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実家トラップ発動!仁義無用の鹿おどしバトル(えっマジで?)
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「親方」こと俺の母方の祖父ちゃん青葉恒三は、後期高齢者になりたてホヤホヤではあるが、足腰はしっかりしてるし脱いだらスゴい(筋肉的な意味で)現役バリバリのガテン系職人だ。
口より先に手が出る昔気質の職人連中を束ねるだけでなく、正真正銘の若手時代からこの家に住み込ませて公私の別なく面倒を見てきた、技術的精神的師匠でもある。
力仕事は「若手」に任せる場面も増えたが、家の石垣程度なら自分一人で完璧に組み上げられる。
「いえいえどうして。恒星は正直な、立派な人ですよ。僕はいつも助けられています」
玄英は優美に微笑んだ。玄フライング気味に爆弾を落とさないか気が気ではないのだが、その辺は読んでくれているようだ。
「世界を股に掛ける若社長にそう言っていただけると恐縮です……ささ、もう一杯」
俺もこの人に褒められると光栄だし、やっぱり嬉しい。
カコーン……
「造園屋さんのお家だけあって素敵なお庭ですね。特にあれがいいですね……バンブーチューブ……すごくいい音がする」
「ああ、鹿おどしね。家はボロだが庭は商品見本みたいなもんだからね、それなりに手を入れてるんだ。はっはっは」
「シシオドシ、ですか。『ワビ、サビ』という感じがして本当にいいですね。僕もああいうの欲しい」
あのセレブ御用達タワマンに鹿おどし……って、一体、どこに置くんだよ。バーカウンターとか?流石にシュール過ぎんだろ。
「大昔は農家が作物を荒らす獣を追い払うためのものだったそうですがね。大雨や台風の時なんか、ガコンガコンうるさいですよ。ははは」
玄英の社交的才能ーー相手のバックボーンや性格を素早く理解してそつなく懐に入り込む会話術のお陰もあるだろうが、やはり玄英本来の真面目さや人に対する優しさ、礼儀正しさが祖父ちゃんに気に入られたのだろう。
昭和気質で基本的に新しいもの嫌いの祖父ちゃんまで落とすとはおそろしい子……いや。嬉しい誤算だ。
もっと玄英の人となりを知ってもらえたら案外、俺達のことも受け入れてくれるんじゃないか?とも思えてくるのだが、それは甘すぎるのかな。
「そういや恒星。お前さん、しばらくこっちに来てなかったからよ。こないだの縁談話、進めといたぞ」
「縁談?誰の?清さんの?」
「馬鹿このウスラトンカチ。寝ぼけたこと言ってんじゃねえよ。お前さんのに決まっとろうが」
「は?俺の縁談?」
カコーン……
「確かに清の奴がいつまでも独り身ってぇのも長年の頭痛の種なんだが。弟分のお前がいよいよ身を固めるってなりゃ、奴さんだって本気出すだろうよ」
何この地雷トラップin実家。
「そんなん聞いてないよ!」
「まったく呆れたやつだな。忘れたたあ言わせねえぞ。春先に浅井さんとこの親戚の娘さんどうだって聞いたじゃねえか」
……ええと……
「お前さんだって珍しく乗り気で、会うだけ会ってみたいって。ところが先方のお嬢さんもお前も年度末だ異動だって都合は合わないわ、こちとらこれでも繁忙期だわでな。それでズルズルと日延べになってた」
あーー……
玄英と出会う少し前に、そんな話があったような……
あの時は俺、まるっとフリーだったし、年齢的にも人並みに婚活云々なんてのが頭をかすめたりしてたんだよな……玄英と出会う前の記憶がビッグバンとかジーザス爆誕前レベルの大昔のことのように思える。
「思い出した……けど、こないだって!正月かそこらの話じゃないか。とっくに無くなったと思ってた」
ここん家の人らの感覚だと「十年一昔」イコール「こないだ」らしい。長く生きてると人生の縮地法でも発動すんのか?って、そこら辺はツッコんでも仕方がないが。
ツッコミ待ち失敗からの暴走ボケに、まさかそんな伏線が?どんだけ激アツなんだよ、俺の結婚熱@実家(本人除く)
口より先に手が出る昔気質の職人連中を束ねるだけでなく、正真正銘の若手時代からこの家に住み込ませて公私の別なく面倒を見てきた、技術的精神的師匠でもある。
力仕事は「若手」に任せる場面も増えたが、家の石垣程度なら自分一人で完璧に組み上げられる。
「いえいえどうして。恒星は正直な、立派な人ですよ。僕はいつも助けられています」
玄英は優美に微笑んだ。玄フライング気味に爆弾を落とさないか気が気ではないのだが、その辺は読んでくれているようだ。
「世界を股に掛ける若社長にそう言っていただけると恐縮です……ささ、もう一杯」
俺もこの人に褒められると光栄だし、やっぱり嬉しい。
カコーン……
「造園屋さんのお家だけあって素敵なお庭ですね。特にあれがいいですね……バンブーチューブ……すごくいい音がする」
「ああ、鹿おどしね。家はボロだが庭は商品見本みたいなもんだからね、それなりに手を入れてるんだ。はっはっは」
「シシオドシ、ですか。『ワビ、サビ』という感じがして本当にいいですね。僕もああいうの欲しい」
あのセレブ御用達タワマンに鹿おどし……って、一体、どこに置くんだよ。バーカウンターとか?流石にシュール過ぎんだろ。
「大昔は農家が作物を荒らす獣を追い払うためのものだったそうですがね。大雨や台風の時なんか、ガコンガコンうるさいですよ。ははは」
玄英の社交的才能ーー相手のバックボーンや性格を素早く理解してそつなく懐に入り込む会話術のお陰もあるだろうが、やはり玄英本来の真面目さや人に対する優しさ、礼儀正しさが祖父ちゃんに気に入られたのだろう。
昭和気質で基本的に新しいもの嫌いの祖父ちゃんまで落とすとはおそろしい子……いや。嬉しい誤算だ。
もっと玄英の人となりを知ってもらえたら案外、俺達のことも受け入れてくれるんじゃないか?とも思えてくるのだが、それは甘すぎるのかな。
「そういや恒星。お前さん、しばらくこっちに来てなかったからよ。こないだの縁談話、進めといたぞ」
「縁談?誰の?清さんの?」
「馬鹿このウスラトンカチ。寝ぼけたこと言ってんじゃねえよ。お前さんのに決まっとろうが」
「は?俺の縁談?」
カコーン……
「確かに清の奴がいつまでも独り身ってぇのも長年の頭痛の種なんだが。弟分のお前がいよいよ身を固めるってなりゃ、奴さんだって本気出すだろうよ」
何この地雷トラップin実家。
「そんなん聞いてないよ!」
「まったく呆れたやつだな。忘れたたあ言わせねえぞ。春先に浅井さんとこの親戚の娘さんどうだって聞いたじゃねえか」
……ええと……
「お前さんだって珍しく乗り気で、会うだけ会ってみたいって。ところが先方のお嬢さんもお前も年度末だ異動だって都合は合わないわ、こちとらこれでも繁忙期だわでな。それでズルズルと日延べになってた」
あーー……
玄英と出会う少し前に、そんな話があったような……
あの時は俺、まるっとフリーだったし、年齢的にも人並みに婚活云々なんてのが頭をかすめたりしてたんだよな……玄英と出会う前の記憶がビッグバンとかジーザス爆誕前レベルの大昔のことのように思える。
「思い出した……けど、こないだって!正月かそこらの話じゃないか。とっくに無くなったと思ってた」
ここん家の人らの感覚だと「十年一昔」イコール「こないだ」らしい。長く生きてると人生の縮地法でも発動すんのか?って、そこら辺はツッコんでも仕方がないが。
ツッコミ待ち失敗からの暴走ボケに、まさかそんな伏線が?どんだけ激アツなんだよ、俺の結婚熱@実家(本人除く)
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