110 / 144
9
シャーデンフロイデ,ゲッテルフンケン……年末にラ◯ュタのイカヅチ的なモン落とすの、流行ってるんですか!?
しおりを挟む
「だって、社長代理でお忙しいんじゃ?」
「まずは牽制がてら代理人と話をしてみます。いくら積まれたかは知りませんが、私ならその段階で戦意喪失しますね」
普段は機嫌のありどころがわからないほどポーカーフェイスの古賀さんが珍しく上機嫌オーラを漂わせている。
「じゃあ……勝てるんですね?」
「しっかりしてください。あなたお得意の『筋』がどちらにあると思ってるんです?こんなの、いっそ清々しいほどの言いがかりじゃないですか」
そうだった。もう少しでユーラのゴリ押しに呑まれるところだった。いかんいかん。
「モリーさん達やアテンダントの証言も得られるでしょうし、直後に本人自ら踊っている写真も公表されている。おそらく嫌がらせ兼パフォーマンス目的でしょう」
古賀さんにそう断言されて、ひとまず胸のつかえが下りた。
「いやでも、待ってください。ユーラの言い分がめちゃくちゃなのは最初からわかってますが、仮に勝っても奴にとってはした金程度の賠償金しか取れない裁判ですよね?わざわざその何十倍もの金と手間暇をかけてまで起こす意味がわかりません」
「典型的なシャーデンフロイデですよーー舞台装置だけはずいぶん大掛かりに見えますが」
「シャーデンフロイデ?」
「ええ。一言で言うと『他人の不幸は蜜の味』といった種類の感情です。自分よりも妬ましさを感じる者、気に食わない者の失敗を喜ぶ気持ちは、多少の差はあれほとんどの人間に備わっているものです。最近はインターネットとSNSの普及によって、より可視化されるようになりました。例えば不倫騒動などでバッシングを受けている有名人をさらに誹謗中傷する、とか」
「なるほど」
「こんな話もあります。ある心理学の実験で、初対面の相手同士を『自分は損も得もしないが相手は得をする』と『自分は損をするが相手はより損をする』の二択があるゲームで競わせました」
「後者の選択肢が『シャーデンフロイデ』ですね」
「そうです。国別にデータをとったところ、後者を選ぶ割合が一番多かったのは日本人だったそうですよ。行列の順番を守るとか、国際試合での選手やサポーターのマナーの良さとか、災害の時の助け合いは海外から高く評価されているのに意外ですよね。
それはともかく『自分は損をしてでも恒星を窮地に立たせたい』っていうのがまさに、今のユーラの本心なのではないでしょうか」
何となく納得はいったが……
いや、完璧に頭おかしいだろうが!俺よりちょっとばかりオッサンかも知らんが、あんだけイケてて頭も切れて超のつく世界的セレブなんだから、俺みたいなド庶民の子に構ってないで、さっさと新しい恋でも見つけりゃいいのに……
当の本人は傷心療養中設定のためかお得意のSNSも更新せず、その事でかえって憶測を呼びに呼んでバズっているという皮肉さ……
とにかく馬鹿に金と権力と、ついでに暇なんか与えたらロクな事にならん好例だ。
「では、お言葉に甘えてよろしくお願いします……あの、弁護費用って言うんですか、どの程度お払いしたら」
古賀さんくらいメチャ有能な人じゃバカ高そう……
「代理人同士の交渉で済めば不要ですよ。もし彼がそれでもなお悪あがきすると言うならーー」
「なら?」
「個人的に積年の思いがありますので。願ってもない機会だ」
古賀さんはそう言って口の端を持ち上げた。もしかしてこの事態を面白がってないか?(ちょっと怖い)
「ところでこの事は、玄英には?」
古賀さんが逆に聞いてきた。
「いや、まだ伏せといてください。向こうでの仕事で一杯一杯だろうし、巻き込みたくない。帰ってからちゃんと話します」
「了解。話は変わりますが、恒星」
「なんですか」
「君、転職する気はありませんか?わがD's Theory社に」
「はいいいいいいいい!?」
「まずは牽制がてら代理人と話をしてみます。いくら積まれたかは知りませんが、私ならその段階で戦意喪失しますね」
