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第1部
その4
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「揉めたって、一色くんと1課長がなの。大丈夫だった」
「いえ、僕じゃなくて2課長の馬場さんとです。定時で帰る約束だから残業しなくていいと言ってくれて、1課長がよその課長が口を出すなと売り言葉に買い言葉となって。僕らがいるとよけい揉めるからさっさと帰りなさいって馬場さんに言われて、まあ逃げ出してきた訳です」
「そうなの。塚本さん、大丈夫だった」
千秋の言葉に塚本はこくんと答える。それを見て千秋はホッとする。
そうこうするうちに新居に到着して、中に入る。
「ああ、ここが僕らの新しい職場ですか」
「問題無いと思うけど、2人とも自分の荷物を確認してちょうだい」
新しい職場は広さこそ資料室と同じだったが資料棚の分だけスペースを確保できたので、6人分のデスクを置けたし、(来る人がいるとは思わないが)応接室セットも置けた。
2人は私物に問題が無いことを確認すると、用意されたデスクにそれぞれ仕舞い、千秋に報告した。
実際は3日ほどであったが、こうして3人でいるのは久しぶりだなと千秋は感じる。ふと、塚本がいるけど今がチャンスかな、と思い千秋は一色に頭を下げる。
「この間はごめんなさい、一色くん。そのつもりは無かったんだけど、当たり散らすようなマネをして、ごめんね」
「頭を上げてくださいチーフ。やだな、そんなこと気にしてたんですか。僕はなんとも思ってませんから気にしないでください」
「でも、」
塚本が一色の袖を引っ張る。
「ああ、ひょっとして僕の態度がそんな風に見えてましたかね。だとしたらチーフの事ではなくて別の、プライベートの事で悩んでただけですから」
「そうだったの。それはそれで気がつかなくてごめんね」
「だから気にしないでくださいよ」
久しぶりに和やかな空気になったと、ホッとした。それなら今日は打ち上げに行かないかと誘ってみるが、塚本ではなく一色にフラれてしまった。
今夜は約束があるという。
いつにするか話し合った結果、週明け月曜の4日の夜にしようと決まり、町屋塩尻も都合が良ければ一緒に誘う事となった。
「研修はたしか5月だっけ。あとひと月だけどヨロシクね」
千秋の言葉に一色はバツ悪げに返事をする。
「すいませんチーフ、僕、研修には行きません。今日の昼休みに常務に伝えてきました」
「ええっ、なんで、あんなに行きたがってたじゃない」
「いえ、僕じゃなくて2課長の馬場さんとです。定時で帰る約束だから残業しなくていいと言ってくれて、1課長がよその課長が口を出すなと売り言葉に買い言葉となって。僕らがいるとよけい揉めるからさっさと帰りなさいって馬場さんに言われて、まあ逃げ出してきた訳です」
「そうなの。塚本さん、大丈夫だった」
千秋の言葉に塚本はこくんと答える。それを見て千秋はホッとする。
そうこうするうちに新居に到着して、中に入る。
「ああ、ここが僕らの新しい職場ですか」
「問題無いと思うけど、2人とも自分の荷物を確認してちょうだい」
新しい職場は広さこそ資料室と同じだったが資料棚の分だけスペースを確保できたので、6人分のデスクを置けたし、(来る人がいるとは思わないが)応接室セットも置けた。
2人は私物に問題が無いことを確認すると、用意されたデスクにそれぞれ仕舞い、千秋に報告した。
実際は3日ほどであったが、こうして3人でいるのは久しぶりだなと千秋は感じる。ふと、塚本がいるけど今がチャンスかな、と思い千秋は一色に頭を下げる。
「この間はごめんなさい、一色くん。そのつもりは無かったんだけど、当たり散らすようなマネをして、ごめんね」
「頭を上げてくださいチーフ。やだな、そんなこと気にしてたんですか。僕はなんとも思ってませんから気にしないでください」
「でも、」
塚本が一色の袖を引っ張る。
「ああ、ひょっとして僕の態度がそんな風に見えてましたかね。だとしたらチーフの事ではなくて別の、プライベートの事で悩んでただけですから」
「そうだったの。それはそれで気がつかなくてごめんね」
「だから気にしないでくださいよ」
久しぶりに和やかな空気になったと、ホッとした。それなら今日は打ち上げに行かないかと誘ってみるが、塚本ではなく一色にフラれてしまった。
今夜は約束があるという。
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