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佐野千秋の休日 西南奔走

その2

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 出てきたのは見覚えのない女だった。

金髪のロングカーリーヘアに厚化粧と大きめのサングラス。
派手なスタジャンにピンク色のTシャツ、デニムの短パンにピンク色の網タイツ、そして運動靴姿にサクマは顔をしかめた。

「なんだぁ、イカれた格好しやがって。センスねぇな」

「60年代ファッションのつもりなんだけどな、お気に召さなかった?」

「召さねえよ。気に入られたかったらマッパで来るんだな」

「即物的ね。そっちの方がセンス無いわよ。ま、その格好見ただけで分かるけどね」

そう言って、アメリカ人のように肩をすくめる。

「うるせえな、で、てめえはいったい何なんだよ」

「アンタにお仕置きを頼まれた代行人よ」

それを聞いて、サクマはやれやれという顔をして肩を落とした。

「はぁあ、またかよ。懲りねぇなぁ」

面倒くさそうに頭を掻きながらボヤきはじめる。

「どいつもこいつも文句あるなら自分で来いってんだよ、そしたら2度と仕返ししようなんて思わないようにしてやるのによ。怖いなら怖いでいちいち突っかかってくるなよ、今までの奴らは全員病院送りしてやっても、まだわかんねぇのかなぁ」

最後の方は苛ついたのか、女に向かって怒鳴るように言った。それを女は、腕をくみして少し微笑みながら受け流す。

「それだけ恨まれているって事じゃない。ちょっと調べたけど、東京だけじゃなく名古屋こっちに来ても似たようなコトやってるのね。呆れたわ」

「うるせえな、だいたい誰の代行なんだよ。言えよ」

「心当たりあるでしょ」

「あり過ぎて分かんねぇよ」

「ヒントあげましょうか」

女は腕組みしたまま、サクマに近づく。
サクマもうつむいて頭を掻いている姿勢から動かない。少しづつ駐車場内に緊張の空気が張りはじめる。サクマは興味無いふりをしながら考えていた。

 コイツはいったい何なんだ。代行人で俺を懲らしめるだと。イカれた格好をした女じゃねえか。
少し胸は無いが身体はよさそうだ、歩き方や身のこなしからみても格闘の心得はなさそうだし、こんなヤツが俺をどうにかできると思ってるのかよ。

それと頼んだヤツは誰だ? 昔の奴らが今さら来ないだろうから、最近のヤツか。
今、風俗に沈めているの3人の誰かか、その身内ってところだな。

まあいい、今までどおり返り討ちにしてやろう。女は初めてだな。たっぷり楽しんだあと、いつも通り動画を撮ってコイツも沈めてやるか。

 もう少しで間合いに入るというところで、女は足を止めた。

「依頼人に心当たりあったかしら」

「さあな、誰でもいいよ、どうせ返り討ちにするからな」

2人のあいだに緊張が高まる。

「やれるかしらね」
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