36 / 322
第1部
その2
しおりを挟む壱ノ宮駅から6時半発の快速電車に乗り、名古屋には6時40分に着く。
いつもと違う乗客と朝の空気が、より高揚感をあげた。
ホームにある立ち食いの店で待ち合わせしたのだが、まだ開いていなかった。入り口に7時からと表示してある。
早く来すぎたかなと千秋は思ったが、そうでもなかったようだ。
10分後、待ち合わせの人物が来る。
「姐さん!! 」
大きな声で話しかけながらノブが駆け寄ってきた。
朝の通勤時間だから、目立たないようにスーツを着てくるように言っておいたので、スーツ姿なのだが、茶髪とピアスはそのままだった。
どう見ても、朝帰りのホストにしか見えない。それが姐さんと呼びながら近づいてくるのだ。
千秋の回りの人は、反社会勢力の人だろうかとジロジロ見る。
千秋は合図をして、ノブに近づき、腕をとって人気の無い通路まで引っ張っていく。
「おはよう、ノブ。朝早く来てくれてありがとう」
「姐さんの為なら何時でも来るっす」
屈託なく笑顔で応えるノブに、ちょっとイラついたがスルーして話を続ける。
「あんたにもらったデータ役に立ったわ。キジマ達がどんな奴らかも、それで分かったの」
「あ、やっぱり何かやってたんすね。なんかそんな感じがしたっすよ」
千秋は資料を取り出すと、ノブに見せ。それは5年前の事件だった。
「うわっ、あ奴らこんなコトしてたんすね、スゲー、スゲー、スゲー」
無邪気に興奮するノブのネクタイを掴み、千秋は通路の壁にノブを叩きつけた。
驚いているノブのネクタイをそのまま引っ張り、顔を近づける。
「あ、姐さん!? 」
「いい? ノブ、これは悪いことなの、やってはいけないコトなのよ、わかる? 」
千秋の怒気をはらんだ、しかし爆発させないように押さえている声と、睨み付ける目にノブは頷いた。
「あんたが喜んでいるこれを、キジマ達は私にしようとしているの。あんた、私がこんな目にあってもそんな風によろこぶの? 」
「そんなコトないっす、イヤっす、姐さんがこんな目にあうのイヤっす」
「そう、いいコね。あんたと縁を切らずにすんだわ」
千秋は引っ張っていたネクタイを離し、両手で直してやり、スーツの埃をはらってやる。
「私がこんな目にあうのイヤなのね」
「はい!! 」
「じゃあ、この仕事を頼める? 」
千秋は蛍の作った作戦チャートを渡す。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
黒龍の神嫁は溺愛から逃げられない
めがねあざらし
BL
「神嫁は……お前です」
村の神嫁選びで神託が告げたのは、美しい娘ではなく青年・長(なが)だった。
戸惑いながらも黒龍の神・橡(つるばみ)に嫁ぐことになった長は、神域で不思議な日々を過ごしていく。
穏やかな橡との生活に次第に心を許し始める長だったが、ある日を境に彼の姿が消えてしまう――。
夢の中で響く声と、失われた記憶が導く、神と人の恋の物語。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
『イケメンイスラエル大使館員と古代ユダヤの「アーク探し」の5日間の某国特殊部隊相手の大激戦!なっちゃん恋愛小説シリーズ第1弾!』
あらお☆ひろ
キャラ文芸
「なつ&陽菜コンビ」にニコニコ商店街・ニコニコプロレスのメンバーが再集結の第1弾!
もちろん、「なっちゃん」の恋愛小説シリーズ第1弾でもあります!
ニコニコ商店街・ニコニコポロレスのメンバーが再集結。
稀世・三郎夫婦に3歳になったひまわりに直とまりあ。
もちろん夏子&陽菜のコンビも健在。
今作の主人公は「夏子」?
淡路島イザナギ神社で知り合ったイケメン大使館員の「MK」も加わり10人の旅が始まる。
ホテルの庭で偶然拾った二つの「古代ユダヤ支族の紋章の入った指輪」をきっかけに、古来ユダヤの巫女と化した夏子は「部屋荒らし」、「ひったくり」そして「追跡」と謎の外人に追われる!
古代ユダヤの支族が日本に持ち込んだとされる「ソロモンの秘宝」と「アーク(聖櫃)」に入れられた「三種の神器」の隠し場所を夏子のお告げと客観的歴史事実を基に淡路、徳島、京都、長野、能登、伊勢とアークの追跡が始まる。
もちろん最後はお決まりの「ドンパチ」の格闘戦!
アークと夏子とMKの恋の行方をお時間のある人はゆるーく一緒に見守ってあげてください!
では、よろひこー (⋈◍>◡<◍)。✧♡!
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ハピネスカット-葵-
えんびあゆ
キャラ文芸
美容室「ハピネスカット」を舞台に、人々を幸せにするためのカットを得意とする美容師・藤井葵が、訪れるお客様の髪を切りながら心に寄り添い、悩みを解消し新しい一歩を踏み出す手助けをしていく物語。
お客様の個性を大切にしたカットは単なる外見の変化にとどまらず、心の内側にも変化をもたらします。
人生の分岐点に立つ若者、再出発を誓う大人、悩める親子...多様な人々の物語が、葵の手を通じてつながっていく群像劇。
時に笑い、たまに泣いて、稀に怒ったり。
髪を切るその瞬間に、人が持つ新しい自分への期待や勇気を紡ぐ心温まるストーリー。
―――新しい髪型、新しい物語。葵が紡ぐ、幸せのカットはまだまだ続く。
30歳、魔法使いになりました。
本見りん
キャラ文芸
30歳の誕生日に酔って帰った鞍馬花凛。
『30歳で魔法使い』という都市伝説を思い出した花凛が魔法を唱えると……。
そして世間では『30歳直前の独身』が何者かに襲われる通り魔事件が多発していた。
そんな時会社での揉め事があり実家に帰った花凛は、本家当主から思わぬ事実を知らされる……。
ゆっくり更新です。
皇帝の寵妃は謎解きよりも料理がしたい〜小料理屋を営んでいたら妃に命じられて溺愛されています〜
空岡
キャラ文芸
後宮×契約結婚×溺愛×料理×ミステリー
町の外れには、絶品のカリーを出す小料理屋がある。
小料理屋を営む月花は、世界各国を回って料理を学び、さらに絶対味覚がある。しかも、月花の味覚は無味無臭の毒すらわかるという特別なものだった。
月花はひょんなことから皇帝に出会い、それを理由に美人の位をさずけられる。
後宮にあがった月花だが、
「なに、そう構えるな。形だけの皇后だ。ソナタが毒の謎を解いた暁には、廃妃にして、そっと逃がす」
皇帝はどうやら、皇帝の生誕の宴で起きた、毒の事件を月花に解き明かして欲しいらしく――
飾りの妃からやがて皇后へ。しかし、飾りのはずが、どうも皇帝は月花を溺愛しているようで――?
これは、月花と皇帝の、食をめぐる謎解きの物語だ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる