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第1部

その7

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  一色は仰天した。失敗すれば自分の身に危害がおよぶのだ、自分の貞操を軽視しているのだろうか、それとも勝算があっての事だろうか。

「チーフ、ご自分の言っている事が分かっていますか、女としては勿論、下手に抵抗すれば手違いで命にかかわるかも知れないんですよ」

千秋は重々わかっているというように、重々しく頷いた。

「わかっている。でも仕入価格はもう下げれないし、相手に言った付加価値もまだ見出だせない。時間も無いのよ」

「だからって」

「相手がまともな連中なら、こんな事しないわ。でも企業努力をせず、スパイ行為をしたり襲撃計画をたてるような奴らよ、そんな奴らに負けたくもないのよ」

「勝算はあるんですか」

「あるわ。どんな計画かは巻き込みたくないから話さないけど、勝算はある」

千秋は力強く答える、一色はその迫力に圧倒された。

「最後にひとつ質問があります、僕がゲイであることに抵抗はありますか」

「無いわ。ああ、ひとつだけあるかな」

「なんです」

「同じ人を好きになって恋敵になったときだけよ」

一色はぷっと吹き出す。

「あははは、わかりました、味方になります」

一色は手を差し出す。

「僕の担当は、横領の証拠探しでチーフの濡れ衣をはらす。さらにスパイ行為の証拠探しとプレゼンの付加価値探しですね」

「その間に私はキジマ達の襲撃計画を失敗させる、私の方からもスパイ行為の証拠探しと付加価値もさがす。そして課長を失脚させ、その後釜をプレゼン成功の手柄により私が座る。そのまま一色くん達と課を存続させる」

千秋は一色の手を握り、握手を交わす。

「ありがとう、味方になってくれて。成功したら必ず報酬を払うわ」

「いいですよそんな、僕自身のためでもありますから」

「ダメよ、味方になった以上報酬は必要よ」

「しかし」

「報酬はアメリカ本社への研修でどうかしら」

一色は飛び上がって喜んだ。

「本当ですか、アメリカ本社へ行けるんですか」

「派閥争いでこっちに来たけど、私擁護派は負けた訳ではないわ、だからコネはあるの。計画が成功してからという条件付きだけどね」

「やりますやります、チーフ、飴とムチの使い方上手いですねぇ」

「それ誉めてんの」

2人は笑いあった。すると何処からともなく拍手がわき上がった。
  千秋達の席のすぐそばに座っていた、ボックス席の白髪混じりの紳士、ロマンスグレーという言葉がよく似合う人からの拍手だった。

「いやいや、中々迫力のある口説きだったよ。見事だった、テンマが気に入るわけだ」
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