佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女

藤井ことなり

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第1部

その4

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「一方、群春さんは元々エクセリオンさんより2割安く、商品もほぼ同等、その上、今回に至っては新たな仕入先を開拓し、エクセリオンさんの半値までになさるという努力もなされた」

今度は群春側を芝原は見る、彼らは全員神妙な顔をしている。

「……しかしながら、先程のニュースを加味すると、半値という数字は疑わしくなってきます。時間に余裕があれば、再度確認をお願いするところですが、さすがにもう決めなくてはなりません。今回は信用度を尊重して、エクセリオンさんとの取り引きを決めさせていただきます」

芝原の言葉に、千秋と一色は思わずハイタッチする、満面の笑顔で2人は立ち上がり、御礼の言葉を述べた。

群春の3人はうなだれるが、それどころではないとばかりに、挨拶もそこそこに会議室を出ていった。

「ぼ、僕、塚本さんに報告してきます」

一色もスマホ片手に会議室を出ていく、千秋は席を立ち芝原の前に来ると、改めて御礼を述べた。

「いやいや、佐野さんのチカラですよ。今回のようなコンペ、初めてでした。ほぼ負け決定の状態からよくひっくり返しましたね」

「紙一重です。たまたま遅れて、たまたまあの情報が入らなければ、たぶん負けていました」

「貴女の警備員を3人も倒すくらいの強さでもですか」

にやにやしながら芝原は茶化す。それを思い出して、千秋は平身低頭で謝った。

契約書にサインと捺印をすると、芝原に案内され医務室に向かい、警備員達にひたすら謝った。
芝原も、今回のことは会社に内緒にするから穏便にしてほしいと頼むと、警備員達はしぶしぶ納得した。



「課長さん達、居ませんでしたね」

「まあ心配しないで下さい、大丈夫てすから」

医務室から会議室に戻ると、一色が待っていた。
スマホを取り出し、塚本からの返信を千秋に見せる。そこには、大喜びしている顔文字が画面いっぱいに表示されていた。塚本さんらしいなと、千秋はくすりと笑った。

「ところで例の付加価値というのは、やはりハッタリだったのですか」

芝原の問いかけに2人は顔を見合わせる。契約は済んでるわよと、千秋は小声で一色に伝えると、一色は付加価値の話を芝原に話した。

「ははは、やっぱりAAの事でしたか。ちなみにどんな物を」

一色は自分の鞄から袋を取り出すと、中身を少しだけ出した。それは本のようだった。

「青木川アリスのオリジナル作品です。当人のコスプレグラビア付きで……」

「なんですってぇぇぇぇェェェェェ」

芝原の変わりっ振りに、2人とも驚いた。
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