129 / 144
10
⭐︎執着するS、地雷踏むM
しおりを挟む《玄英……やっぱり君、最高だよ》
あの日から気がつくと日がな一日、一糸纏わぬ姿で有無を言わさず組みしだかれ彼の欲を惰性のままに受け入れているーー寝食と風呂、アリバイのための連絡をとる時すら部屋から出る事を許されない。
救いを求める術も思い浮かばないまま、いたずらに時間だけが過ぎた。
「コウセイ……だっけ?」
ユーラの呟きに、ピクリと反応する。
《やれやれ。アイツがそんなに好き?元々ノーマルな奴だったのに、君がこっち側に引き摺り込んだんだろ?なのに、ここまで教えてやらなかったなんて》
《うるさい……》
《僕は満足だけど。女とは違うし幻滅されるのが嫌だったとか、そんな理由だろ?潔癖症っぽいしな、アイツ》
《……》
《君が他の男に節操無く蕩けてるとこなんて想像もつかないだろうな?そうだ、彼も呼んで一緒に楽しむか?》
《嘘でしょうっ……嫌!嫌だ!》
玄英は真っ青になって首を必死に振った。
《ちょうど今、横浜だし。君がここにいるって教えたら、ボロバイクに跨ってヒーロー気取りで飛んでくるかもね?》
《やめて!彼の事はもう、放っておいて……》
やっと気が済んだユーラから解放された玄英は精も魂も尽き果て、死骸のように再び床に横たわっていた。
《今向かっている最中だ。だからリモートにしようと言ったのに、そうがなり立てられても困る》
ユーラは新しいワイシャツに着替え直しながら、おそらくイェン氏からの苦情の電話に怒鳴り返しているーー部屋に漂う強い香りは堕落の痕跡を取り繕うた
《まったく……せっかく支度したのに。君が誘ってきたせいで汚してしまったよ》
めのものなのか。もう一々反論する気も起きない。
《どうせ優しいとかなんとか、クソみたいな理由でアレとくっついてたんだろうが。優しいだけの男なんて、本当は物足りないんだろ?》
勝ち誇ったような猫撫で声でユーラが話しかけてくる。
《黙って僕にしときなよ。玄英の駄目なところも恥ずかしいところも全部愛してあげられる。玄英のこと、一番よくわかってるのは僕なんだから》
ーー空気が吸いたい……新鮮な空気が。
分厚いはめ殺しの窓から常春の部屋とは別世界の、冬の寒空が見えるーーどうせ息ができないのなら、あの窓を割って真冬の海に放り出されたい。
《さて。と。ついでに不愉快な雑魚どもをきっちり論破して黙らせて来るか》
ーー座り込みの中に、恒星もいるかもしれない……正義感の強い人だから……
《お願い。手荒な事だけはしないで》
《こちらからは仕掛けないさ。どうせその価値もない連中だ》
《元凶は君じゃないか!彼らを侮辱しないで!》
ユーラは表情を一変させると、玄英の腕を乱暴に掴んで引きずり上げた。
《まだ口の利き方がなってないな?》
そう言って酷薄な笑いを浮かべた。
《やっ、やめて……どこに行くの》
裸のまま急に部屋から連れ出されそうになり、玄英は抵抗した。が、足元がおぼつかず、ずるずると引っ張り寄せられる。
《お仕置きだよ、おいで》
ーー嫌!怖い!
《外に出たいんだろう》
「嫌だ!助けて!恒星に会いたい!恒星!恒星!」
《また他の男の名前を叫んで泣くーー躾が済むまで式はお預けだな》
ユーラは舌打ちすると、もつれて倒れた玄英の足首を引きずりながら、船の廊下をどこかへどんどん進んで行く。もはやいつそこを通るかもわからないアテンダントや取り巻きの目すら気にしていないようだ。
《やめて!お願い、やめて!》
《本当はこういうの好きなんだろ》
《やああああああー!》
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
年上の恋人は優しい上司
木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。
仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。
基本は受け視点(一人称)です。
一日一花BL企画 参加作品も含まれています。
表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!!
完結済みにいたしました。
6月13日、同人誌を発売しました。
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【BL】はるおみ先輩はトコトン押しに弱い!
三崎こはく
BL
サラリーマンの赤根春臣(あかね はるおみ)は、決断力がなく人生流されがち。仕事はへっぽこ、飲み会では酔い潰れてばかり、
果ては29歳の誕生日に彼女にフラれてしまうというダメっぷり。
ある飲み会の夜。酔っ払った春臣はイケメンの後輩・白浜律希(しらはま りつき)と身体の関係を持ってしまう。
大変なことをしてしまったと焦る春臣。
しかしその夜以降、律希はやたらグイグイ来るように――?
イケメンワンコ後輩×押しに弱いダメリーマン★☆軽快オフィスラブ♪
※別サイトにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる