赤いトラロープ〜たぶん、きっと運命の

ようさん

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玄英をさがせ!

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 古賀さんは俺に閉口したように額を押さえ、

「何度も同じ事を言わせないでください」

 と、少し強い口調で言った。

「君に協力しないとは言ってないでしょう。折りしも世はクリスマスシーズン、上昇志向と自己顕示欲の塊で派手好きなユーラのあの性格です。世間に何もひけらかずにいられるはずがない。近いうちに何か動きがあるはずです。そう感情的になる前に、君にもできる事があるはずでしょう」

「俺に……できる事?」

 古賀さんは清さんにちょっと似てる、と思った。いや、全然似てないけど。

「会社としては玄英の休暇を承認します。ここから先の私の調査は、玄英と君の友人としての行動です」

「古賀さん……」

「君はこちらの持っている情報は伏せて、彼宛のメッセージでそれとなく手がかりを探ってみてください。私は玄英の立ち回り先での様子やアンジェラと別行動になった時の状況をもう一度よく聞いてみます」

「わ、わかりました」

「必要とあればもちろん法的措置に出ます。ですがまだ、この段階でいきなりインターポールを動かすのは私も躊躇ちゅうちょせざるを得ません」

 インターポール!?つか……え、動かせんの?

「まずは韓国内での玄英の足取りから、主だった街の防犯カメラの解析を依頼します。法律的にはややグレーなルートを使いますので他言無用で願います」

 古賀さん、一体何者……


「それと、彼とユーラの共通の知人に……」

俺はふと閃いた。

「古賀さん……船は?」

「船?」

「客船を貸し切りにして船旅をしていたら、地上で目撃情報が無いのも納得できる」

「なるほど。例のパーティの時の船名は何でしたっけ?」

「エンプレス・ソフィア号」

「……その船会社、確かユーラの出資先です。ちょっと待ってください、もう少し調べてみます」

 感情を抑えて冷静に、今できる事を……俺の方も玄英へのお休みメッセージの文面をあれこれ考えていたら、再度古賀さん側からチャットが再開された。

「エンプレス・ソフィア号はやはり先週、ツアーの到着地である釜山で乗客を降ろしています。その後はプライベートで半年間貸切、行き先はクローズです」

 は、半年?野郎、仕事はどうするんだ?宝島でも探しに行く機会かよ!

 古賀さんはまた何やら検索していた。

「各国政府の海運関連のサイトを精査すれば正確な予定地がわかるんでしょうが、これもマニアによる主だった客船の航路記録を見られるサイトがあるんですよ。これによると目的地はシンガポール辺りでしょうか?」

「シンガポール?じゃあ俺、明日にでも行きます!」 

「だから何度も(中略)船のスピードってどれくらいか知ってますか?(中略)今、飛行機で発ったらだいぶ待ちぼうけになりますよ?」

「……」

「それにシンガポールってのも当て推量に過ぎません。別な場所に寄港するかもしれないし、下船しないかもしれない。こちらが乗船できる可能性はもっと低いでしょう。本当にその二人が乗っているという根拠も今のところ無い」

「……」

「あるいは本当に乗っていて、このままシンガポールで玄英の家族と合流するのかもしれませんが」

「ちょっと!それ、俺の予定だったはずなんですけど!」

 まさかこの流れで、玄英が心変わりしたとか……そんなことって……あるの?
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