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祖母と父のこと1〜祖母のレアな旧姓の由来〜
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父やいとこおじ達は本家の姓の話で盛り上がっていた。
地域に多い姓、地域特有の姓というのはどの地方でもあるものだろうが、長く他地域との交流が容易で無かった実家の辺りでは特に多いのかもしれない。私の旧姓である「竹花」や「長内」もそうだが、田高、下斗米、小屋畑といった姓は他県ではあまり聞かないが、この辺りでは同じ姓の人がよくいる。
内城、外館姓などはその昔、南部藩領であった頃の名残なのかもしれない。
だが、祖母の本家の姓は「十刈」といい、この地域でもレアな姓だ。おそらく町の中でも本家の男系の親戚の家くらいしかいないのではないか。
その昔、南部班のご城下に住んでいたご先祖様が、開墾令により十町歩(約10ヘクタール)の荒れ野を独りで刈り開いた事に対し、「見事である」と殿様より褒美とともに賜った姓だーーと口伝されているそうだ。
もしかすると当時は多少羽ぶりが良かったのかもしれないし、何が理由かはわからないが、時代が下ると本家はこの町の山間部に移住、昭和の頃にはもなるとごく平均的な三チャン農業(担い手が爺ちゃん、婆ちゃん、母ちゃん。父ちゃんは都市へ出稼ぎ)の零細農家となっていた。
真偽のほどはさることながら、本家の人達はその姓に誇りを持っている。
しかしその後、それに対抗したのか見栄を張ったのか、「三十刈」「五十刈」「百刈」を名乗る家が、北三陸に次々と現れて今に至る現れたのだという笑い話を父といとこおじ達がしていた。
父が昔、出張で全く別地方に出掛けた際には「八百刈」という姓の人に会ったという。あれこれとり紛れてルーツを聞きそびれたのが残念だ、と話すといとこおじ達が
「何、そっただのぁどうせ嘘八百だ」
なんてゲラゲラと混ぜっ返す。長内さんも車座に混じってそんな話を楽しそうに聞いている。私も初めて聞く話なので興味を惹かれ、輪に混ざった。
話は父達が子どもの頃の祖母の思い出話になった。
子どもの頃の私達が瞬間湯沸かし器の父を恐れていたように、きかん気が強く男まさりでなければ母一人子一人、とても生きていけなかった祖母はやはり、父にとってもおっかない肝っ玉母ちゃんだったらしい。祖母に鍬を振り回しながら追いかけられた事がある、という話を父がた。が、そこまで祖母を怒らせた肝心の原因が何だったのかはまるきり覚えていないという。
「なに、どうせ何かしたんだべ」と、いとこおじ達からすげなく突っ込まれ、納得できないようにしきりに首を傾げている。子どもなんてそんなもんかもしれないーー親の側だって調査官や判事ではないので、理不尽な雷を落としていないとも言い切れないが。
地域に多い姓、地域特有の姓というのはどの地方でもあるものだろうが、長く他地域との交流が容易で無かった実家の辺りでは特に多いのかもしれない。私の旧姓である「竹花」や「長内」もそうだが、田高、下斗米、小屋畑といった姓は他県ではあまり聞かないが、この辺りでは同じ姓の人がよくいる。
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だが、祖母の本家の姓は「十刈」といい、この地域でもレアな姓だ。おそらく町の中でも本家の男系の親戚の家くらいしかいないのではないか。
その昔、南部班のご城下に住んでいたご先祖様が、開墾令により十町歩(約10ヘクタール)の荒れ野を独りで刈り開いた事に対し、「見事である」と殿様より褒美とともに賜った姓だーーと口伝されているそうだ。
もしかすると当時は多少羽ぶりが良かったのかもしれないし、何が理由かはわからないが、時代が下ると本家はこの町の山間部に移住、昭和の頃にはもなるとごく平均的な三チャン農業(担い手が爺ちゃん、婆ちゃん、母ちゃん。父ちゃんは都市へ出稼ぎ)の零細農家となっていた。
真偽のほどはさることながら、本家の人達はその姓に誇りを持っている。
しかしその後、それに対抗したのか見栄を張ったのか、「三十刈」「五十刈」「百刈」を名乗る家が、北三陸に次々と現れて今に至る現れたのだという笑い話を父といとこおじ達がしていた。
父が昔、出張で全く別地方に出掛けた際には「八百刈」という姓の人に会ったという。あれこれとり紛れてルーツを聞きそびれたのが残念だ、と話すといとこおじ達が
「何、そっただのぁどうせ嘘八百だ」
なんてゲラゲラと混ぜっ返す。長内さんも車座に混じってそんな話を楽しそうに聞いている。私も初めて聞く話なので興味を惹かれ、輪に混ざった。
話は父達が子どもの頃の祖母の思い出話になった。
子どもの頃の私達が瞬間湯沸かし器の父を恐れていたように、きかん気が強く男まさりでなければ母一人子一人、とても生きていけなかった祖母はやはり、父にとってもおっかない肝っ玉母ちゃんだったらしい。祖母に鍬を振り回しながら追いかけられた事がある、という話を父がた。が、そこまで祖母を怒らせた肝心の原因が何だったのかはまるきり覚えていないという。
「なに、どうせ何かしたんだべ」と、いとこおじ達からすげなく突っ込まれ、納得できないようにしきりに首を傾げている。子どもなんてそんなもんかもしれないーー親の側だって調査官や判事ではないので、理不尽な雷を落としていないとも言い切れないが。
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