普段は機嫌のありどころがわからないほどポーカーフェイスの古賀さんが珍しく上機嫌オーラを漂わせている。
「じゃあ……勝てるんですね?」
「しっかりしてください。あなたお得意の『筋』がどちらにあると思ってるんです?こんなの、いっそ清々しいほどの言いがかりじゃないですか」
そうだった。もう少しでユーラのゴリ押しに呑まれるところだった。いかんいかん。
「モリーさん達やアテンダントの証言も得られるでしょうし、直後に本人自ら踊っている写真も公表されている。おそらく嫌がらせ兼パフォーマンス目的でしょう」
古賀さんにそう断言されて、ひとまず胸のつかえが下りた。
「いやでも、待ってください。ユーラの言い分がめちゃくちゃなのは最初からわかってますが、仮に勝っても奴にとってはした金程度の賠償金しか取れない裁判ですよね?わざわざその何十倍もの金と手間暇をかけてまで起こす意味がわかりません」
「典型的なシャーデンフロイデですよーー舞台装置だけはずいぶん大掛かりに見えますが」
「シャーデンフロイデ?」
「ええ。一言で言うと『他人の不幸は蜜の味』といった種類の感情です。自分よりも妬ましさを感じる者、気に食わない者の失敗を喜ぶ気持ちは、多少の差はあれほとんどの人間に備わっているものです。最近はインターネットとSNSの普及によって、より可視化されるようになりました。例えば不倫騒動などでバッシングを受けている有名人をさらに誹謗中傷する、とか」
「なるほど」
「こんな話もあります。ある心理学の実験で、初対面の相手同士を『自分は損も得もしないが相手は得をする』と『自分は損をするが相手はより損をする』の二択があるゲームで競わせました」
「後者の選択肢が『シャーデンフロイデ』ですね」
「そうです。国別にデータをとったところ、後者を選ぶ割合が一番多かったのは日本人だったそうですよ。行列の順番を守るとか、国際試合での選手やサポーターのマナーの良さとか、災害の時の助け合いは海外から高く評価されているのに意外ですよね。
それはともかく『自分は損をしてでも恒星を窮地に立たせたい』っていうのがまさに、今のユーラの本心なのではないでしょうか」
何となく納得はいったが……
いや、完璧に頭おかしいだろうが!俺よりちょっとばかりオッサンかも知らんが、あんだけイケてて頭も切れて超のつく世界的セレブなんだから、俺みたいなド庶民の子に構ってないで、さっさと新しい恋でも見つけりゃいいのに……
当の本人は傷心療養中設定のためかお得意のSNSも更新せず、その事でかえって憶測を呼びに呼んでバズっているという皮肉さ……
とにかく馬鹿に金と権力と、ついでに暇なんか与えたらロクな事にならん好例だ。
「では、お言葉に甘えてよろしくお願いします……あの、弁護費用って言うんですか、どの程度お払いしたら」
古賀さんくらいメチャ有能な人じゃバカ高そう……
「代理人同士の交渉で済めば不要ですよ。もし彼がそれでもなお悪あがきすると言うならーー」
「なら?」
「個人的に積年の思いがありますので。願ってもない機会だ」
古賀さんはそう言って口の端を持ち上げた。もしかしてこの事態を面白がってないか?(ちょっと怖い)
「ところでこの事は、玄英には?」
古賀さんが逆に聞いてきた。
「いや、まだ伏せといてください。向こうでの仕事で一杯一杯だろうし、巻き込みたくない。帰ってからちゃんと話します」
「了解。話は変わりますが、恒星」
「なんですか」
「君、転職する気はありませんか?わがD's Theory社に」
「はいいいいいいいい!?」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】姉の彼氏がAV男優だった
白霧雪。
BL
二卵性双生児の鳴現と恵夢。何処へ行くにも何をするにも一緒だった双子だけれど、ある日、姉の鳴現が彼氏を連れてやってくる。暁と名乗った五つも年上の色男は「よろしくね」と柔らかく笑った。*2017/01/10本編完結*

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる