ばあちゃんの豆しとぎ

ようさん

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祖母の姉 2

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 ところでお互いいい大人同士になってしまうと、同世代でもなくかといって親世代ほど離れているわけでもない久しぶりの親戚同士というのは距離感の縮め方に困る。

 大祖母にジュースを、昌弘君にウーロン茶を注いであげてしまうともう次の話題に困ってしまう。
 昔はしーちゃんしーちゃんって呼んで勝手にまとわりついてくれて、こっちからあれこれ話題を考えて頑張って話しかけようとしなくても自然にコミュニケーションがとれていた。

 青春時代にハマっていたことだって全く違うだろうし、しかもまだ二十代とか……別人種じゃない?さすがに流行りのギャル男風ではないものの、存在自体がキラキラし過ぎて眩しい。

 歳だけは無駄に重ねたが、おば達のように「仙台はどう?」「仕事はどう?」「いい人いないの?」などと、どうでもいいような会話をダラダラ続けながらさりげなくじわじわと根掘り葉掘り、個人情報を聞き出す合わせ技が全く身についていないのが残念だ。

「お祖母ちゃん、葬式も来たいって言ってきかないんだ」

 微妙な長さの沈黙が続き、かえって立ち上がるタイミングに困ってしまっていた時、昌弘君がふいにまた話し始めた。

「足も悪いし、墓まで歩けるわけないのに」

 耳から遠いという大祖母は孫と大姪が会話する様子をただ楽しげに、ニコニコと見守っている。

「ええっ……気持ちはありがたいけど、無理しなくていいと思う。うちのお墓、山の中で大変だもの」

「お祖母ちゃんの気持ちもわかるんだよね。お祖母ちゃんの姉妹で生きているの、トシさんだけだったし」

「ああ……そうか」

 お祖母ちゃんの小さい頃も、妹キャラで誰かに構われたり可愛がられていたのも想像がつかなくて不思議な気がする。
 私も何とかできないかと思うのだが、どうにもなりそうにない。

 うちのお墓は集落内の共同墓地にある。昔、この辺りがまだ村だった頃、共有林を切り開いて造ったらしい。墓地の入り口までは車で入れるし家の墓までの距離も大した事はないのだが、立地柄かなりの急斜面で、さすがの祖母も最後の数年は盆の墓参りを諦めていたくらいだ。
 真冬に行ってみたことはさすがにないが、雪掻きをしても下の方は凍っているだろうし、後期高齢者に差し掛かった上の伯父伯母ですら無事に行って帰って来れるのか心配なレベルだ。

「家ではもう、代理で親父が来ることにしてあるんだ。でもお祖母ちゃんが言うこときいてくれなくて、ここにくる前も大喧嘩で……」

「ええっ。やだ、うちのお葬式の事なんかで家族喧嘩なんかしないでよ」

「こう見えて頑固でさぁ。頭ははっきりしてるんだけど」

 昌弘君は困ったような表情で大祖母の方をちらっと見た。なるほど。祖母の姉だけのことはあるのか。

「元気で頭がはっきりしてるなんて、幸せじゃない」

「そうなんだけどさ。しーちゃん、説得してもらえない?」

「ええっ、なんで私?」

 思いもかけない依頼につい、素っ頓狂な声を出してしまった。
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