないが消えたが、すっかり白龍帝の皇后になる気を無くしてしまった紅玉は他の方法で使命を果たそうと行動を起こす。
そう、この国には白龍帝の対となる黒龍帝もいるのだ。
黒龍帝の皇后となるため、位を上げるよう奮闘する中で紅玉は自身にまじないを掛けた道士の名を聞く。
道士と龍帝、瑞祥の娘の因果が絡み合う!
お昼寝カフェ【BAKU】へようこそ!~夢喰いバクと社畜は美少女アイドルの悪夢を見る~
保月ミヒル
キャラ文芸
人生諦め気味のアラサー営業マン・遠原昭博は、ある日不思議なお昼寝カフェに迷い混む。
迎えてくれたのは、眼鏡をかけた独特の雰囲気の青年――カフェの店長・夢見獏だった。
ゆるふわおっとりなその青年の正体は、なんと悪夢を食べる妖怪のバクだった。
昭博はひょんなことから夢見とダッグを組むことになり、客として来店した人気アイドルの悪夢の中に入ることに……!?
夢という誰にも見せない空間の中で、人々は悩み、試練に立ち向かい、成長する。
ハートフルサイコダイブコメディです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おにぎり屋さんの裏稼業 〜お祓い請け賜わります〜
瀬崎由美
キャラ文芸
高校2年生の八神美琴は、幼い頃に両親を亡くしてからは祖母の真知子と、親戚のツバキと一緒に暮らしている。
大学通りにある屋敷の片隅で営んでいるオニギリ屋さん『おにひめ』は、気まぐれの営業ながらも学生達に人気のお店だ。でも、真知子の本業は人ならざるものを対処するお祓い屋。霊やあやかしにまつわる相談に訪れて来る人が後を絶たない。
そんなある日、祓いの仕事から戻って来た真知子が家の中で倒れてしまう。加齢による力の限界を感じた祖母から、美琴は祓いの力の継承を受ける。と、美琴はこれまで視えなかったモノが視えるようになり……。
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる