ばあちゃんの豆しとぎ

ようさん

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ふるさとの海は有り難き哉 4

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 ガタタン、ガタタンとどこか懐かしい金属音が響き、松葉のすぐ上の無人駅に一両編成のディーゼルカーが停まった。

「電線が無い電車!」

 颯也はそう叫んで駆け寄り、また写真を撮る。

「あれはディーゼルカー。重油で走るんだよ」

 国鉄時代からディーゼルカーしか見たことがなかった若い頃の私は逆に、首都圏の電車の上にマンガやアニメと同じような電線が走っているのを見て感動したものだ。何だか不思議な気分だ。
  
 故郷ふるさとの真冬の海を眺めながらふと、厳しい真冬に向おうという時期にさらに北を目指す青年が、冬の津軽海峡を眼前に立ち尽くす様を想像した。

 三陸の寒流の海より一層凍てつく海峡の荒波は、彼の目にどう移ったのだろう。海の向こうの目的の地に希望の光はあるのだろうか。そこで手を差し伸べてくれる人と出会えていればいいのだが。

 私の記憶にある津軽海峡は小学校の修学旅行の時の、初夏の海だ。昭和の最後の年に廃止となった青函連絡船の上から、真っ青な海にイルカがキラキラと飛び跳ねるのを友人達と大騒ぎしながら見ていた。

「ああ、お腹空いた!いい加減ラーメン食べに行こうよ」

 咲恵ちゃんが痺れを切らした叫び、四人は再集合して砂浜から上がる。

「やべえ、靴濡れた」と言う颯也の足元を見るとスニーカーだけでなくズボンの裾までびっしょり濡れて砂の塊までついている。見た感じ、そんなに濡れるような遊び方をしていたようには見えなかったのに見込みが甘かった。予定はラーメン屋だけだったから、着替えなんて持ってきてない。

「そんなんじゃ車に乗せられないよ……」

 私が頭を抱えると、畑中君は「俺は大丈夫ですから」とフォローしてくれた。
 一応飲食店に行くので払えるだけ砂を払い、足カバー代わりにビニール袋を被せて車に座らせた。颯也は懲りずにそれすら面白がっている。
 すぶ濡れで砂だらけのスニーカーを帰ってから大急ぎで洗ったとしても、明日の帰りまでには乾きそうにないのだが。

「颯也、明日帰りに履く靴ないよ。またお祖父ちゃんの長靴借りる?」

「えー?やだよ」
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