佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女

藤井ことなり

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第1部

その4

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「チアキさん?  」

考え込んだ千秋にノブは話しかけた。

「お願いがあるんです」

「なに」

「自分を舎弟にしてください、姐さん」

千秋は椅子から転がり落ちそうになった、姐さん?  舎弟?  なに言っているのこのコ?  そう思ったが、両手をついて頭を下げている姿は、本気を感じた。

「姐さんに逢うまでは興味本位でした、けど逢ってみて分かったんです、自分は姐さんに逢うために生きてきたんだって。お願いします、舎弟にして下さい」

「ちょ、ちょっと待って、舎弟っていうけど具体的にはどうしてほしいのよ」

「なんでもいいんです、姐さんの為に自分を使って下さい。姐さんの為に何かしたいんです」

すがるような目で見るノブに、千秋は戸惑った。

[利]で考えれば、舎弟にした方がいい、ノブは使える役に立つ。いざとなれば切り捨てればいい。
[理]で考えれば、舎弟にしない方がいい、ノブは危ない、このコのしでかした事で巻添えになりかねない。しかし……

「……いいわ、舎弟にしてあげる」

「ほんとっすか!!  」

「ただし条件があるわ、これからは何かのするときは必ず私に相談しなさい。アナタはたぶん越えてはいけない線を簡単に越えちゃう人だと思うの、それではいつか破滅してしまうわ、舎弟になったいじょう、私はアナタの面倒をみる責任があるの、わかる?  」

「はい!!  ありがとうございます!!  」

「まだ返事してないし、聞いてもいないわよ、ノブ、私の舎弟になるの?  」

「なります。よろしくお願いします!!  」

ノブは満面の笑みで、返事をした。やれやれ、大変なものを背負いこんだなと千秋は思ったが、[利]でもなく[理]でもなく、[情]で受け入れる事にした。

  おそらくこのコは、誰かがついていないと綿帽子のように、ふらふらと何処かへ行ってしまい、下手すると命を落としかねない所に落ちてしまう、そんなコなんだ。
とりあえず面倒をみよう。少しずつ足りないものを教えていこうと思った。

「私もお人好しよね」

千秋は頭を掻いた。


「で、姐さん、オレ、なにやりましょう」

さっそくおねだりするノブに、千秋は少し考える。コンペ等の会社の事は頼めない、横領の件も同様だ。
となると、キジマとかいう奴らの動向を調べてもらうのが妥当か。

「コンペは今度の月曜にあるの、それまでの間、キジマ達の動きを見張っていて。いい、見張っているのよ、危ないことしちゃダメよ」

「わかりました、じゃあ行ってきます」
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