赤いトラロープ〜たぶん、きっと運命の

ようさん

文字の大きさ
上 下
79 / 144
7

一家に一つ、SDGsと癒しのビオトープいかがですか?ご用命は青葉造園へ!

しおりを挟む
 参加者が作業に慣れてアシストが一段落すると、清武の方は凶器レベルの顔面をますます険しくして何個もの水槽やプラ容器に入った小さな生き物たちを仕分けしている。

「清さん、それ、ビオトープに入れる予定の生き物じゃない?どうかした?」

 恒星が怪訝そうな顔で聞いた。

「ああ、いや。子ども達にビオトープに入れる生き物を家や近所で採ってきてもらったんで、なるべく使いたいと思ってるんですが……」

 核心の話をしようとすると避けられる、という事がずっと続いていて気まずい、と嘆いてはいたが仕事は仕事ということなのだろう。いたって通常営業に見える。

「使えばいいじゃん。ダメなの?」

「水草は全部ダメですね。外来種ばかりだ」

「だってここいら辺の川で採ったんじゃないの?」

「金魚や熱帯魚に、店で買ってきた水草入れるでしょう。ああいうのは丈夫で扱いが簡単なだけあって繁殖力が凄いんです。あと金魚なんかを飼い切れなくなって、可哀想だかからって近所の川に棄てるとかねーーだが、水草の方が問題だ。胞子や切れ端で簡単に増える」

「そうなんだ」

「おまけにこの温暖化だから、冬でも枯れずに増えて、元からいた日本産のモンを絶やしちまう」

 そんな会話が聞こえたので、玄英もつい気になってのぞき込んでみた。

「本当だ。わあ、クレソンまである」

「え、睡蓮やホテイアオイも仕分けちゃうの?」

「睡蓮って言ったらモネのジャポニズムじゃないの!」

 アーバンライフの若者二人は声を上げた。

「当たり前のように気化している植物も、長い歴史の間に中国や他の国から園芸用として入って来たものが多いんです。睡蓮の場合は、昔から日本にある、在来種はそれ」

 清武は小さな水槽を指した。切れ込みの入った、10センチほどの丸い葉が浮いている。

「これ、うちの池にあるやつじゃん?」

「クール!小さくて可愛いよ!」

「ヒツジグサ、この一種類だけです。昔は里山の沼なんかに普通に生えてたそうですが、東京近郊では絶滅種です。これは俺が増やしたもので」

「地味……」

「花の時期なんですが、夜しか咲かないですからね。我々が日本庭園なんかで目にする睡蓮は、ほとんどが熱帯睡蓮や西洋水蓮と掛け合わせた園芸品種なんです。花が大きくて華やかですからね」 

「知らなかった。僕、生物学は得意な方だと思ってたんだけど」

「日本人だってそこまで知らない人の方が多いですよ。造園屋の跡取りがこれなんだから」

 清武はにべもなく言い、恒星は決まり悪そうに頭を掻いた。

「生き物捕まえて来てくれた子もいるんですがね。扱いに困るもんばっかりです。アメリカザリガニ、ウシガエル、ミドリガメ……」

「子どもは好きそうだけどなあ」

「あっ、メダカ」

 玄英が嬉しそうに別なバケツを指した。

「これなら大丈夫でしょう?」

「いえ、使えません」

「えっ?どうして?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

処理中です...