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第1部

下準備は入念に

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わかりましたと応えると、千秋は退室した。

同じ頃、竹ノ原専務が自室で恐縮しながらネット回線を通して、東京の葉栗副社長と話をしていた。

「……以上が会議のあらましとなります」

モニター向こうで黙って聴いていた葉栗は、 苦虫を噛み潰したような顔になる。

「してやられたな」

「は、力及ばず申し訳ありません」

葉栗と丹羽はそれぞれ東京と大阪の支社長なので、本社の会議の際には、葉栗は竹ノ原に、丹羽は万城目に委任状を渡してある。
つまり竹ノ原と万城目は各々2票ずつ持っている。
その上で決を取るときに足りなかったのだ、竹ノ原が恐縮するのも無理はない。

「どこをどうやられたか、解るかね」

「は、いえ、」

「議題の順番だよ」

臨時会議の議題は、横領の責任と人事であった。
議題は3つで順番は以下の通りだった。

・企画3課の廃止と課員の異動
・企画部と経理部の責務
・新設部門の責任者指名

会議が始まると、まずはサトウとスズキの退職が報告された。そして企画3課の成り立ちを説明されて、それにより不要部門となったので廃止するという事に決を取られた。これは問題なく廃止が決定した。残った課員の配置は後で決める事にして、次の議題に移る。

竹ノ原としては、護邸を降格させる、その事で頭がいっぱいだったので、最初の議題は気にもとめなかった。

経理部は課長の異動と部長の降格処分が決定していた。空いた部長の席も大鳥の子飼いが座ることが決定している。派閥の弱体化は無い。

企画部は部長が不在の為、護邸が常務職と兼任している。つまり護邸ひとりで全責任を負うしか無いのだ、竹ノ原はやったと思った。

しかし議題に移る前に、郷常務から提案というか願い出ることがあった。
資料課の現状を話すと、社員2名の保留を願い出た。

定年退職間近の人間などどうでもいいと、竹ノ原はそれを受け入れる。

そしていよいよ、護邸の責任追求になったが、今度は護邸から報告があった。
企画部長から今回の件で責任をとって退職すると届けを預かっている、これを受理したいかどうかと。

社長派は全員是となり、丹羽派も賛成、受理が決定された。
竹ノ原は少し不満だったが、これで部長席が空いたから、護邸を降格させてしまえば良い、そう思った時に護邸おもむろに退職届けを読み始めた。

何をし始めたんだと竹ノ原はいぶかしんだが、読み進めると同時に慌てはじめた。

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