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⭐︎玄英のエピソード0

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 そんな事もあったし「したければ可能というだけで、カップルによってはそこまでの行為はしない」とも聞いたので、俺達も今のところそちらの方針でつき合いを続けている。

 玄英の密かな願望には驚いたが、「人の妄想を笑うな」という名言だってあるし(ん?あったか?)俺は成り行き上S役を買って出てはいるが、根っからの鬼畜ではないので玄英の思いを遂げさせてやりたい気持ちも無いではない。

 だが……物理的に無理だろ、絶対。 
 DNAの差なのか?乳幼児の頃なんて全員一律ポーク◯ッツだったハズなのに、一体何食ったらあんな(以下自粛)

 それに俺のアイデンティティの問題もある。

 俺が玄英を抱きたい。玄英を女役にしてあんな事やこんな事をしてみたい妄想で一杯だ。が、それだと玄英にだけ負担を強いることになるし……  

 で、役割分担については二人で保留ペンディングして今に至る。元カレだか元ご主人様だか知らないが、他人にとやかく言われる筋合いはないのである。ないはずなのだが……

ーーユーラのあの口ぶりだと、奴は有無を言わさず玄英に女役をさせてたんだろうな。

ーーしかも15年も……って、そん時玄英、歳幾つよ?普通に犯罪じゃね?

「ご主人様ぁ……」

 タキシードが皺になるのも構わずベッドに臥せていた玄英が、長身をもぞもぞと屈伸させて俺の方ににじり寄ると膝に這い上がって甘えてきた。

「お仕置き……してください」

「お仕置きって?玄英、お仕置きされるようなことしたの?」

 玄英は俺の腰に力無くしがみついて顔を埋めると、くしゃくしゃに乱れた髪をゆるゆると左右に降った。

「でも……叱ってよ。揺れると困る……」

「揺れるって何?」

 さすがに苛立ちを隠せず、声に怒気が滲む。玄英は慌てて強く首を振った。

「あんな訳の分からない男のこと、まだ好きなの?」

「ううん……僕が愛してるのは恒星だけ。でもあの人は昔、僕をずっと支配してて……まだ支配しようとしている。僕も独り立ちした大人だし、もう大丈夫だと思ったのに」

 俺はセットのすっかり解けた玄英の髪を片手の指でいてやりながら、もう一方の手で頭や肩を撫でた。

「怖いんだ。恒星が僕を、ちゃんと縛っておいて欲しい……」

「うん、そうするよ。でもその前に、玄英。あいつと過去に何があったのか、俺に話してくれないと」

「……」

「玄英がそれでまた傷つくのなら、俺は無理に聞き出したいとは思わない。でも、あいつと玄英の間に残っている問題が今の玄英を苦しめているんなら、俺も一緒に解決したい」

「……」

「玄英。あなたを守りたいんだ」

「でも……恒星にまできっと迷惑が……」

「はは、迷惑とか。今さらだろ?」

「……」

 玄英はもぞもぞと姿勢を変え、俺に膝枕させたまま、巨大な胎児のように身体を折り曲げた(俺のスラックスも諦めた方がよさそうだ)
 手遊びしていだ俺の手のひらを掴むと口元に当てたままじっと考え込んでいたが、

「……飛び級で、16で大学に入って……2年の時……」

 表での堂々とした態度からは想像できないほどか弱く掠れた声で、ぽつりぽつり話し出した。

「奴と出会ったんだな?」

 こくり、と俺の膝元で玄英が頷いた。俺はもう片方の手で玄英の背中を撫でた。

「彼はーーユーラ・チャンはMBA取得のために僕と同じ大学の院に通ってて、その時に紹介されて知り合った。当時からSNS王の片鱗はあった。若き成功者で時の人だから学内でも目立っていたし、僕の憧れの人でもあった。
 D's theoryの母体となった、最初のスタートアップ企業を立ち上げる時に相談に乗ってくれて資金も出してくれた。世間知らずの僕にビジネスの基本から駆け引きまで教えてくれた……恩人ではあるんだ。
 その時は僕、つき合っているガールフレンドがいて彼にも恋人がいるようだった。未熟な僕は彼に心酔するあまり、尊敬と恋愛の区別もついてなくて……」

「そこにつけ込まれて手込めにされたってわけ?男とのヤリ方も教えて調教までしてくれて?」

「ちょ……言い方……っ」

 玄英が決まり悪そうにもじもじした。怯えさせないよう、これでも抑えに抑えた控えめな感想だ。
 俺は彼の頭を撫でた。

「いや、玄英は悪くないよな。最低なのはあの野郎だ。公私混同……いや、普通に犯罪だろ」

 ユーラの奴、予想以上にムカつく最低ヤローだ。玄英の代わりに俺が、あの高慢ちきな鼻の骨にヒビの一本も入れといてやるべきだった。
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