佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女

藤井ことなり

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第1部

ジャンヌダルク降臨

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「護邸常務の案では後々当社にデメリットが起きます」

上司の意見に口を挟むだけでなく、ダメ出しまでしたのだ。さすがに早田専務は驚いた。

「当社から目をそらすためにそのような事をしたと知れば、女性社員から不評を買います。それは間違いなく後々不利益をもたらします」

「女性社員といったって、そんなにいないだろう」

「たしか、全体の三割くらいだったかな、うちはわりと多いよ。本社だけで言うなら、管理職が十三名に一般職が百名くらいだったかな」

よく覚えているなと、郷常務の言葉に千秋は驚いた。

「そのくらいなら大した影響は無いだろう、管理職十三名くらいなら」

「一般職百名が会社に不信感を持ちます」

「不信感だろう、そのくらいは仕方ない、少なくともスズキは横領したのは間違いないんだペナルティを受けるべきだ。時が過ぎれば皆忘れるさ、事実今までそうだったのだから」

「たしかに人の噂はその通りだと思います、ですがネットが充実した世の中ではそうはいくと思いません、現に5年前の事件が掘り起こされています。記録が残りいつでも調べられる世の中なんです、対処は迅速で手厚い方がいいんです。似たようなトラブルが起きたとき、会社は見捨てるどころか見せしめにするぞ、何て思われたら社員に不評を買います」

「女性社員に、だろう」

「いや、専務、全社員にだろうね。サトウも同様の処遇にするのだから。うん、確かに佐野さんの言うことも一理あるね」

「郷くん」

「この場合、会社に、ではなくそれを処断した我々が不評を買うんだろうな。僕は女性社員に嫌われるのは困るねぇ。専務にしたって、こんな噂が流れたら大学生の娘さん達に嫌われるだろうしねぇ」

郷常務の言葉に早田専務も言葉がつまった。そのまま視線を千秋に向ける郷常務。そして少し試すように問いかける。

「佐野さんは、どう対処するのがいいと思うんだね」

「スズキさんに再就職を世話するべきです」

この答えに全員が困惑して、理由を訊いた。

「護邸常務の仰有るとおり、会社から話題をそらすまではその通りだと思います。それに上乗せして、スズキさんを世間の目から隠す為に会社はsafetyhouseを用意した、ここまですれば少なくとも女性社員は会社に安心感を持ちます」

「馬鹿馬鹿しい、それじゃあ泥棒に追い銭じゃないか、そんな事できるわけ無い」

「もちろん、ただのsafetyhouseじゃありません、それに条件を付けます」
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