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佐野千秋の休日 謎解き川柳(小川三水目線)

その2

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「となると、封筒から情報はここまでか」

あらためて、レポート用紙の川柳のような言葉をみた。

「所縁は、しょえん、と読むのかな?」

「それだと字数が合わないわよ、違うんじゃない?」

「そもそも、これ川柳なのかな?」

「たぶん違うわね、川柳の基本を外しているもの」

「どういうところが?」

「川柳や俳句、短歌っていうのはボヤかすのが基本らしいの。なぜなら詠んでくれる相手が不特定だから。つまり多くの人に良いと感じてもらう、受けての想像力を刺激する言葉を選ぶものなのよ」

「たとえば?」

「そうね……、たとえばこの(紅)という字だけど三ちゃんなら何を連想する?」

「僕なら紅柔五郎かな」

「クレナイジュウゴロウ? 誰それ?」

「子供の頃観たアニメの主人公だよ、知らない?」

「知るわけないでしょ! 三ちゃんの子供の頃ならアタシは生まれてないんだからね」

「何回か再放映しているんだけどなぁ、夏休み子供劇場とかで」

それも知らないわ、という顔で千秋は続ける。

「こういうふうにわかる人とわからない人に分かれるでしょ」

「うんまあ」

「だからボヤかすの、この場合だと」

紅で あのヒーローを思い出す

「と、するの。そうするとヒーローの部分が相手の想像しだいになるじゃない」

「なるほど、僕の場合は紅柔五郎だけど、千秋の場合はなにを連想するんだい」

「あたしの場合は、クリムゾン・ユカかな」

「誰それ」

今度はこっちが訊く。

「クリムゾン騎士《ナイト》っていう深夜アニメのヒロインよ。3人の美少女が主人公で、それぞれのイメージカラーが、[紅]と[赤]と[朱]なの」

どう見分けるんだそれ?  と、問い返そうとしたが、千秋が興奮ぎみに話しているのをみてかなりのファンだと悟り、いらない事を言ったら拳が飛んできそうなので黙って聞くことにした。

「ずいぶんハマったみたいだね」

「そうね、私の世代の女の子はほぼハマったと思うわ。内容も過激だったし深夜時間帯の放送だったから、寝不足で学校に行くコが続出して、社会問題にもなったっけ」

「いくつくらいの時?」

「小学校の3、4年生くらいの時かな」

「そりゃ問題になるね」

なんとなく思い出した。たしかそんな話題が昔あったような気がする。私は社会人になっていたから、あらためて千秋との年の差を実感した。

「でね、小学生のユカ・マキ・リノの3人が学校のキャンプ実習に行ったとき妖魔に襲われるの」

続くんだ、この話。

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