43 / 151
園長先生 2
しおりを挟む
ところで私と晃夫がキリスト教系の保育園に通っていたのは両親に宗教的なこだわりがあったわけでも何でもなく、たまたまご近所だったからだ。
私が当時、仲のよかった遊び友達は農家の子だったので日がな一日、子ども同士のグループで遊んでおり一才から保育園に通わされていだ子は私だけだった。
私達は徒歩通園だったが、少し遠くの子ーー例えば海沿いの漁師の家の子も園のバスで通って来ていた。
過疎の町だが、地域にはまだたくさん子どもがいた。
園長先生には申し訳ないのだが生来マイペースで鈍臭い私は、物怖じしない活発な子ども達が団体生活をする環境に馴染めなかった。かといっていじめられたり仲間外れになっていた訳ではないのだが、行事以外の普段の毎日は渋々、嫌々通っていた。
隣近所の遊び友達は農家の子かお祖母ちゃん家に預けられている子で幼稚園にも保育園にも行っていなかった。友達とは保育園がお休みの土曜の午後や日曜なら遊べたが、母はは半分くらいは仕事の日だった。園に通っている間は一番会いたい人に会えなかったという事も影響しているのかもしれない。
この前園長先生に会ったのは、颯也と悠也がもっと小さかった頃だ。
夏休み帰省の初日の晩に、父と晃夫とで調子に乗って酒を勧めるもんだから豊が二日酔いで寝込んでしまい、子ども達と約束した海水浴に連れて行けなかった事がある。
どっちもどっちだ、と呆れ半分で腹を立てたが、遊ぶ気満々でエネルギーが有り余っている子ども達を一日中家の中に置いておく訳にもいかない。
いっそ私が車を運転して一日どこかで遊んで来ようかとも思ったが(今なら絶対そうする)、盆のあれこれで慌ただしい嫁の実家に彼一人だけ置き去りにするのもお互いきまりが悪いんじゃないかと思い、仕方なく徒歩で散歩に出た。
一見自然に恵まれている農村だが、近所には公園のような場所がないので子どもを遊ばせるのに意外と困る。
私達の子どもの頃は、「ド◯えもん」に出てくるような土管の空き地は無かったものの、一歩外に出れば近所の子どもが集まっていて一緒に遊べるポイントというのが家の周りにーー夏にはタチアオイのたくさん咲く木の柵の所とか、笹舟を流す橋の所とか、雑木林のある崖下とか、年かさの誰かの家の庭とかーーまだ当然のように地域にあった。
近所の家の庭先は塀もなく地続きになっていて、そこを走り回ったり、自然に生えた草花や虫をとったりしていても、わざわざ植えてあるものや生活手段である田んぼや畑に悪戯しない限り黙認された。
だが、まさかそういうわけにもいかない。
「そうだ。保育園の園庭なら遊べるんじゃないかな」
首都圏や政令指定都市ではなくても、今の学校や園は休日になると例外なく門を閉めて施錠される所がほとんどだと思う。
私の卒業した母校も「地域に開かれた門の無い大学」を謳っていたが、時代の流れで学生の安全上の問題や「管理責任云々」といった議論に勝てず、ついに施錠のできる門を設置したという。
だが保育園の方は果たして、当時のままだった。
私が当時、仲のよかった遊び友達は農家の子だったので日がな一日、子ども同士のグループで遊んでおり一才から保育園に通わされていだ子は私だけだった。
私達は徒歩通園だったが、少し遠くの子ーー例えば海沿いの漁師の家の子も園のバスで通って来ていた。
過疎の町だが、地域にはまだたくさん子どもがいた。
園長先生には申し訳ないのだが生来マイペースで鈍臭い私は、物怖じしない活発な子ども達が団体生活をする環境に馴染めなかった。かといっていじめられたり仲間外れになっていた訳ではないのだが、行事以外の普段の毎日は渋々、嫌々通っていた。
隣近所の遊び友達は農家の子かお祖母ちゃん家に預けられている子で幼稚園にも保育園にも行っていなかった。友達とは保育園がお休みの土曜の午後や日曜なら遊べたが、母はは半分くらいは仕事の日だった。園に通っている間は一番会いたい人に会えなかったという事も影響しているのかもしれない。
