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おいらはサプライズアタッカー、タイフーンを呼ぶ男。

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「理解の第一歩は、相手にとっても身近な問題にしてしまうことだよ。そうじゃなきゃいつまでも他人事で理解は深まらない。そう思わない?」

「……それもそうだな」

 ド正論。玄英のこういうとこ、本当にカッコいい。

「いっそ爆弾を落とそう。堂々と交際を宣言するんだ。決戦は日曜日」

 いやいやいや!ちょっと待て!

 さすがノルマンディー上陸作戦とパールハーバー奇襲のお国のハイブリッド……恐ろしい子!

「『ならば戦争だ』的なことがしたい訳じゃないんだよ!祖父ちゃんだって歳いってるし血圧高いし!」

「そうか……では穏便に『お坊ちゃんを僕にください』と言ってみる」

 おんなじ事じゃね?

「一度やってみたかったんだ。『どこの馬の骨とも知れん奴に孫はやれん』からの土下座……」

「いつの時代のホームドラマだよ!いい加減に漫談辞めろドM」

 んな事やらかす花嫁の父なんざ、今日び漏れなくクーリングオフされっぞ。

「玄英」

 今度は俺のターンだ。俺は玄英の両肩に手を置き、彼の瞳に焦点が合うギリギリの至近距離からのぞき込み、噛んで含めるように語りかけた。

臥薪嘗胆がしんしょうたんって知ってるか?」

「ガシンショ……?何それ、ことわざ?」

「今はその時じゃない。 塹壕ざんごう掘って耐久戦ってことだ」

「耐久戦……」

「差し当たって日曜日に波風立てるのだけは止めてくれ。あんただって会社の研修がポシャったら困るだろ?」

「そうか……そうだよね」

 何で残念そうなんだよ。

「俺はカミングアウトするなら最悪、実家と絶縁覚悟だと思っている」

「恒星、待って」

 一貫して夢色能天気モードだった玄英が初めて顔色を変えた。

「玄英には悪いが、俺にはまだその覚悟は無い。時間をかけて最大限努力するつもりだが、それが必ず届く保証はない。俺が不甲斐ないせいであんたまで無駄に傷つけてしまうかもしれないし……」

「僕は平気だよ。それに僕だって、君の大切な居場所が無くなることを望んでるわけじゃない」

 玄英はまるで自分の事のように、唇を噛んで悲しそうなをした。時々つき合いきれん事もあるが、根は心底優しい奴なんだ。

「これだけは覚えておいて欲しい。たとえ周囲の全員を敵に回して縁切る羽目になっても俺は、たぶんあんたと一緒にいたい」

「恒星……」

 玄英は、上気した目元を潤ませた。

「わかったよ。とりあえず開戦は保留だ」

 素直でよろしい。

「会社のみんなも信頼していい人達だから安心して」

 とりあえず玄英が納得してくれたのでほっとし……

「ちょっと待て!いきなり覆い被さんな!どこ触ってんだ馬鹿犬!」

「話は終わったんでしょう!ご主人様!我慢したんだからご褒美くださいっ!」

 こいつ自分でMだとか言ってるけど、いつも振り回されてるの俺の方だよな……雁字搦がんじがらめに手足縛ったまま放置プレイすんぞ、くそ。


 外れるといいんだが、どうも嵐が来る予感しかしないーー

 




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