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第1部

その3

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「いったいどうやって」

「あちこち出かけた甲斐がありました。別のルートを見つけたんです。昨日、課長が帰った後に連絡をもらいました」

「そ、そうか、よくやった」

「これでうちの課の評価が上がりますね、さ、課長、そんなに背中を丸めないで、胸を張りましょうよ」

千秋は課長の胸を広げ、背中を押し、腰を叩いて姿勢を正した。課長職らしい姿勢である。顔色は蒼白のままだが。

少し思案顔した課長が尻ポケットから財布を取り出し、紙幣を千秋に渡しながら話しかける。

「佐野君、すまないが1階の自販機で全員分の飲み物を買ってきてくれないか。前祝いだ」

「わかりました、ありがとうございます」

紙幣を受け取り1階に向かおうとするが、ふと足を止め、課長に訊ねる。

「私の飲みたいものはコンビニにしか無いので、コンビニまで行っていいですか」

「ああ、かまわんよ」

千秋はぺこりと頭を下げると、コンビニに向かった。



「ただいま戻りました。みんな、課長からよ」

コンビニで買った飲み物を一色と塚本に渡したあと、課長にお釣りと飲み物を渡す。

「ご苦労、佐野君、さっきの話だが新しいルートというのは大丈夫なのかね。君の話からすると会ったばかりのようだし、そこは信用出来るところなのかね」

「ええ、たしかにそこと私とは浅いですが、間に入った方が、双方に信頼出来る方なので、互いに信用できるんです」

「契約はもうしたのかね」

「まだ口約束です。ですが、土曜の夜に本契約をする約束です。時間ぎりぎりですが、それを元に日曜にプレゼンの資料を作り、月曜の朝に課長から判子をもらい、一色君にコンペに行ってもらいます」

突然自分の名前が出てきたので、驚いた一色が千秋を見る。千秋は後ろ手でオーケーのハンドサインを送った。

「だから課長、月曜は必ず出社してくださいよ。会議にも出ないといけないし」

会議というワードを聞いて、ふたたび顔色が悪くなるが、ああ、と返事をしたあと千秋に仕事に戻るように言った。

一色達に話しかけることなく、自分のデスクに戻り、先程買った、正確には課長のおカネだが、ドリンクの蓋を開け、飲み干した。

それはひと仕事終えた後の一杯のようだった。



  昼休みになると、課長は飛び出すように部屋を後にした。
出ていったのを確認したあと、3人は集まり、緊急会議をはじめる。


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