この前園長先生に会ったのは、颯也と悠也がもっと小さかった頃だ。
夏休み帰省の初日の晩に、父と晃夫とで調子に乗って酒を勧めるもんだから豊が二日酔いで寝込んでしまい、子ども達と約束した海水浴に連れて行けなかった事がある。
どっちもどっちだ、と呆れ半分で腹を立てたが、遊ぶ気満々でエネルギーが有り余っている子ども達を一日中家の中に置いておく訳にもいかない。
いっそ私が車を運転して一日どこかで遊んで来ようかとも思ったが(今なら絶対そうする)、盆のあれこれで慌ただしい嫁の実家に彼一人だけ置き去りにするのもお互いきまりが悪いんじゃないかと思い、仕方なく徒歩で散歩に出た。
一見自然に恵まれている農村だが、近所には公園のような場所がないので子どもを遊ばせるのに意外と困る。
私達の子どもの頃は、「ド◯えもん」に出てくるような土管の空き地は無かったものの、一歩外に出れば近所の子どもが集まっていて一緒に遊べるポイントというのが家の周りにーー夏にはタチアオイのたくさん咲く木の柵の所とか、笹舟を流す橋の所とか、雑木林のある崖下とか、年かさの誰かの家の庭とかーーまだ当然のように地域にあった。
近所の家の庭先は塀もなく地続きになっていて、そこを走り回ったり、自然に生えた草花や虫をとったりしていても、わざわざ植えてあるものや生活手段である田んぼや畑に悪戯しない限り黙認された。
だが、まさかそういうわけにもいかない。
「そうだ。保育園の園庭なら遊べるんじゃないかな」
首都圏や政令指定都市ではなくても、今の学校や園は休日になると例外なく門を閉めて施錠される所がほとんどだと思う。
私の卒業した母校も「地域に開かれた門の無い大学」を謳っていたが、時代の流れで学生の安全上の問題や「管理責任云々」といった議論に勝てず、ついに施錠のできる門を設置したという。
だが保育園の方は果たして、当時のままだった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
女子小学五年生に告白された高校一年生の俺
think
恋愛
主人公とヒロイン、二人の視点から書いています。
幼稚園から大学まである私立一貫校に通う高校一年の犬飼優人。
司優里という小学五年生の女の子に出会う。
彼女は体調不良だった。
同じ学園の学生と分かったので背負い学園の保健室まで連れていく。
そうしたことで彼女に好かれてしまい
告白をうけてしまう。
友達からということで二人の両親にも認めてもらう。
最初は妹の様に想っていた。
しかし彼女のまっすぐな好意をうけ段々と気持ちが変わっていく自分に気づいていく。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
私の主治医さん - 二人と一匹物語 -
鏡野ゆう
ライト文芸
とある病院の救命救急で働いている東出先生の元に運び込まれた急患は何故か川で溺れていた一人と一匹でした。救命救急で働くお医者さんと患者さん、そして小さな子猫の二人と一匹の恋の小話。
【本編完結】【小話】
※小説家になろうでも公開中※
魔術師の妻は夫に会えない
山河 枝
ファンタジー
稀代の天才魔術師ウィルブローズに見初められ、求婚された孤児のニニ。こんな機会はもうないと、二つ返事で承諾した。
式を済ませ、住み慣れた孤児院から彼の屋敷へと移ったものの、夫はまったく姿を見せない。
大切にされていることを感じながらも、会えないことを訝しむニニは、一風変わった使用人たちから夫の行方を聞き出そうとする。
★シリアス:コミカル=2:8
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる