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恒星、ナンパされかける(疑惑)
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実の弟がスピード離婚したと思ったら、同性のパートナーとくっついたーー国籍や文化圏を問わず、ショックを受けたりあれこれ問い詰めたりしたくなるのが人情なんだろうと思う。
が、彼の姉上は「二人が幸せそうでよかったわ」と、ものすごくあっさり受け入れてくれた。かと言って家族に無関心というのでもなく、お互い連絡は割とマメにとっているらしい。
ンドゥールさん用に日本語混じりの英語に切り替えて数十分ほど親交を深めた後、
「今度のクリスマス休暇には恒星も一緒にいらっしゃいな。パーティを楽しんで」
とモリーさんに言ってもらい、別れた。
その後も俺は玄英に連れられ、ひっきりなしに色んな人に紹介された。
ナントカ社のCEO、カントカ賞受賞の作家、プロデューサー、アーティスト、どこかの国の大使、高級官僚……et cetera,et cetera,and so on。
誰も彼も、俺の今後の人生で自力で再会しそうにない人達ばっかり。
俺的には無事、モリーさんに好印象を与えられた事で本日の唯一にして最大のミッションは終了している。
本音を言えば、今すぐねぐらに帰ってひと風呂浴びて、部屋着のクタクタジャージ(人を駄目にするレベルの十年熟成物)に着替えてゴロ寝したい気分だ。が、玄英だけ置き去りにしたらさすがに怒られるだろうしな。
男女問わずやたらフレンドリーで物理的にも距離が近いパリピ族のナンパも地味に心配だし……よくもまあ、次から次へと何組も何組も玄英の周りに群がって来ること……
だが、俺に言わせたらメンツの肩書きだけはご大層な虚飾の宴にしか見えないこんな場も、多くの支援者や有力な協力者を得るためには有効なのだという。
玄英には「自身が開発した素材と手法で、地球環境と人間社会の危機的状況を解決したい」という壮大な夢がある。
人生で抱いた最大の野望がせいぜい◯◯中学(母校)制覇とか△△中(隣の学校)撃破(しかも黒歴史)という凡人オブ凡人の俺だが、たとえ募金箱の一円玉レベルだとしても、力になれそうな事は協力してやりたい。
そんな訳で「アイドル(玄英)の握手会でファンの列をさばく神スタッフ(俺)」という仮設定で必死に脳を騙し、半分以上聞き取れないスピード英会話に頷き、笑いどころの不明なジョークに合わせて笑い……というのをエンドレスに繰り返している。
「クソッ……あの変態野郎!」
何組目かの彼らを友好的に見送った後、いきなり暗黒面丸出しで玄英が日本語で毒づいた。
「どうしたんだ?何かされた?」
「僕じゃない。恒星。アイツに気をつけて」
「は?アイツって?どのアイツだよ!」
類似画像だらけで脳内のザッピングが追いつかない。
「さっきのグループにいただろう。某石油大国の王子」
確かにこの場での日本語は内緒話に最適だが……情報量過多すぎて、いちいち覚えてねえよ。
「恒星のこと、気に入ったらしい。僕の目を盗んでモーションかけようとしてたの、気づかなかった?」
玄英がちょっと責めるような目つきで俺を睨んだ。
「はいぃぃ?」
俺こそ心外なんスけど。
「いい度胸してる。完全にプライベートだったら、手袋投げて決闘を申し込んでるところだ」
「何世紀だよ!」
俺を取り合って男二人でタイマンとか何のコントだよ?モリーのような絶世の美女ならドラマにもなるだろうが。
いや、マジで誰だっけ。全体的に来るメンツ全員濃すぎて印象ねえわ。
「自国だと同性愛が非合法なもんだから、太平洋のどっかの島にハーレム作ってるとか何とか。しかも少年趣味の噂で有名な奴だ」
「ヤバ!どこの国でもアウトだろ」
「こういう場に出入りするのも若い男を物色するためだとか、気に入ったターゲットには拉致まがいの手段も選ばないとか……」
「ガチの犯罪者じゃねえか!逮捕しろよ!」
「彼自身が国家権力だからね。疑惑を追及したジャーナリストが亡命後消息不明になってるんだが、それも噂の域を出ないから未だに公の場にも堂々と出入りしてる」
独裁国家の闇まで……全員が胡散臭いとは言わないがとんだセレブパーティだ。
が、彼の姉上は「二人が幸せそうでよかったわ」と、ものすごくあっさり受け入れてくれた。かと言って家族に無関心というのでもなく、お互い連絡は割とマメにとっているらしい。
ンドゥールさん用に日本語混じりの英語に切り替えて数十分ほど親交を深めた後、
「今度のクリスマス休暇には恒星も一緒にいらっしゃいな。パーティを楽しんで」
とモリーさんに言ってもらい、別れた。
その後も俺は玄英に連れられ、ひっきりなしに色んな人に紹介された。
ナントカ社のCEO、カントカ賞受賞の作家、プロデューサー、アーティスト、どこかの国の大使、高級官僚……et cetera,et cetera,and so on。
誰も彼も、俺の今後の人生で自力で再会しそうにない人達ばっかり。
俺的には無事、モリーさんに好印象を与えられた事で本日の唯一にして最大のミッションは終了している。
本音を言えば、今すぐねぐらに帰ってひと風呂浴びて、部屋着のクタクタジャージ(人を駄目にするレベルの十年熟成物)に着替えてゴロ寝したい気分だ。が、玄英だけ置き去りにしたらさすがに怒られるだろうしな。
男女問わずやたらフレンドリーで物理的にも距離が近いパリピ族のナンパも地味に心配だし……よくもまあ、次から次へと何組も何組も玄英の周りに群がって来ること……
だが、俺に言わせたらメンツの肩書きだけはご大層な虚飾の宴にしか見えないこんな場も、多くの支援者や有力な協力者を得るためには有効なのだという。
玄英には「自身が開発した素材と手法で、地球環境と人間社会の危機的状況を解決したい」という壮大な夢がある。
人生で抱いた最大の野望がせいぜい◯◯中学(母校)制覇とか△△中(隣の学校)撃破(しかも黒歴史)という凡人オブ凡人の俺だが、たとえ募金箱の一円玉レベルだとしても、力になれそうな事は協力してやりたい。
そんな訳で「アイドル(玄英)の握手会でファンの列をさばく神スタッフ(俺)」という仮設定で必死に脳を騙し、半分以上聞き取れないスピード英会話に頷き、笑いどころの不明なジョークに合わせて笑い……というのをエンドレスに繰り返している。
「クソッ……あの変態野郎!」
何組目かの彼らを友好的に見送った後、いきなり暗黒面丸出しで玄英が日本語で毒づいた。
「どうしたんだ?何かされた?」
「僕じゃない。恒星。アイツに気をつけて」
「は?アイツって?どのアイツだよ!」
類似画像だらけで脳内のザッピングが追いつかない。
「さっきのグループにいただろう。某石油大国の王子」
確かにこの場での日本語は内緒話に最適だが……情報量過多すぎて、いちいち覚えてねえよ。
「恒星のこと、気に入ったらしい。僕の目を盗んでモーションかけようとしてたの、気づかなかった?」
玄英がちょっと責めるような目つきで俺を睨んだ。
「はいぃぃ?」
俺こそ心外なんスけど。
「いい度胸してる。完全にプライベートだったら、手袋投げて決闘を申し込んでるところだ」
「何世紀だよ!」
俺を取り合って男二人でタイマンとか何のコントだよ?モリーのような絶世の美女ならドラマにもなるだろうが。
いや、マジで誰だっけ。全体的に来るメンツ全員濃すぎて印象ねえわ。
「自国だと同性愛が非合法なもんだから、太平洋のどっかの島にハーレム作ってるとか何とか。しかも少年趣味の噂で有名な奴だ」
「ヤバ!どこの国でもアウトだろ」
「こういう場に出入りするのも若い男を物色するためだとか、気に入ったターゲットには拉致まがいの手段も選ばないとか……」
「ガチの犯罪者じゃねえか!逮捕しろよ!」
「彼自身が国家権力だからね。疑惑を追及したジャーナリストが亡命後消息不明になってるんだが、それも噂の域を出ないから未だに公の場にも堂々と出入りしてる」
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