佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女

藤井ことなり

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第1部

その4

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「味方ですか」

「そう、部下でも同僚でもなく友達でもなく、味方」

「なんのために」

「一色くん、あなたゲイでしょ」

千秋の言葉に一色は気色ばんだ。

「それがなんだというんです、ええ、確かに僕はゲイですよ。しかもオープンです。だから嚇しにはなりませんよ」

警戒心からの感情的になったのだろう、一色は興奮ぎみに言い返す。まわりの客も少し空気が張りつめた。

「落ち着いて、ごめん、話の持ってき方が悪かったわ。ちゃんと説明するから、もう一度話させて」

一色が落ち着くのを待って、もう一度、言葉を選びながら伝えるように話し始めた。

「今、うちの課は存亡の危機なの」

千秋は、今朝の横領の濡れ衣を着せられた話をした。

「……というのが現状なのよ」

「たしかに大変な状況ですが、それはチーフが、ですよね。僕と何の関係があるのです」

「私が本社からの異動なのは知っているわよね、理由は知っている?  」

「いえ、そこまでは」

「簡単にいうと、派閥争いに巻き込まれたのよ。それで私は本来なら辞めさせられるところを、降格処分の異動となって、こっちに来たの」

「そうだったんですか、ああ、そういう事情を背負っているから、うちの課に配属されたんですね」

「たぶんね。上層部は事情を知っているから、私をもて余したんでしょうね」

「それでもまだチーフの事ですよね、まあ課長も監督不行き届きで責任をとらされるかもしれませんが」

「会社がうちの課まるごとリストラしたがっているのよ」

「僕もですか」

「私は敵対派閥、課長はたぶん横領、塚本さんは人間関係」

「僕は何です?  仕事はやれますし、コミュニケーションもとれてますし、それなりに会社に忠誠心もありますよ」

「……」

「……僕がゲイだからですか」

「たぶんね」

一色は黙ってしまった。

「……まいったな、たしかに嗜好の性で国内の会社の就職が難しかったです。だから外資系ならその辺りは寛大だと思ったのに……」

「会社は外資系でも、社員は現地採用だからかもね」
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