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精進落とし 4〜そもそも精進って何?〜
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豊の実家は神棚や仏壇だけでなく代々引き継いだ田畑のそこここに祠があって、母と祖母の間の年代にあたる義母が、やれ今日は弁天様の日だとか恵比寿様の日だとか先祖の誰かの月命日だとか言って、しょっちゅうハレの行事食である海苔巻きとけんちんうどんをこしらえては「持ちに来ないかい」と電話が入る。
年末には豊のきょうだいを呼んで臼と杵で餅をつくし、春と秋のお彼岸の時にはおはぎを作る。私達親子はは野菜や米をいただくついでにちゃっかりご相伴に預かる専門だ。
生まれ育った時代背景や生活スタイル的にも、その年代あたりが宗教観の境目であるような気がする。
この辺では盆暮のご馳走に煮しめ(根菜と山菜、こんにゃく、ちくわ、焼き豆腐などを煮干し出汁で煮た味噌味の煮物)を作るが、お盆の赤飯と正月の餅、煮しめ作りは元気な頃の祖母の担当だった。
普段は果物か菓子にお水ぐらいの仏壇のお供え物が、お盆には家族と同じご馳走になる。祖母は練り物以外の具材を昆布出汁で別に煮た仏様用の煮しめや、さつまいもと油揚か麩を甘じょっぱく煮た物を赤子の離乳食よろしく小鍋で別に作っていた。
母はお盆でも子ども達のために肉や魚料理を出していたが、そんな時祖母はひっそりと不機嫌になり、「盆は精進するもんだ」「おらべぇでも精進しねぇば」と言って、自分の分のおかずを残して私達にくれたりしていた。が、祖母の分を作らなければ作らないでそれは面倒な事になるらしい。
確かに、家族だけの食事ですら儀礼的な部分は存在する。
後年、私達が進学で家を出たのをきっかけに「子ども達が帰省した時に寿司をとる」のが盆のイベントとして定着したのだが、この時は祖母も一緒に食べていた。煮しめに入れたさつま揚げやちくわは当然のように食べていたのでこの辺の基準はよくわからない。母に言わせると「なに、お祖母ちゃんのその時の気分だべ」という事なのだが。
義母が電気釜を買い替えた時に、「あと何回飯を炊くかわからないんだから米くらい美味いのを食べたい」と珍しく最新式の機種を奮発していたのをちょっと思い出した。楽しい時には食べたい物を食べるという発想に至ったのならそれはそれで幸せだ。
それにしても「葷酒山門に入らず」の「酒」の方に関してはなぜか、昔も今も誰も疑問を挟まない。肉やネギ・ニンニク類の比ではなく、健康面社会生活上で一番実害がありそうなのに。
一見「何でもかんでもかこつけて飲みたがるオッサン達のためのオッサン達による田舎の酒盛り」の不祝儀バージョンとしか思っていなかった「通夜ぶるまい」「精進落とし」にも立派な意味がある。「施餓鬼」と言い、周囲の人に食事を振る舞う事で功徳を積むという仏の教えで、「念仏菓子」や「葬式饅頭」もこれに当たるというーーこれも畑中君の受け売りだ。
煮しめ作りは祖母の隠居と前後して母が引き継いだ。私達家族の帰省と重なり大忙しの母は、時々仏様用に具材を取り置くのを忘れてしまい、しれっと水洗いして祖母に渡していた。
これからも何年かに一度はやらかすだろうが、広い心でどうか多めに見てもらいたい。
年末には豊のきょうだいを呼んで臼と杵で餅をつくし、春と秋のお彼岸の時にはおはぎを作る。私達親子はは野菜や米をいただくついでにちゃっかりご相伴に預かる専門だ。
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この辺では盆暮のご馳走に煮しめ(根菜と山菜、こんにゃく、ちくわ、焼き豆腐などを煮干し出汁で煮た味噌味の煮物)を作るが、お盆の赤飯と正月の餅、煮しめ作りは元気な頃の祖母の担当だった。
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母はお盆でも子ども達のために肉や魚料理を出していたが、そんな時祖母はひっそりと不機嫌になり、「盆は精進するもんだ」「おらべぇでも精進しねぇば」と言って、自分の分のおかずを残して私達にくれたりしていた。が、祖母の分を作らなければ作らないでそれは面倒な事になるらしい。
確かに、家族だけの食事ですら儀礼的な部分は存在する。
後年、私達が進学で家を出たのをきっかけに「子ども達が帰省した時に寿司をとる」のが盆のイベントとして定着したのだが、この時は祖母も一緒に食べていた。煮しめに入れたさつま揚げやちくわは当然のように食べていたのでこの辺の基準はよくわからない。母に言わせると「なに、お祖母ちゃんのその時の気分だべ」という事なのだが。
義母が電気釜を買い替えた時に、「あと何回飯を炊くかわからないんだから米くらい美味いのを食べたい」と珍しく最新式の機種を奮発していたのをちょっと思い出した。楽しい時には食べたい物を食べるという発想に至ったのならそれはそれで幸せだ。
それにしても「葷酒山門に入らず」の「酒」の方に関してはなぜか、昔も今も誰も疑問を挟まない。肉やネギ・ニンニク類の比ではなく、健康面社会生活上で一番実害がありそうなのに。
一見「何でもかんでもかこつけて飲みたがるオッサン達のためのオッサン達による田舎の酒盛り」の不祝儀バージョンとしか思っていなかった「通夜ぶるまい」「精進落とし」にも立派な意味がある。「施餓鬼」と言い、周囲の人に食事を振る舞う事で功徳を積むという仏の教えで、「念仏菓子」や「葬式饅頭」もこれに当たるというーーこれも畑中君の受け売りだ。
煮しめ作りは祖母の隠居と前後して母が引き継いだ。私達家族の帰省と重なり大忙しの母は、時々仏様用に具材を取り置くのを忘れてしまい、しれっと水洗いして祖母に渡していた。
これからも何年かに一度はやらかすだろうが、広い心でどうか多めに見てもらいたい。
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