115 / 125
9
海の向こうから、まさかの斜め上十倍返し!?
しおりを挟む
「君の日本人的愛社精神には敬意を払いますが……資本主義社会の中で合法な経済活動として行われていることですからねえ。何事も早い方がいい条件で進められる。前向きに次のステージを考える時ではないでしょうか」
入社早々辞めたくなって「石の上にも三年」と祖父ちゃんに雷落とされた事もあるし、そこまで終身雇用制信者じゃなかったつもりだけど……海外生活の長い古賀さんほどにはさすがに割り切れない。
筋通すってのも大事な事じゃないのかよ?
これだからJOB型雇用ってやつは!
「ただガルテン松山さんとはだいぶ企業理念も規模も異なる相手ですからね。一刻も早くボスの意思確認がしたいのですが。君、愛人から何か連絡は?」
呼び方!
「何も無いですよ」
俺はぶすっとして答えた。
「そうですか。タイミングが悪いですね。彼は日程を変更して、材料買い付けの交渉のためにネット環境の整わない山間部を巡っているんです。ニュースは耳に入っていると思うんですが」
古賀さんは疲れているのか、電話の向こうで唸るようなため息をついた。
「古賀さん、どうしました?大丈夫ですか?」
「はい。ただちょっと腑に落ちない事が」
「何ですか?」
「カーラ・イェン社です。僕も前の仕事で何件か企業買収を扱ったのですが、自分が経営者なら今回みたいなやり方はしないでしょうーーこれは玄英も同意見でしょう」
「そうなんですか?」
「だって効率悪いじゃないですか、敵対的買収なんて。相手の株の過半数を予告も無しにいきなり買い占めるんですよ?普通は社運を掛けた交渉が決裂して、などといった場合の最後の手段です。
妨害も入りますし、コストもかさみます。業界内のの商習慣を重んじる日本市場の場合、余計な軋轢を産みますし、企業イメージにも悪影響が」
「……それもそうですね。何か裏があるんでしょうか?」
「そこで思い出したのですがーーカーラ・イェン社のCEOってユーラ・チャンの同志ですよね」
「ええっ?」
「いえ、本当に仲良いわけではなくて、打算でつるんでるだけと思いますが。前のアメリカ大統領選の時のネットニュースを覚えてますか?トンデモ陰謀論を支持して二人でせっせと拡散してたんです」
「あ、覚えてます。食糧支配による新第三帝国の陰謀と戦ってるんだとかなんとか、かなり荒唐無稽な……一体この人ら何言ってるんだって思いましたが」
「日本人にもあれを信じ込んで真顔で普及しているユーラ信者が若干名いるようですが。それはさておき」
これは偶然なのか?急に訴えを取り下げた理由もわからないし。ユーラがこの買収劇に関わっている……?
だとしたら、一体何のために?玄英の会社が欲しいというならまだわかるが…… ユーラの狙いは何だ?
正義のパパラッチ、誰かスクープしてくれないかな。
「どうも嫌な予感がします。念のため、玄英に急いで帰国するよう伝えてもらえませんか。こちらからも連絡しますので」
少なくとも玄英にはもうすぐ会えそうだーー俺はしばらくぶりに心が躍った。
ーー玄英。早く帰って来てくれ。とにかく顔を見て話したいことが一杯ある。
入社早々辞めたくなって「石の上にも三年」と祖父ちゃんに雷落とされた事もあるし、そこまで終身雇用制信者じゃなかったつもりだけど……海外生活の長い古賀さんほどにはさすがに割り切れない。
筋通すってのも大事な事じゃないのかよ?
これだからJOB型雇用ってやつは!
「ただガルテン松山さんとはだいぶ企業理念も規模も異なる相手ですからね。一刻も早くボスの意思確認がしたいのですが。君、愛人から何か連絡は?」
呼び方!
「何も無いですよ」
俺はぶすっとして答えた。
「そうですか。タイミングが悪いですね。彼は日程を変更して、材料買い付けの交渉のためにネット環境の整わない山間部を巡っているんです。ニュースは耳に入っていると思うんですが」
古賀さんは疲れているのか、電話の向こうで唸るようなため息をついた。
「古賀さん、どうしました?大丈夫ですか?」
「はい。ただちょっと腑に落ちない事が」
「何ですか?」
「カーラ・イェン社です。僕も前の仕事で何件か企業買収を扱ったのですが、自分が経営者なら今回みたいなやり方はしないでしょうーーこれは玄英も同意見でしょう」
「そうなんですか?」
「だって効率悪いじゃないですか、敵対的買収なんて。相手の株の過半数を予告も無しにいきなり買い占めるんですよ?普通は社運を掛けた交渉が決裂して、などといった場合の最後の手段です。
妨害も入りますし、コストもかさみます。業界内のの商習慣を重んじる日本市場の場合、余計な軋轢を産みますし、企業イメージにも悪影響が」
「……それもそうですね。何か裏があるんでしょうか?」
「そこで思い出したのですがーーカーラ・イェン社のCEOってユーラ・チャンの同志ですよね」
「ええっ?」
「いえ、本当に仲良いわけではなくて、打算でつるんでるだけと思いますが。前のアメリカ大統領選の時のネットニュースを覚えてますか?トンデモ陰謀論を支持して二人でせっせと拡散してたんです」
「あ、覚えてます。食糧支配による新第三帝国の陰謀と戦ってるんだとかなんとか、かなり荒唐無稽な……一体この人ら何言ってるんだって思いましたが」
「日本人にもあれを信じ込んで真顔で普及しているユーラ信者が若干名いるようですが。それはさておき」
これは偶然なのか?急に訴えを取り下げた理由もわからないし。ユーラがこの買収劇に関わっている……?
だとしたら、一体何のために?玄英の会社が欲しいというならまだわかるが…… ユーラの狙いは何だ?
正義のパパラッチ、誰かスクープしてくれないかな。
「どうも嫌な予感がします。念のため、玄英に急いで帰国するよう伝えてもらえませんか。こちらからも連絡しますので」
少なくとも玄英にはもうすぐ会えそうだーー俺はしばらくぶりに心が躍った。
ーー玄英。早く帰って来てくれ。とにかく顔を見て話したいことが一杯ある。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話
雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。
諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。
実は翔には諒平に隠している事実があり——。
諒平(20)攻め。大学生。
翔(20) 受け。大学生。
慶介(21)翔と同じサークルの友人。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる