佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女

藤井ことなり

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第1部

推理する帰途

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一色は納得できなかった。

「襲撃計画が必ず明日とは限りません、家まで送りましょうか」

「一色くん、名古屋でしょ。大丈夫よ、栄から壱ノ宮までは明るくて人混みばかりだから」

千秋の言葉に不承不承、一色は受け入れた。ならばと、栄駅の改札まで送ると申し出、千秋はそれを受け入れた。

  行く道、一色は無言であった。

「どうしたの、一色くん。怒っているの」

「いえ、考えてました。キジマって奴らは、何でこんなに安易に人を襲うなんて考えるのかなって」

「そう言えばそうね」

「まともな人間なら、まず思いつきません。さらに思いついても実行しようとしないでしょう。人としても倫理とか道徳が止めますし、刑罰が怖くて止めると思うんです」

「う~ん、そうね。課長を使ってのスパイ行為も、なぜ出来たかも謎よね」

「何というか、抑止力のハードルが低い感じです。そこから想像すると、前にやったことがあるんじゃないでしょうか」

「成功体験てやつ?  」

「それです。窃盗やギャンブルを繰り返す人は、1度成功して、その成功体験が忘れられず、また手を出すというやつです」

「キジマ達は以前その経験があると」

「可能性ですけどね」

「だから抑止力のハードルが低い……」

千秋は自分の呟きで、思い出したことがあった。
スマホを取り出し、画像をひとつ一色に見せる。

「一色くん、この女性に見覚えない?  うちの会社のコなんだけど」

「さて?  見覚えありませんが、この人がどうしたんです」

「私のストーカー(仮)らしいのよ」

「なんです、そのカッコカリっていうのは」

自分の通っているジムに3週間前に入会して、千秋の来る日にしかほぼ来なくて、毎回髪型と服装が違うことを伝えた。

「なるほど、偶然にしてはできすぎですね。特に髪型。毎回変えるのは不自然だと思います」

「3週間前からというのも気になるのよ、ちょうど私達がコンペを任命された頃だし」

「うちの会社の人で間違いないんですか」

「それは確かよ」

あらためて、一色は画面の女性を見る。

「う~ん、ダメですね。どこかで見たような気もしますが、思い出せません」

「塚本さんなら知っているかな」

「どうでしょう、彼女の交遊関係は少ない……あ、このコひょっとして、あのコじゃないかな」

一色は何かを思い出したようだ。
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