佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女

藤井ことなり

文字の大きさ
上 下
215 / 322
佐野千秋の休日 西南奔走

その4

しおりを挟む
 サクマはすぐさま右足を受けの構えをとる、鈍い痛みが走る、次に顔のすぐ横に腕で防御する、こちらにも痛みが走った。

「へえ、さすがにやるわね」

ティーは間合いの外で軽くステップしながら話しかける。

「足クセの悪い女だな、育ちが悪いだろ」

「アンタよりはマシだと思うけどね」

ティーは右に行くというフェイントをかけたあと、すぐさま左に行くふりをしてかがんでサクマの視界から消え、そのまま右足でローキック、防がれた瞬間に回転しながら顔めがけてハイキックに移ったが、それも防がれてしまったのだ。

ステップを踏みながら、ティーはサクマを観察する。

身長は185くらいか、届きはするけど少々骨が折れるな。
体型は小兵の相撲取りくらいだけど、筋肉と脂肪が厚くてやっかいだな、あたしの打撃では効かないかもしれない、さて、どう攻めるか……

先制攻撃をされて、サクマは油断を完全に棄ててしまったようだ。空手の三戦《さんちん》の構えをとった。
様になっている、さすが有名大学に推薦入学しただけのことはある。

攻め方を決めたティーは、こちらも構えてじりじりと間合いに入っていく。



 それからなんと5分も、お互い動きを止めず攻撃を繰り出しあっていた。
サクマの一撃でも当たれば、ノックアウトされる攻撃をかわしながら、ティーは一撃必殺の急所狙いの攻撃を繰り出す。
何度か当たってはいるが、ぶ厚い身体がその衝撃を緩和させて決め手にはならない。

撮影しているケーも、固唾を飲んで見守っているしかなかった。

たまらなくなったのか、ティーは一旦距離をとる。

「はぁはぁ、なかなかや…やるじゃ…ねえか」

「もう…息が…あがっている…わよ…」

「てめえ…もな…」

しばらく睨み合っていたが、先に息をととのえたティーが、ふたたび攻撃にうつる。

息を吐いたタイミングでこられたので、サクマは隙をつかれた感じになったが、さすがは百戦錬磨らしくすべて防いで、今度はサクマが間合いをとった。

「あきらめたよ」

「なにをさ」

「わりと上玉だったから無傷で手に入れようと思ってたが、こんなじゃじゃ馬じゃシツケが必要だよな。腕か脚が、そうだなそのクセの悪い脚を折らせてもらうぜ」

「[オレはまだ本気になっていないぜ]って言いたいの? 少年マンガの読み過ぎよ」

「はん、リアルの方が面白ぇんだよ! お前たちにも楽しい思いさせてやるぜ」

そのまま、無言でサクマは踏み込む。

はやい!!

あっという間に間を詰められて、すぐさまティーは飛び退いたが、間に合わず右ストレートが左肩にヒットする。

飛び退いた分、威力が弱まって致命傷にはならなかったが、よろけて倒れる。
その隙を逃さず、サクマはティーの足首を掴んで、持ち上げた。

「さぁて、イッボン逝っておくか」

サクマの顔に笑みが浮かんだ……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ハバナイスデイズ!!~きっと完璧には勝てない~

415
キャラ文芸
「ゆりかごから墓場まで。この世にあるものなんでもござれの『岩戸屋』店主、平坂ナギヨシです。冷やかしですか?それとも……ご依頼でしょうか?」 普遍と異変が交差する混沌都市『露希』 。 何でも屋『岩戸屋』を構える三十路の男、平坂ナギヨシは、武市ケンスケ、ニィナと今日も奔走する。 死にたがりの男が織り成すドタバタバトルコメディ。素敵な日々が今始まる……かもしれない。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

