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カモナマイルーム!おいでよ恒星の部屋

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「祖父ちゃん。今時そんなん聞いたらセクハラなんだぞ……」

 好きな人に身内紹介するのってある意味、ロシアンルーレットみたいなもんだよなぁ……玄英の適応脳力の高さと懐の深さにひれ伏して感謝するがいい。
 アップデートとオールドモデル、非常識と非常識……お互い先が思いやられる。

 と、竹垣に区切られた門の方が、ガヤガヤと賑やかになった。仕事が終わって近くの銭湯に一風呂浴びに出掛けていた他の職人さん達が、玄英の歓迎会に参戦すべく戻って来たのだ。

「親方。酒と仕出しが届きました」

 清さんがそう告げに来て、俺達は二間続きの座敷に上り、そのまま夕食会兼飲み会となった。

「……って、エエ?坊、飲まねえんですかい?」

「ドクターストップなんだよ」

 と言い訳をした俺の代わりに、実は「隠れザル」の玄英がおっちゃん達の酌を受けてくれる。気さくで話題も豊富な玄英は、あっという間におっちゃん達にも気に入られた。

 全員がもう少し若くて「ザル」や「ワク」を公言してはばからなかった一昔前だったら朝までとことん付き合わされただろうが、今やほば全員がドクターストップ持ちなのでそこそこ穏やかに盛り上がり(当社比)、明日も早いからとほどほどの時間でお開きとなった。

 片付けをした座敷の片一方を襖で仕切って、布団を敷いてやっていると、

「すごい!パーティルームがゲストルームに変わった!」

「オペラの『マダム・バタフライ』のセットみたい!ヴァーサタイルでサスティナブルだ!」

 とか何とか、半分訳のわからん感動の仕方して、写真まで撮っている。ちょっと面食らったが、喜んでもらえてよかった。

「恒星はどこで寝るの?隣の部屋?」

「いや。俺は自分の部屋があるから……」

「見たい!」

 玄英が顔を輝かせた。

「は?いや、散らかってるから無理」

「僕に見られたくないものがあるんだ……元彼女の写真とかお見合い写真とか……」

 斜め上に謎の拗ね方をする玄英。

「ねえよっ!だいたいあれは祖父ちゃんが勝手に……」

「でも、お見合いする気だったんでしょ?」

「玄英と出会う前の話だからっ!」

 密かに根に持つな!絡み酒かっ!

「わかったよ、もう!だけど見たってつまらんぞ?たまに寝に帰るだけの物置部屋で、ゲームだって引越しの時に全部持ってったから無いし」

 しかも最近はそんなヒマすらないけどな。

「ビデオゲーム?僕はやる習慣ないから別に」

「そうなんだ?」

「ボードゲームやパズルゲームならした事あるけど、すぐクリアしてしまうし。誰かが作った仕様の中で遊ぶ面白さがよくわからない。スポーツや交渉事の方が結果が読めないから面白い」

 そうだコイツ、メチャクチャ頭いい奴なんだった……

 俺が高校生まで使っていた部屋は、角部屋の六畳間にベッドと本棚と学習机を入れただけの部屋だ。

「すごい!『ドラ○もん』に出てくるのび太の部屋みたい!」

 何にでも感動できるあんたにむしろ感動するわ。

「和室の天井にデビュー当時のテイラー・スウィフトのポスターが貼ってあるのってシュールだね!」

 悪かったな。

 壁や襖には他にも、当時流行ってたヤンキー映画やアクション映画のポスター、ハマっていたインディーズバンドの雑誌記事の切り抜きなんか所狭しと貼ってあって、本棚には受験の時の参考書類がちょこっと、ヤンキー漫画に雑誌、CDMD類がぎっしりーー半分は先輩や悪友に譲ってもらったものだ。
 懐かしさとか捨てるに捨てられず……という気持ちもないわけではないが、大学入学と同時にこの家を出て入って以来、ものぐさで放置しているだけという方が近い。

 ああ、疾風怒濤だった十代の残滓は今や立派な黒歴史記念館だ。あれこれ見て回ってははしゃぐ玄英のせいで、さっき以上に針のムシロ状態でベッドに座っている。ヤンキー趣味丸出しのグッズに色々ツッコまれたらどうしよう。
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