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一家に一つ、SDGsと癒しのビオトープいかがですか?ご用命は青葉造園へ!
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参加者が作業に慣れてアシストが一段落すると、清武の方は凶器レベルの顔面をますます険しくして何個もの水槽やプラ容器に入った小さな生き物たちを仕分けしている。
「清さん、それ、ビオトープに入れる予定の生き物じゃない?どうかした?」
恒星が怪訝そうな顔で聞いた。
「ああ、いや。子ども達にビオトープに入れる生き物を家や近所で採ってきてもらったんで、なるべく使いたいと思ってるんですが……」
核心の話をしようとすると避けられる、という事がずっと続いていて気まずい、と嘆いてはいたが仕事は仕事ということなのだろう。いたって通常営業に見える。
「使えばいいじゃん。ダメなの?」
「水草は全部ダメですね。外来種ばかりだ」
「だってここいら辺の川で採ったんじゃないの?」
「金魚や熱帯魚に、店で買ってきた水草入れるでしょう。ああいうのは丈夫で扱いが簡単なだけあって繁殖力が凄いんです。あと金魚なんかを飼い切れなくなって、可哀想だかからって近所の川に棄てるとかねーーだが、水草の方が問題だ。胞子や切れ端で簡単に増える」
「そうなんだ」
「おまけにこの温暖化だから、冬でも枯れずに増えて、元からいた日本産のモンを絶やしちまう」
そんな会話が聞こえたので、玄英もつい気になってのぞき込んでみた。
「本当だ。わあ、クレソンまである」
「え、睡蓮やホテイアオイも仕分けちゃうの?」
「睡蓮って言ったらモネのジャポニズムじゃないの!」
アーバンライフの若者二人は声を上げた。
「当たり前のように気化している植物も、長い歴史の間に中国や他の国から園芸用として入って来たものが多いんです。睡蓮の場合は、昔から日本にある、在来種はそれ」
清武は小さな水槽を指した。切れ込みの入った、10センチほどの丸い葉が浮いている。
「これ、うちの池にあるやつじゃん?」
「クール!小さくて可愛いよ!」
「ヒツジグサ、この一種類だけです。昔は里山の沼なんかに普通に生えてたそうですが、東京近郊では絶滅種です。これは俺が増やしたもので」
「地味……」
「花の時期なんですが、夜しか咲かないですからね。我々が日本庭園なんかで目にする睡蓮は、ほとんどが熱帯睡蓮や西洋水蓮と掛け合わせた園芸品種なんです。花が大きくて華やかですからね」
「知らなかった。僕、生物学は得意な方だと思ってたんだけど」
「日本人だってそこまで知らない人の方が多いですよ。造園屋の跡取りがこれなんだから」
清武はにべもなく言い、恒星は決まり悪そうに頭を掻いた。
「生き物捕まえて来てくれた子もいるんですがね。扱いに困るもんばっかりです。アメリカザリガニ、ウシガエル、ミドリガメ……」
「子どもは好きそうだけどなあ」
「あっ、メダカ」
玄英が嬉しそうに別なバケツを指した。
「これなら大丈夫でしょう?」
「いえ、使えません」
「えっ?どうして?」
「清さん、それ、ビオトープに入れる予定の生き物じゃない?どうかした?」
恒星が怪訝そうな顔で聞いた。
「ああ、いや。子ども達にビオトープに入れる生き物を家や近所で採ってきてもらったんで、なるべく使いたいと思ってるんですが……」
核心の話をしようとすると避けられる、という事がずっと続いていて気まずい、と嘆いてはいたが仕事は仕事ということなのだろう。いたって通常営業に見える。
「使えばいいじゃん。ダメなの?」
「水草は全部ダメですね。外来種ばかりだ」
「だってここいら辺の川で採ったんじゃないの?」
「金魚や熱帯魚に、店で買ってきた水草入れるでしょう。ああいうのは丈夫で扱いが簡単なだけあって繁殖力が凄いんです。あと金魚なんかを飼い切れなくなって、可哀想だかからって近所の川に棄てるとかねーーだが、水草の方が問題だ。胞子や切れ端で簡単に増える」
「そうなんだ」
「おまけにこの温暖化だから、冬でも枯れずに増えて、元からいた日本産のモンを絶やしちまう」
そんな会話が聞こえたので、玄英もつい気になってのぞき込んでみた。
「本当だ。わあ、クレソンまである」
「え、睡蓮やホテイアオイも仕分けちゃうの?」
「睡蓮って言ったらモネのジャポニズムじゃないの!」
アーバンライフの若者二人は声を上げた。
「当たり前のように気化している植物も、長い歴史の間に中国や他の国から園芸用として入って来たものが多いんです。睡蓮の場合は、昔から日本にある、在来種はそれ」
清武は小さな水槽を指した。切れ込みの入った、10センチほどの丸い葉が浮いている。
「これ、うちの池にあるやつじゃん?」
「クール!小さくて可愛いよ!」
「ヒツジグサ、この一種類だけです。昔は里山の沼なんかに普通に生えてたそうですが、東京近郊では絶滅種です。これは俺が増やしたもので」
「地味……」
「花の時期なんですが、夜しか咲かないですからね。我々が日本庭園なんかで目にする睡蓮は、ほとんどが熱帯睡蓮や西洋水蓮と掛け合わせた園芸品種なんです。花が大きくて華やかですからね」
「知らなかった。僕、生物学は得意な方だと思ってたんだけど」
「日本人だってそこまで知らない人の方が多いですよ。造園屋の跡取りがこれなんだから」
清武はにべもなく言い、恒星は決まり悪そうに頭を掻いた。
「生き物捕まえて来てくれた子もいるんですがね。扱いに困るもんばっかりです。アメリカザリガニ、ウシガエル、ミドリガメ……」
「子どもは好きそうだけどなあ」
「あっ、メダカ」
玄英が嬉しそうに別なバケツを指した。
「これなら大丈夫でしょう?」
「いえ、使えません」
「えっ?どうして?」
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