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待ち遠しいのはサマーバケーション!

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「バイクに乗るってどんな感じ?」

「どうって……まずキー入れて、セルモーターでエンジンかけるだろう。で、左手のクラッチレバーを握って左足のチェンジペダルを踏んで下げる」

 せっかくヤンキー趣味よりバイクに興味を持ってくれたようなので、俺は身振り手振りで懸命に説明する。

「ギアが1速に入るから、右手ハンドルを回してアクセルを……」

「うんうん。それから?」

 って、マジでそこからなのかよ。ツッコミ待ちだったのに!

「続きは?」

「いや、あんたが知りたい事って、そこじゃあねえだろ?雨風はしのげねえし、リスクは高い。ガソリンも食う。わざわざそんな乗り物乗ってて何が楽しいんだとか、そこいら辺だろ」

「あー……そうだね」

 歴代の彼女にも聞かれたっけな。最後の彼女は運良く同じ趣味の彼女で、俺はこのまま結婚するんじゃないかと思ってたんだが、結局別の……

 ああ、やめやめ。せっかく玄英と一緒にいるんだし、どうせなら楽しい事考えようっと。

「そうだ、玄英。あんたの会社、あちら流で夏休みは長く取れるんだってな。俺も夏季休暇にくっつけてリフレッシュ休暇取れるっぽいから、二人乗りでどっか一周する系の貧乏旅なんかどう?」

「どっか?日本一周じゃなくて?」

「それはさすがに、俺の方が日数足りない。地方一周がせいぜいだろうな。酷暑の時期なら北東北や北海道がいいか」

「本当?連れてって!楽しみ!」

「即答?マジかよ」

 玄英がノリツッコミ無しではしゃぐので、かえって面食らってしまった。歴代の彼女には(以下略) 

 玄英も少しくらいは怖がるか、敬遠して色々聞き返すだろうと思っていたから。

「言っとくけど、セレブのグランピングなんかじゃない、ガチの『貧乏』旅だぞ。荷物もそんなに持って行けないから、あんたが使うようなドレスコードつきの店やホテルには入れない。基本的に天気と気分任せだから予定はあって無いようなもんだ。渋滞で目的地に着かなくてラブホに泊まったり、それすら一杯で野宿なんて事も……」

「リアリティショーみたいで面白そう。大丈夫!オーストラリアでの子ども時代は親の趣味でキャンピングカー生活してたし、先住民と一緒にツリーハウスで暮らした事もあるから!」

「マジかよ」

 玄英が物好……いや、好奇心旺盛で適応力が異様に高い人で助かる。そしてめっちゃ嬉しい!

 高級老舗ホテルや高級リゾート系の旅に背伸びして連れて行ってやりたい気もするんだが、そっちは全然わからんしな。

「ミニマム旅行ってクールだね!恒星と一緒なら、野宿だっていいよ!青(ピー)しようよ」

「馬鹿野郎。お上品な顔してサラッとそんな事言うんじゃねえ」

 だからどこでこんな用語覚えて来るんだこの子は……

「それ以外なら色々調べて考えてやるよ。海沿いの道を走りたいとか、キャンプやりたいとか」

「わああっ、いいね!僕、茅葺き屋根の村が見てみたい」

「茅葺き屋根かあ……有名なのは白川郷だけど」

「東北にもあるって聞いた」

「本当か?ググってみるか」

 俺達はそれから小一時間ほど企画会議に夢中になった。
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