佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女

藤井ことなり

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第1部

その8

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「そうなると思うけど……」

千秋は何かにひっかかっていた。なんだろう、なんかを聞いたような気が……

「ああっ!!  」

「ど、どうしたんです急に」

「ポイセン!!  」

千秋はスズキからその名を聞いたことを思い出した、ポイセンことポイポイ先輩、サクマアラシゲを。

「ポイセンってなんです」

事情を知らない一色に千秋は説明する。

「思い出しました、キジマ達が言ってたチーフを襲うのをやめた男ですね。それがスズキさんを酷い目にあわせた男だったんですか」

「そう、しまった、アイツがいた」

キジマ達は今ごろ、東京から来た刑事によって洗いざらい話しているだろう。となると、事情確認の為にポイセンのところに行く可能性がある。
ポイセンもニュースでキジマ達の事件で知っているだろうから、とりあえず逃げ隠れするだろうが、逃げきれるとはかぎらない。なにより。

「……キジマが課長を脅していたことが知られるかもしれない」

「どういうことです」

エレベーターが着いたが2人はそれを無視して話し始め、扉は閉じて下がっていった。

「……つまり、今回の事件はキジマ達が私を集団レイプする目的だったけど、間違えて婦警を襲い、全員現行犯で捕まったわけよね」

「ええ」

「で、東京から刑事が来て、今回の件と過去の件を調べると思うの」

「おそらくそうなるでしょうね」

「となると証拠物件は警察に押収されるわよね」

「犯行の裏取り捜査でしたっけ?  警察はそれをやりますよね。でも証拠画像は消したんじゃ……」

「警察は復元できる。……と思うの。ドラマでの知識だけどさ」

「となると証拠画像をキジマ達に見せて自白させますね。キジマ達はたぶんシラをきるでしょう、となると証言が必要になる、それでスズキさんにたどり着きますかね」

「今すぐじゃないと思うけど、当時の交友関係や何かで、いずれたどり着くと思うわ」

「それなら、問題無いですね。そんな頃は彼女は退職しているでしょうから会社には問題無い」

「そうだけど……」

千秋は意外だった。一色ならスズキを庇うような発言をすると思ったからだ。

「チーフの言う通り、スズキさんは会社に損失を与えるという罪を犯しました。ペナルティを受けるべきです。たとえばキジマ達のカネの動きを警察が押収品から知り、確認の為にエクセリオンに来たとしますね」
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