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⭐︎策士ユーラ、策じゃないコトに溺れる
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《黙れっ……!買収も君が仕組んだのか?》
《イェンの爺さんが何か手頃な日本企業を買収したがってたから、ちょっと話盛ってけしかけただけ。僕としてはあの無礼なサルに思い知らせてやれればそれでよかったのに、爺さんが欲を出してゴネ始めたから話がややこしくなった。君の「D’sアース」シリーズの特許が欲しいらしい》
《そんなの絶対許さない!》
《そう見せかけておいて、イェンのジジイを出し抜かないか?玄英、僕と手を組めよ》
《君に特許を売れと?それとも会社を?絶対お断りだ!》
《大局を見るんだ、玄英。僕らが再び公私共にパートナーになれば、君はわずらわしい営業や人事から解放され、本業の研究に没頭できる。僕はこれまで築いてきた資金力と拡散力を駆使して君の製品を世界のスタンダードにまで押し上げる。
一部の人間しかまだ気づいていないが、そうなれば高慢ちきな産油国の独裁者達に大きなダメージを与えられるし、世界のパワーバランスが変わり得る。
僕と君は歴史に名を残すーー君はノーベル博士に匹敵する偉人として、僕は今世紀最大のアイコンとして》
《ノー。僕にはそんな大望は無い。それに「D’sアース」は夢の素材と持て囃されてはいるが、発展途上の技術でもある。長い歴史の過程で思わぬ欠点や矛盾が露呈しないとも限らないーーかつて20世紀の最先端技術だったはずのプラスチックや原子力発電が今、多くの矛盾や負の側面を抱えているように。
僕は自分の目と手の届く範囲で未来に責任を待てるよう、僕のやり方でやっていく》
《そんな生ぬるい……!世界の救世主になれるチャンスだってのに》
《ユーラ。君は常に自信満々だが、傲慢で人の心を侮っている。だが僕の知ってた君は少なくとも、卑劣な男じゃなかった。どこまで堕ちれば気が済むんだ》
真っ直ぐ見返す玄英の瞳には涙が浮かんでいた。
ユーラは一瞬顔を歪め、無言のまま手の甲で玄英の頬を打った。
《そんな口の利き方していいのか?ご主人様に》
《僕のご主人様は恒星だけだああああ!》
玄英は堰を切ったように身をよじり、あらん限りの声をあげて泣き叫んだ。
「帰りたい!恒星に会いたい!恒星!恒星!」
ユーラはそんな玄英をしばらく冷ややかな目で見下ろしていた。やがて玄英の声が枯れ、気力を使い果たしたのを見てとると、
《気は済んだか?》
と、再び近寄り、顔を引き上げた。泣き腫らした目元とさっき打たれた頬が腫れている。
《やれやれ、こんな顔じゃ人前に出られないな……せっかく思いきり着飾らせて、世紀のロイヤルウエディングすら霞むような今夜の主役にしてやろうと思ったのに」
《……なに……?》
《言ったろ?僕が帰ったらカウントダウンパーティだ。日付が変わって新年になったら盛大に花火が上がり、オーケストラが結婚行進曲を奏でるーー僕たちのサプライズ結婚式だ》
《……っ?》
玄英は聞き返そうとして、掠れ声しか出せずに咳き込んだ。
《牧師もレポーターも呼んである。ちょうど義姉さん夫婦を招待してあるから証人になってもらって、二人でまた踊ろうーー今度はお揃いの白いタキシードで、朝までずっと》
《イェンの爺さんが何か手頃な日本企業を買収したがってたから、ちょっと話盛ってけしかけただけ。僕としてはあの無礼なサルに思い知らせてやれればそれでよかったのに、爺さんが欲を出してゴネ始めたから話がややこしくなった。君の「D’sアース」シリーズの特許が欲しいらしい》
《そんなの絶対許さない!》
《そう見せかけておいて、イェンのジジイを出し抜かないか?玄英、僕と手を組めよ》
《君に特許を売れと?それとも会社を?絶対お断りだ!》
《大局を見るんだ、玄英。僕らが再び公私共にパートナーになれば、君はわずらわしい営業や人事から解放され、本業の研究に没頭できる。僕はこれまで築いてきた資金力と拡散力を駆使して君の製品を世界のスタンダードにまで押し上げる。
一部の人間しかまだ気づいていないが、そうなれば高慢ちきな産油国の独裁者達に大きなダメージを与えられるし、世界のパワーバランスが変わり得る。
僕と君は歴史に名を残すーー君はノーベル博士に匹敵する偉人として、僕は今世紀最大のアイコンとして》
《ノー。僕にはそんな大望は無い。それに「D’sアース」は夢の素材と持て囃されてはいるが、発展途上の技術でもある。長い歴史の過程で思わぬ欠点や矛盾が露呈しないとも限らないーーかつて20世紀の最先端技術だったはずのプラスチックや原子力発電が今、多くの矛盾や負の側面を抱えているように。
僕は自分の目と手の届く範囲で未来に責任を待てるよう、僕のやり方でやっていく》
《そんな生ぬるい……!世界の救世主になれるチャンスだってのに》
《ユーラ。君は常に自信満々だが、傲慢で人の心を侮っている。だが僕の知ってた君は少なくとも、卑劣な男じゃなかった。どこまで堕ちれば気が済むんだ》
真っ直ぐ見返す玄英の瞳には涙が浮かんでいた。
ユーラは一瞬顔を歪め、無言のまま手の甲で玄英の頬を打った。
《そんな口の利き方していいのか?ご主人様に》
《僕のご主人様は恒星だけだああああ!》
玄英は堰を切ったように身をよじり、あらん限りの声をあげて泣き叫んだ。
「帰りたい!恒星に会いたい!恒星!恒星!」
ユーラはそんな玄英をしばらく冷ややかな目で見下ろしていた。やがて玄英の声が枯れ、気力を使い果たしたのを見てとると、
《気は済んだか?》
と、再び近寄り、顔を引き上げた。泣き腫らした目元とさっき打たれた頬が腫れている。
《やれやれ、こんな顔じゃ人前に出られないな……せっかく思いきり着飾らせて、世紀のロイヤルウエディングすら霞むような今夜の主役にしてやろうと思ったのに」
《……なに……?》
《言ったろ?僕が帰ったらカウントダウンパーティだ。日付が変わって新年になったら盛大に花火が上がり、オーケストラが結婚行進曲を奏でるーー僕たちのサプライズ結婚式だ》
《……っ?》
玄英は聞き返そうとして、掠れ声しか出せずに咳き込んだ。
《牧師もレポーターも呼んである。ちょうど義姉さん夫婦を招待してあるから証人になってもらって、二人でまた踊ろうーー今度はお揃いの白いタキシードで、朝までずっと》
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