最後の封じ師と人間嫌いの少女

飛鳥
キャラ文芸
 封じ師の「常葉(ときわ)」は、大妖怪を体内に封じる役目を先代から引き継ぎ、後継者を探す旅をしていた。その途中で妖怪の婿を探している少女「保見(ほみ)」の存在を知りに会いに行く。強大な霊力を持った保見は隔離され孤独だった。保見は自分を化物扱いした人間達に復讐しようと考えていたが、常葉はそれを止めようとする。  常葉は保見を自分の後継者にしようと思うが、保見の本当の願いは「普通の人間として暮らしたい」ということを知り、後継者とすることを諦めて、普通の人間らしく暮らせるように送り出そうとする。しかし常葉の体内に封じられているはずの大妖怪が力を増して、常葉の意識のない時に常葉の身体を乗っ取るようになる。  危機を感じて、常葉は兄弟子の柳に保見を託し、一人体内の大妖怪と格闘する。  柳は保見を一流の妖怪退治屋に育て、近いうちに復活するであろう大妖怪を滅ぼせと保見に言う。  大妖怪は常葉の身体を乗っ取り保見に「共に人間をくるしめよう」と迫る。  保見は、人間として人間らしく暮らすべきか、妖怪退治屋として妖怪と戦うべきか、大妖怪と共に人間に復讐すべきか、迷い、決断を迫られる。  保見が出した答えは・・・・・・。

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

トランスファは何個前? Watch your step.

梅室しば
キャラ文芸
【たった一つの窓に映る彗星を巡り、利玖と古の神々の思惑が交錯する。】 熊野史岐が見つけた湖畔のカフェ「喫茶ウェスタ」には美しい彗星の絵が飾られていた。後日、佐倉川利玖とともに店を訪れた史岐は、店主の千堂峰一に「明日なら彗星の実物が見られる」と告げられる。彗星接近のニュースなど見当たらない中、半信半疑で店を再訪した二人は、曇り空にもかかわらず天窓に映った巨大な彗星を目の当たりにする──。 ※本作はホームページ及び「pixiv」「カクヨム」「小説家になろう」「エブリスタ」にも掲載しています。

待つノ木カフェで心と顔にスマイルを

佐々森りろ
キャラ文芸
 祖父母の経営する喫茶店「待つノ木」  昔からの常連さんが集まる憩いの場所で、孫の松ノ木そよ葉にとっても小さな頃から毎日通う大好きな場所。  叶おばあちゃんはそよ葉にシュガーミルクを淹れてくれる時に「いつも心と顔にスマイルを」と言って、魔法みたいな一混ぜをしてくれる。  すると、自然と嫌なことも吹き飛んで笑顔になれたのだ。物静かで優しいマスターと元気いっぱいのおばあちゃんを慕って「待つノ木」へ来るお客は後を絶たない。  しかし、ある日突然おばあちゃんが倒れてしまって……  マスターであるおじいちゃんは意気消沈。このままでは「待つノ木」は閉店してしまうかもしれない。そう思っていたそよ葉は、お見舞いに行った病室で「待つノ木」の存続を約束してほしいと頼みこまれる。  しかしそれを懇願してきたのは、昏睡状態のおばあちゃんではなく、編みぐるみのウサギだった!!  人見知りなそよ葉が、大切な場所「待つノ木」の存続をかけて、ゆっくりと人との繋がりを築いていく、優しくて笑顔になれる物語。

理想の自分になるためのトレーニング

下菊みこと
キャラ文芸
自分に自信を持つためのお話。 千文字作文。 御都合主義のハッピーエンド。 本当は誰だって、自分を好きになりたいのです。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】神様WEB!そのネットショップには、神様が棲んでいる。

かざみはら まなか
キャラ文芸
22歳の男子大学生が主人公。 就活に疲れて、山のふもとの一軒家を買った。 その一軒家の神棚には、神様がいた。 神様が常世へ還るまでの間、男子大学生と暮らすことに。 神様をお見送りした、大学四年生の冬。 もうすぐ卒業だけど、就職先が決まらない。 就職先が決まらないなら、自分で自分を雇う! 男子大学生は、イラストを売るネットショップをオープンした。 なかなか、売れない。 やっと、一つ、売れた日。 ネットショップに、作った覚えがないアバターが出現! 「神様?」 常世が満席になっていたために、人の世に戻ってきた神様は、男子学生のネットショップの中で、住み込み店員になった。

処理中です...