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第1部

その3

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  頼んだ料理を食べ終わったので、お開きにすることにした。

店を出て挨拶すると2人は帰途についた。千秋も名古屋駅に向かい、JRで尾張壱ノ宮駅に帰る。
  なんとなくまっすぐ帰りたくなかった千秋は、久しぶりにジムに寄ることにした。

「お、今日はジムの方なの」

一昨日見たばかりの顔が、笑顔で迎えてくれる。

「お疲れ様、ケイ。ちょっと寝る前に汗をかきたくてね」

千秋の友達である鏑井蛍は、カブライスポーツジムの、オーナー兼トレーナーでもある。

「じゃあストレッチからランで、軽いエクササイズそれからストレッチでしめようか」

「オーケー、じゃあ着替えてくるね」

更衣室でトレーニング姿に着替えて、トレーニングルームに来ると、ケイと一緒にストレッチを始める。

「こんな時間までご苦労様、オーナー自らやるんだね」

「平日の夜間は滅多に会員さん来ないからね、トレーナーさん置いといても暇させるだけだしね」

「さすが経営者」

辺りを見回すと、千秋達に以外にいるのは確かに少ない。仕事帰りのOLらしいのと、筋トレマニアっぽい人が数人いるだけだった。

「そういや、昨日ハジメに会ったよ。千秋に会いたがってた」

「ハジメに?  私も会いたかったなぁ」

「不規則な勤務だもんね、なかなか会えないよねぇ、それでそっちの仕事の方はどうなったの」

「進展無し、変わり無し」

「ふうん、変わりないんだ」

ストレッチが終わり、ランニングマシンで30分程走り、ふたたび蛍の指導でエクササイズをして、ストレッチに入った。
  マットに座り、前屈のストレッチを蛍が手伝う。

「ねえケイ」

「なに」

「依頼していい?  」

鏑井蛍はスポーツジムのオーナーではあるが、もう1つの顔がある。情報屋の顔だ。

  海外旅行をしている千秋と連絡とるために、蛍はインターネット覚えた。国や地域によっては連絡とりにくい事もあるので、蛍は千秋と連絡取りたさに、スキルをあげていく。そしてついにはハッカーレベルの腕前となってしまったのだ。

「何を調べればいいの」

「郡原物産と森友財団のコンペ関係者の趣味嗜好」

「あんたのところは?  」

「そこは私がやるわ、時間が無いもの、そこまで負担かけられないわ」

「ふっふっふっ、見くびってもらっちゃあ困るねぇ」

「ダメよ、やり過ぎちゃ」

蛍は、千秋の為なら危ない橋を平気で渡るだろう。自分の事で、友達を危ない目にあわせたくない、だから頼むのを躊躇していた。
だが、何の進展もなくこのまま過ぎていては意味がない、蛍に頼るしか道が思いつかなかったのだ。
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