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佐野千秋の休日 謎解き川柳(小川三水目線)
その2
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「昔ね、会社勤めをしてたことがあるんだよ」
「そうなんだ」
「そこは社員の9割が女性の会社でね、そこで3、4年くらい働いてたんだ」
「どんな仕事の会社」
「そこはノーコメント。でね、役職はつかなかったけど、それなりの古株になったんで、新人のめんどうを見るようになった」
「うん」
「新人といっても、ほとんどがオバチャンでね、なかなか仕事を覚えてもらえなかったんだよ。それでも根気よく教えていたんだが、ひとり、どうしても覚えられない人がいた」
「そういう人いるよねぇ」
「しかも話好きでね、働かないし喋ってばかりいたから、毎回毎回注意してたんだ」
「お疲れ様です」
「で、その日も注意してた」
「なにがあったの」
「毎回毎回、注意されていたもんで逆ギレされてね、[なんでアタシばかり注意されなきゃなんないの!]って、言い返してきたんだよ。そこで終わらず、[あ、わかったアタシのコト好きなんでしょ! だから、絡んでくるんでしょ!]って言われたんだ」
千秋が、あんぐりとする。
「なんでそうなるの」
「さあね。結局、注意するのは諦めて、その人のミスをフォローする事にしたんだけど、そこからが地獄の始まりだったよ」
「どうして」
「翌日、会社に行ったら何故か私がそのオバチャンに告白したという話が会社中に広まっていた」
千秋は目を白黒させた。
「ウワサって、伝言ゲームのように尾ひれがつくだろ? それが女性ばかりのところだとクモの巣のようなおしゃべりネットワークによって、尾ひれどころか背びれ、胸びれ、腹びれまで付いて、最後に私が耳にしたときは[私がオバチャンのことを好きでストーカーしている]という話にまでなっていた。
ウワサの発信源であるオバチャンは、それを耳にした時、あまりに内容が変わっていせいで自分に身に覚えのない話だったから、自分はストーキングされていると勘違いして、会社辞めちゃったんだよ」
「なんなのよそれ、それでどうなったの?」
「別にどうもしない。今までどおりオバチャンの分の仕事を私がやっただけだよ。私がストーカーだというレッテルが付いてね。
……こういうエピソードが、まだまだあるけど聞くかい」
そしてその度に女性にたいして幻滅してきたのだ。歳も歳だし興味は無い。むしろトラブルに巻き込まれないように、必要以上に関わりたくないのだ。
「……もういいわ。そういう事だったのね」
「そういう事」
つまらない話をしてしまったな。気まずい雰囲気になってしまった、話すんじゃなかった。空気を変えよう。本来の目的は、千秋へのメッセージの謎解きだ。
「そうなんだ」
「そこは社員の9割が女性の会社でね、そこで3、4年くらい働いてたんだ」
「どんな仕事の会社」
「そこはノーコメント。でね、役職はつかなかったけど、それなりの古株になったんで、新人のめんどうを見るようになった」
「うん」
「新人といっても、ほとんどがオバチャンでね、なかなか仕事を覚えてもらえなかったんだよ。それでも根気よく教えていたんだが、ひとり、どうしても覚えられない人がいた」
「そういう人いるよねぇ」
「しかも話好きでね、働かないし喋ってばかりいたから、毎回毎回注意してたんだ」
「お疲れ様です」
「で、その日も注意してた」
「なにがあったの」
「毎回毎回、注意されていたもんで逆ギレされてね、[なんでアタシばかり注意されなきゃなんないの!]って、言い返してきたんだよ。そこで終わらず、[あ、わかったアタシのコト好きなんでしょ! だから、絡んでくるんでしょ!]って言われたんだ」
千秋が、あんぐりとする。
「なんでそうなるの」
「さあね。結局、注意するのは諦めて、その人のミスをフォローする事にしたんだけど、そこからが地獄の始まりだったよ」
「どうして」
「翌日、会社に行ったら何故か私がそのオバチャンに告白したという話が会社中に広まっていた」
千秋は目を白黒させた。
「ウワサって、伝言ゲームのように尾ひれがつくだろ? それが女性ばかりのところだとクモの巣のようなおしゃべりネットワークによって、尾ひれどころか背びれ、胸びれ、腹びれまで付いて、最後に私が耳にしたときは[私がオバチャンのことを好きでストーカーしている]という話にまでなっていた。
ウワサの発信源であるオバチャンは、それを耳にした時、あまりに内容が変わっていせいで自分に身に覚えのない話だったから、自分はストーキングされていると勘違いして、会社辞めちゃったんだよ」
「なんなのよそれ、それでどうなったの?」
「別にどうもしない。今までどおりオバチャンの分の仕事を私がやっただけだよ。私がストーカーだというレッテルが付いてね。
……こういうエピソードが、まだまだあるけど聞くかい」
そしてその度に女性にたいして幻滅してきたのだ。歳も歳だし興味は無い。むしろトラブルに巻き込まれないように、必要以上に関わりたくないのだ。
「……もういいわ。そういう事だったのね」
「そういう事」
つまらない話をしてしまったな。気まずい雰囲気になってしまった、話すんじゃなかった。空気を変えよう。本来の目的は、千秋へのメッセージの謎解きだ。
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