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第1部

その4

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「調査資料部って、何をするところでしょうか」

「何もない」

「何もないって……」

「資料課と新しく創設する調査課がある部署、それが、調査資料部だが、資料課のやっていた社史編纂の仕事以外何もない部署だ。そこの資料課に塩尻さん、塚本さんが、調査課に町屋さん、一色君が所属となる。その担当常務が私という訳だ」

千秋は護邸の意図するところが、まだ呑み込めなかった。護邸は話を続ける。

「とりあえずこれが今現在、いちばん良い落とし所だと判断した。
企画3課が無くなる以上、リストラ予定だった一色君と塚本さんの引き取りとして、また手柄を立てたが部署の引き取り手の無い君、そして私は降格の代わりに、なんの手柄も立てれない窓際部署の常務なら、葉栗派は納得するだろう。
全員まとめて放り込める部署、それが窓際部署の調査資料部ということだ」

説明されてようやく千秋は納得したが、先が見えない部署の部長と分かって、少しがっかりした。

「そうがっかりするな、とりあえずの処置だ。私だって、このままで終わる気はないよ。今はとりあえず納得してくれ」

「わかりました。部長にしていただき感謝します。それで、ひとつお願いがあるんですが」

「なにかね」

「今回の件で、一色が有能であるとおわかりになったと思います。彼をアメリカ本社に研修に推薦して頂けませんでしょうか」

実際、一色のさりげないフォローが千秋の助けになっているし、彼が味方になってくれる時の約束なのだ。千秋は土下座してでも推薦をとるつもりだった。
しかし護邸はあっさりとそれを受け入れた。

「それくらいなら、何とかねじ込めるよ。けど君は良いのかね」

「お願いします」

千秋は護邸に深く頭を下げ、護邸は了承した。



「さて、話はこれで終わりだが、気に入ってもらえたかね」

「そういえば、私はもてなされてましたんでしたね。大変気に入りました。ありがとうございます」

「それはなにより。では、今夜はこれでお別れだ。明日また会社でな」

護邸の合図で、スタッフが部屋に入り、後片付けをはじめる。
護邸のエスコートで、部屋を出ると、別のスタッフにより、スマホを返してもらい、コートを着せてもらう。

「出口は別々だからね、気をつけて帰るんだよ」

護邸に挨拶すると、スタッフの後をついて廊下に出て、エレベーターに乗り込み、降りて地上に出る。そこは乗ったところと違う場所だった。

「ここはどこかしら」

スタッフに訊ねると、指を指し、あちらが駅になりますとだけ答え、そのままエレベーターに戻っていった。

千秋は言われた通り進むと、JR名古屋の駅にたどり着き、そのまま帰途についた。
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