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佐野千秋の休日 西南奔走
デンジャラス・ナイト 名古屋
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雨が降りそうで降らない曇り空であったが、夜中では特に関係ない。それでもこもったような空気は感じられる。
GWの最終日の日曜、名古屋のとある場末の繁華街をひとりの男が歩いていた。
その男をひと言で表すなら、巨漢 この形容がもっとも似合っていた。
適当に切ったと思われる短めのざんばら髪に、脂の浮き出た顔、一見相撲取りと間違えそうな体型に、それより大きめのTシャツと半袖シャツ。
ズボンもこれまたサイズが大きくて合うのがなかなか無いのだろう、ジャージのボトムを履いていて、足は靴下につっかけといういでたちであった。
クソ面白くもねぇ
その男、サクマアラシゲは見た目も心の中もそう思って歩いていた。
東京で犯した女を脅しながら風俗で働かせ、その上前をはねて楽しんでいたのに、レイプサークルの奴らが捕まったせいで東京にいられなくなったじゃねえか。
こっちでも同じことやっていたが、俺じゃ仕切られねぇからいまいち楽しめねぇ。そんな時、レイプサークルの顔見知りを見つけたときは、また同じおいしい思いをできると思ったのに声をかけたら、妙なことを頼まれた。
飲み屋でバカにされた女に仕返ししたいってな。
ブスならお断りだったが、わりといいオンナだった。
いつもどおり犯って動画を撮り、それをもとに脅して貢がせるつもりだった。だが実物を見てやめた。ヤバいオンナだったからな。
危ない橋は渡らない、そうやって今までやってきたのに、何がどうしてそうなったのか、キジマ達が捕まりやがった。
アイツらが余計なコトを喋ったらマズイから、おとなしくするしかないじゃないか。
けっ、面白くもねぇ。
東京でサクマアラシゲの名前から、アラクマという異名を持ったサクマだが、さすがに警察という国家権力には尻込む。
4月のあたまからひと月、そろそろ我慢の限界に来ていた。
サクマは繁華街からねぐらへのいつもの帰り道、途中にある半地下の駐車場に入っていく。
ショウワの頃からあるこの駐車場は、管理人も歳を重ねて管理がゆるくなっているらしく、監視カメラも見回りの人もいない。
だから、違法駐車の車が多数駐められていた。もちろん、サクマの車もだ。
繁華街でサケを飲んでいるサクマが、警察上等と飲酒運転をするつもりなのかと思いきや、駐車場の真ん中で立ち止まり、誰ともなく声をかける。
「ここらでいいだろう、そろそろ顔を出せや」
その言葉からしばらくした後に、物かげから人影が出てくる。
「よく気がついたわね」
「なめるなよ、ひとつ前の交差点から尾けてきたろうが。なんの用だ」
振り返りながらじろりとサクマは睨みつけた。
GWの最終日の日曜、名古屋のとある場末の繁華街をひとりの男が歩いていた。
その男をひと言で表すなら、巨漢 この形容がもっとも似合っていた。
適当に切ったと思われる短めのざんばら髪に、脂の浮き出た顔、一見相撲取りと間違えそうな体型に、それより大きめのTシャツと半袖シャツ。
ズボンもこれまたサイズが大きくて合うのがなかなか無いのだろう、ジャージのボトムを履いていて、足は靴下につっかけといういでたちであった。
クソ面白くもねぇ
その男、サクマアラシゲは見た目も心の中もそう思って歩いていた。
東京で犯した女を脅しながら風俗で働かせ、その上前をはねて楽しんでいたのに、レイプサークルの奴らが捕まったせいで東京にいられなくなったじゃねえか。
こっちでも同じことやっていたが、俺じゃ仕切られねぇからいまいち楽しめねぇ。そんな時、レイプサークルの顔見知りを見つけたときは、また同じおいしい思いをできると思ったのに声をかけたら、妙なことを頼まれた。
飲み屋でバカにされた女に仕返ししたいってな。
ブスならお断りだったが、わりといいオンナだった。
いつもどおり犯って動画を撮り、それをもとに脅して貢がせるつもりだった。だが実物を見てやめた。ヤバいオンナだったからな。
危ない橋は渡らない、そうやって今までやってきたのに、何がどうしてそうなったのか、キジマ達が捕まりやがった。
アイツらが余計なコトを喋ったらマズイから、おとなしくするしかないじゃないか。
けっ、面白くもねぇ。
東京でサクマアラシゲの名前から、アラクマという異名を持ったサクマだが、さすがに警察という国家権力には尻込む。
4月のあたまからひと月、そろそろ我慢の限界に来ていた。
サクマは繁華街からねぐらへのいつもの帰り道、途中にある半地下の駐車場に入っていく。
ショウワの頃からあるこの駐車場は、管理人も歳を重ねて管理がゆるくなっているらしく、監視カメラも見回りの人もいない。
だから、違法駐車の車が多数駐められていた。もちろん、サクマの車もだ。
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「ここらでいいだろう、そろそろ顔を出せや」
その言葉からしばらくした後に、物かげから人影が出てくる。
「よく気がついたわね」
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