ばあちゃんの豆しとぎ

ようさん

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葬儀後の招かれざる珍客 1

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 みっこ伯母は伯父の転勤で仙台に引っ越すまでは母と同じ職場に勤めていた。洋裁が趣味で小さい頃の私に服を縫ってくれるお洒落な伯母が大好きだった。母や叔母もよく服を作ってもらったんだとか、そんな話を聞いた。

 坂を下って来だ叔父はやはりついでに駐車場横のゴミの集積場やプレハブの物置小屋横の水道などを確認して回った。

 町内の上の世代の人達がいよいよご高齢となり、定年退職を迎えた叔父にもついに共同墓地の役員が回ってきたのだとかなんとか、酒の席で話していたーーと、何の気なしに思い出した。

「さすが叔父さん、仕事熱心ですね」

「なぁに。ただの心配性だ」

「あれ?元栓が閉まってねえ」

 蛇口をひねるとちょろちょろと水が出、叔父が首を傾げた。
 冬季の間は凍結による水道管の破裂を防止するために、元栓を閉めて水を抜いてある。昨日はお墓に供える水のために使わせてもらい、元に戻したはずなのだが。

「何、忘れだんだべ。確認してよがったごど」

 と、叔母はやはり素っ気ない。

んねでぁそうじゃない。昨日みんなで帰りに確認したのさのに

 そう言って叔父はまた水抜きの作業をするため、中に元栓のあるプレハブ小屋を開けたーー途端に叔父らしからぬ奇声とも悲鳴ともつかぬ大声を上げた。

「ひゃあ!熊っコ!」「熊?」「熊!」

 熊がプレハブ小屋で冬眠中?だったら悲鳴を上げないほうがよかったんじゃないかとか、いやでも昨日は誰も何も言わなかったからいなかったはずだとか、叔父の方に駆け寄るべきか一目散に逃げるべきかーーなどなど一瞬のうちに色々と考えて迷っていた時。

「おい!おいっ!あんたっ!」

 叔父は今度はプレハブ小屋の中に呼びかけ始めた。

信男のぶお君!どうした」

 いくら慣れているとはいえ、年齢的に転倒が心配になるような勢いで、父がドスドスと坂を下ってきた。

 私は叔母と顔を見合わせ、伯父と父の肩越しにプレハブ小屋の中の様子をのぞいた。

「竹花さん、どうすんべ。人っコぁ死んでだ」

 薄暗い小屋の中、叔父が熊……と見間違えたのは黒っぽい寝袋だったようで、中味が人の形になっており向こうにニット帽を被った頭が見える。床の周囲にはその人の荷物らしきリュックや地図、ランプなどが雑然と置かれていた。

 私は一瞬、愕然とした。子どもの時からこのかた、「人生で死んでもしたくない一番のこと」ダントツトップは変死体になる事とそれを発見する事だった。ついにお祖母ちゃんのバチが当たったのだろうか?

 凍死?自殺?まさか殺人?

 私は恐怖で逃げ帰りたかったが足がすくんで動けない。父は果敢にも小屋に足を踏み入れ、その人の側に屈んだ。

「あっ、いぬいだ」

 叔母が言うと同時に、グォーというイビキが聞こえた。

「息、してだやぁ……」

 父が気の抜けたような声で言ったその時。

「うわあああっ!」


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