ばあちゃんの豆しとぎ

ようさん

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リスケ大作戦 2〜夫にイライラ〜

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 一呼吸おいて豊の携帯に電話をした。まだ寝ていたらしく寝ぼけ声で「どうした?」と返ってきた。

話をいた豊はううん、と唸った。

「葬式は平日か……正直、岩手まで行くのは厳しいと思う。仕事も詰まってるし」

「そうだよね」

「悪いな。俺の実家には連絡しておくから香典の立て替えしておいてくれる?」

「わかった」

「あと座布団贈っておいて。俺とあんたの連名で」

「座布団?」

 当然のように頼んでくる豊に目をぱちくりさせて眉をしかめたが、電話越しではもちろん伝わらない。

「何のために?座布団なんて実家にいっぱいあるよ」

「葬式の時、親族は香典の他に座布団を贈ることになってるんだよ。湯飲みでもいいけど」

「湯飲みもいっぱいあるよ!寄り合い用のが天袋に何箱も!」

「だってこういう時は必要な物を親族で贈り合うもんだろう。東北は違うのかなあ」

 東北がどうとかそういう問題じゃない。豊の実家も限界集落ぎりぎりの僻地だし、下手をすると自分の実家周りだけかもしれないマイルールを、さも首都圏全体の常識であるかのように代表顔で語られても困る……と、ツッコみたかったがやめた。

「そんな話、初めて聞いたよ。もし足りない物があれば葬儀屋さんから借りられると思うんだけど。普段あったって邪魔だし。そんなことより、早めにこっちに帰って来れない?」

「え、なんで?子どもも連れて帰るんじゃないの?」

 悪い人ではないのだが、仕事の多忙さもあってゴミ捨て以外の家事に参加する意識が薄い人だ。
 乳幼児の頃はそれでも「やってあげてるぞ」感を全面に出しつつ、子どもを風呂に入れるくらいの事はしていたのだが、子どもだけで風呂に入れるようになってからは育児に関しても卒業を決め込んでしまった。PTAはおろか颯也のサッカークラブの当番も悠也の通院も療育も「仕事が忙しいから」を錦の御旗にされ私一人が孤軍奮闘状態だ。
 仕方なく諦めて受け入れてはいるが、私の実家のこととは言えあらためてこういう「他人事感」を全面に出されると本当に腹立たしい。

「颯也は連れて行くけど、悠也は無理だよ。通夜と葬儀会場が自宅だし手伝いの伯母達も寝泊まりするんだから。夏休みの帰省の時とは違うの」

 私は静かな怒りを抑えて、なるべく丁寧に説明した。

「悠也も四年生なんだし、葬式くらい出たっていいんじゃないか。あんたの実家だろ」

 そういえばこの人、私が保育園の役員会やPTAの会議に出かける時も「俺は留守番してるから子ども二人連れて行きなよ」なんて平気で言う人だったーーそんな思い出さなくてもいいような事まで思い出したもんだから、余計に苛々して一気にまくし立ててしまった。

「子ども二人分の居場所なんか無いって言ってるの。あなたは自分の実家だろうが私の実家だろうが帰省すればお客様だけど、私は台所でおさんどんなの。自宅で葬儀なんて、私だって何がどれだけ大変か想像つかないんだから」
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