佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女

藤井ことなり

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第1部

その4

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塚本が帰ったあと、一色のプレゼンを確実なのもにするために、2人は打ち合わせをすることにした。

30分ほどしただろうか、課長が戻ってきた。

「佐野君、君たち何しているんだね」

千秋のデスクで話していた2人は立ち上がり、課長の方を向く。

「月曜のプレゼンの打ち合わせです。新しいルートになりますから、一からやり直しになりますし、一色君ひとりでやりますから、念を入れて……」

「その、新しいルートなんだが本当に大丈夫なのかね」

「そうですね、半々というところでしょうが、明日の夜には確実にもっていきます」

「ど、どういう事だね」

「あー、」

千秋は少し考えると、一色に教えるかたちで課長に説明する。

「一色君は仕事上のパーティーに出たことある」

「謝恩会ならあります」

「シャオンカイっていうのが、どういうパーティーかしらないけど、不特定多数の出席者がいるパーティーでは売り込みの場でもあるの。
初めて会う、名刺交換する、ここまではいい?  」

「そこまでは取り引きでもやりますからね」

「そう、それから自己紹介して仕事の話になるのが取り引きだけど、パーティーはそうじゃない。自分自身と会社を売り込むのよ」

課長も黙って千秋の話を聴き始めた。

「名刺交換すれば、相手の勤め先がわかるでしょ。私の場合だと、ああエクセリオンの人なんだと分かる。この瞬間から相手にとって私はエクセリオン代表になるのよ。つまり私の一挙手一投足がエクセリオンの評価になってしまうの」

「それは緊張しますね」

「そう、パーティーって華やかだけど、やれて当たり前のマナーや対応が出来ないと、かえって会社に迷惑かけるの。それが[家]とか[一族]単位なのが昔の貴族の社交パーティーよ」

「ああだから[社交界デビュー]とかいうんですね」

「明日の私は、[互いに信頼している人の紹介]と[世界有数の企業エクセリオン]の底上げがあるけど、最後に決め手になるのは担当者の人となりなの。私達はそれを知っている者同士だから、確実性が高いのよ」

「なんか頂上決戦みたいですね、僕にはレベルが高すぎる話です」

「何言っているのよ、一色君なら出来るようになるわよ。ねぇ課長」

突然話をふられて、課長は驚き目を白黒する。

「しっかりして下さいよ。私が課長に課長らしい姿勢でいてと言ったのはそういう意味ですよ。私のボスらしくしてくださいよ」

「あ、ああ」
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