赤いトラロープ〜たぶん、きっと運命の

ようさん

文字の大きさ
109 / 144

悪貨は良貨を駆逐するし、無理が通れば道理が引っ込む

しおりを挟む
 あんな馬鹿げた内容の告訴状が受理されたのか?

 慌てて小川さんに電話したら「いや、落ち着け。『訴状』なら民事だろう。警察の管轄外だ」と言う。
 
「民事……?」

「有罪か無罪かを判断するのが刑事、賠償金を請求するのは民事裁判だ。普通はいきなり訴状じゃなくて、調停なり交渉を申し入れるもんだと思うんだが。まあでも、かえってよかったんじゃないか」

「よかった、って何が?どこがですか!」

「もし告訴人に民事で示談にする意思があれば、こっちは受理しないという判断になるかもしれん」

「示談って、話し合って解決するってことですよね!仮に99パーセントOFFしてもらっても自己破産するしかないような請求金額が来てるんですが!」

「それがユーラ・チャンのやり口らしいからなあ……」

 しかもユーラの「弁護団」とやらは告訴状を提出した後、ご丁寧にも警視庁前でネットニュース配信者用の会見まで開いていたらしい。

 さすがに俺の名前までは出してないものの、ネットの一部の界隈では既に「正義中毒」に毒された連中が匿名の「犯人(?)」探しに躍起になるわ、ネット署名なんか始めるわ、アンチと泥沼バトルになって無関係なユーザーに飛び火するわ、さらに警察叩きたいだけの奴や祭り大騒ぎだけしたいだけの連中が参戦したりしてますますカオスな騒ぎとなっている。

 万一身バレなんかしたら、自己破産云々関係なく社会的に即死だろう。俺は戦々恐々としている。
 
 これってもはや個人の嫌がらせの域超えてるし、警察的にも業務妨害ーーいや公務執行妨害でユーラ逮捕できる案件じゃね?
 善良な庶民ドライバー相手にケチな違反切符切るだけじゃなくて、少しは気骨見せやがれよ!日本警察。

 ありとあらゆる手段を使って敵を叩き潰す訴訟王ーーモリーの警告を思い出した。気をつけるべきだったのはまさに俺だったのだ。

ーーモリーに相談したほうがいいのかなあ……?

ーーけど、玄英の事ならともかく、俺自身の事で先日初めて会ったばかりの人に迷惑かけんのは……

「訴状なら第一回口頭弁論の日時が書いてあるだろ。欠席すんなよ。向こうの言い分が百パーセント通っちまうからな」

「わかりました。行きゃいいんですか」

 会社も実家も繁忙期真っ只な中の貴重な一日なんですが……(泣)
 
「馬鹿。行きゃいいですかって、子どもの使いじゃねえんだ。色々証拠書類とか用意しないと勝てるもんも勝てねえぞ」

 マジかよ……

「どうにも危なっかしいなあ。悪いこたあ言わねえ、今すぐ弁護士に相談しろ。当番弁護士の先生なら、俺に心当たりが無いでもないが」

 考えてみます、と礼を言って電話を切った。

 しかし、冷静になって考えれば考えるほど馬鹿馬鹿しい。

 何にも悪いことしてないのに、なぜ野郎のせいで俺がここまで時間とメンタル削られなきゃならんのだ!理不尽だ。

 が、犬も元ヤンも歩けば理不尽に当たる、それが世知辛い世間の常ってもんかもしれない。あらゆる意味での社会的生死が懸かってるとなれば背に腹は変えられない。

 俺はついに古賀さんに相談する事にした。

 公私に渡って俺と玄英の事情を知ってるし、国際弁護士の資格も持っている。多忙な人だから裁判をお願いするのは無理だろうがワンチャン、(友達の)友達価格で引き受けてくださる笠地蔵のようなお方を紹介してもらえるかもしれない(にしたって、一体いくらかかるんだろう……?)

 
 古賀さんは「すぐ会う」と言ってくれて、遅い時間だったが以前話をした会社近くのコーヒーショップに来てくれた。

 暖冬傾向で何とも微妙に締まらないクリスマスデコレーションで彩られた店内には「第九」のBGMが流れている。この時期は世界中でハレルヤコーラスやマライア・キャリーが流れてるけど(大谷の年俸レベルの印税が転がり込んでくるとか来ないとか)年末に第九が流れる国って日本だけなんだってな。

 古賀さんは訴状に目を通し、俺はこないだのクルーズ船パーティ以来の顛末を洗いざらい話した(タキシードで寸止めだった件以外)

「大変でしたね。わかりました。ひとまず私がお引き受けしましょう」 

「ええっ?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壊すほどに、俺はお前に囚われている

氷月
BL
【後輩と先輩、交錯する心と体】 春、新学期の大学キャンパス。 4年の蓮(レン)は、人気者らしく女子に囲まれながらも、なぜか新入生・七瀬巧(タクミ)の姿を探してしまう自分に気づいていた。 彼は去年の秋、かつて蓮が想いを寄せていた男の恋人の友人として出会った相手。 ――まさか、この俺様が、また男に惹かれるなんて。 否定しようとすればするほど、目はタクミを追ってしまう。 無邪気に笑う顔。ふと見せる真剣な横顔。 先輩と後輩、互いに抗えない感情に囚われながら、夏の学園を駆け抜けていく――。

【完結】取り柄は顔が良い事だけです

pino
BL
昔から顔だけは良い夏川伊吹は、高級デートクラブでバイトをするフリーター。25歳で美しい顔だけを頼りに様々な女性と仕事でデートを繰り返して何とか生計を立てている伊吹はたまに同性からもデートを申し込まれていた。お小遣い欲しさにいつも年上だけを相手にしていたけど、たまには若い子と触れ合って、ターゲット層を広げようと20歳の大学生とデートをする事に。 そこで出会った男に気に入られ、高額なプレゼントをされていい気になる伊吹だったが、相手は年下だしまだ学生だしと罪悪感を抱く。 そんな中もう一人の20歳の大学生の男からもデートを申し込まれ、更に同業でただの同僚だと思っていた23歳の男からも言い寄られて? ノンケの伊吹と伊吹を落とそうと奮闘する三人の若者が巻き起こすラブコメディ! BLです。 性的表現有り。 伊吹視点のお話になります。 題名に※が付いてるお話は他の登場人物の視点になります。 表紙は伊吹です。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?

藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。 なんで?どうして? そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。 片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。 勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。 お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。 少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。 (R4.11.3 全体に手を入れました) 【ちょこっとネタバレ】 番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。 BL大賞期間内に番外編も完結予定です。

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...